グリードの逆鱗 97
フィリアがいない。
どうして?
アイデール王国が奪った。
攫われた。
フィリアが。
いない。
その瞬間にグリードの体から黒い炎が上がり、皆が息を呑んだ。
ニフエルはその姿を肩をすくめて見つめる。
ハロルドは冷静な口調で言った。
「アイデール王国の第一王子のアレクシス王子は魔術の天才だという。きっと彼がフィリアを攫ったのだろう。まぁ、証拠はないし、フィリアはただの男爵令嬢としかなっていないから、こちらからアイデール王国へそれを非難することは難しい。フィリアがせてめフィーリタ王国の聖なる乙女として保護化に入っていれば別だったのだが、、、くそっ!」
ハロルドはそう言うと、苛立たしげに拳を握りしめる。
グリードは、目を細めた。
「取り戻してくる。」
その言葉に、皆が固まる。
「だだだだだ駄目です!」
震えながら、エマはそう言った。
それに続くようにクロエラも頷き言った。
「国際問題になりかねません。」
マリアが続ける。
「まずは状況を見るべきですわ。」
シェーラも言った。
「落ち着いて、きっとフィリアは無事です。」
怒りに震えるグリードに対して、肝の座った令嬢らに男性陣は驚いた。
ここで黙っていては男が廃る。
「一度内々にこちらからアイデール王国に密偵を送ろう。」
「事実確認の後に、奪還のために動くべきだ。」
「ならば、奪還の準備を。騎士を動かしますか?」
「軍部に連絡し、少人数精鋭の部隊を動かそう。」
四大貴族の四人が続けてそういうと、ハロルドは動こうとしたが、低い声が響く。
「フィリアを迎えに行く。」
グリードの瞳は黒黒と燃えている。
ニフエルは言った。
「まぁ、暗黒龍は人が待てと言っても待ちませんよね。」
その言葉に、ハロルドは息を吐き、頷くとにっこりと笑った。
「そうだね。暗黒龍は天災みたいなものだし。それはこちらもどうも出来ないと言う事にしよう。グリード。行っていいよ。ただし、キミは暗黒龍でありフィーリタ王国は一切の責任をもたない。それでいいかい?」
グリードは、その言葉に笑みを浮かべ頷いた。
「あぁ。」
「アイデール王国には第一王子と婚約者のルーナ子爵令嬢が行っているはずだから、私からはそちらにコンタクトを取ってみよう。」
「こちらからも、状況が分かり次第連絡をする。」
「分かった。」
皆がグリードを見つめる。
それぞれ思いはある。
だが、根本的には一つだ。
フィリアに無事でいてほしい。
グリードは、窓から飛び出すと暗黒龍へと姿を変え、大空を飛んだ。
「フィリア、、、今行く。」
その自由な翼にハロルドは小さく呟く。
「フィリアが好きになるのも頷ける。」
グリードは縛られない。
地位にも国にも。
だからこそ自由だ。
だからフィリアを一番に考える。
ハロルドにはそれが羨ましくてしょうがなかった。
その自由な翼が。
だが、自分はこの地位も国も投げ出す事は出来ない。
それが自分だ。
自由ではない。
むしろ不自由。
それでも、それが自分の進む道だと、ハロルドは受け入れている。
グリードの背を、ハロルドは見送るとすぐに指揮を取る。
自分には自分のやるべき事がある。
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