アイデール王国 96
ルーナは、無言で窓の外を指差し、フィリアにどうぞごらんになって?とでも言うように促した。
フィリアは立ち上がると、窓の外を見つめて息を呑んだ。
空は暗黒の雲に包まれ、災いの魔力が地中から溢れ出ると空へと伸び渦巻いている。
雷鳴が轟き、魔界のようだ。
おい、おい、おい。
主人公よ!ヒロインよ!
どうしてこうなった!
やっぱりバッドエンド爆進中じゃないか!
というか製作者よ!もうここは現実だから創造主と呼ぶべきか?!
もしフィーリタ王国もアイデール王国もバッドエンドになったら急に同時期に2つの王国が消滅するのか?!
酷すぎるだろう!
言っておきますが私はフィーリタ王国担当で、アイデール王国は担当外ですからね?
フィーリタ王国を救ってグリードと末永く幸せに暮らしましたとさ、チャンチャンで終わるのが夢なんです。
「聖女と呼ばれる令嬢、アリア様は色恋ばかりですから、期待しても無駄ですわよ。だからアイデール王国は貴方を誘拐したのですわ。」
「いやいや、、、勝手に、、、。」
「そう。勝手ですわね。」
そう言うと、ルーナ様は悲しそうに目を伏せた。
「皆勝手なんですわ。」
その姿にきゅんとしてしまう。
だって、はい。
私は悪役令嬢が大好物なんです。
「私ね、、10歳の時のお茶会で貴方に酷い事しましたでしょ?その後、第一王子であるウィリアム殿下に諌められましたの。それで、そこからは改心して、、婚約者選ばれた時は本当に嬉しかったの。ですから、、、これまで頑張ってきたつもりでしたのに、、、。」
悔しそうにするルーナの横にフィリアは行くと、背中を優しくさすった。
「あんな、なんの努力とせず、ただ媚びへつらう女に負けるなんて、悔しくて悔しくて。」
あれ?
なんか。
思ってたんと違う。
いや、むしろぴったりか。
「どうやって目にもの見せてやろうかと、腸が煮えくり返っておりますの。」
おぉ。さすが悪役令嬢。
「でも、まずはこの惨劇をどうにかしませんとね。今はまだ災い魔力を空へと逃し地上に被害はありませんが、時間の問題ですわ。本来ならば、聖女の力を持つ者が払う事ができると言われていますが、アリア様はへっぽこですから、期待するだけ無駄ですわ。」
ルーナはそう言うと、フィリアの手を両手で握り、潤んだ瞳で見つめてきた。
「自国では無いとはいえ、私の母の故郷です。どうにか救いたいんです。力を貸していただけませんか?」
ドッキューン!!
はい。悪役令嬢の懇願するお顔頂きました。
なんて可愛らしい。
王子バージョンは好みではなかったが、はい、その認識を変えさせていただきます。
ルーナ様は可愛い。
鉄ドリルが愛らしい!
はい。貴方の為なら喜んで!
フィリアが頷くと、ルーナはにっこりと笑みを浮かべた。
「ありがとう。優しい貴方ならそう言ってくださると思っていましたわ!お兄様!言質は取りましたわ。」
すると扉が開き、王子らしき人物と、兵士達が部屋へと入ってきた。
フィリアが目を丸くすると、ルーナが可愛らしく言った。
「こちら、この国の王子であり私の従兄弟のアレクシス王子ですわ。貴方を攫った張本人です。」
アレクシスは膝をつくとフィリアの手の甲にキスをした。
「お会い出来て光栄だ。聖なる乙女よ緊急事態だった故に、手荒な手段を取ってしまいすまない。」
「ちなみにお兄様はアリア様の毒牙にかかっていませんわ。私が目を覚まさせてあげました。」
その言葉にアレクシスは苦笑を浮かべた。
「いや、途中まではあの愛らしさにコロコロと傾いたのだが、可愛いルーナに頭を殴られてね。正気を取り戻したんだ。」
状況についていけないフィリアは混乱し、ルーナを見つめた。
ルーナはにっこりと微笑むと言った。
「私の役割は軟禁と貴方の説得ですの。フィリア様、よろしくお願いしますわ。一緒にまずは災いの魔力を消し去ってあの女にぎゃふんと言わせてやりましょう!」
上手いこと騙されたと思いつつも、ルーナが可愛らしくやる気になって手を掲げるからいいかなぁと、フィリアの緩い頭は考えていた。
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