シオンの悪巧み 70
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シオンは、昔から何か一つの事に執着したり、譲れないと思ったりすることがなかった。
だからか、何かに特に心を大きく動かされることも少なかった。
だが、10歳の頃にフィリアから言われた言葉で、シェーラと向き合うようになってから、シェーラだけは手放せないと思うようになった。
熟年夫婦のようだが、おそらく一度この腕の中に抱き込んでしまえば、もう放す事は出来ないだろう。
最近はダンスを一緒に踊った後でさえ、手放すのが惜しくなる。
シェーラがいるからこそ、自分は生きていると感じられる。
そして今、ひどく動揺している。
「し、、シェーラ?今何て?」
「シオン様。不潔です。」
もう一度聞いても答えは変わらず、シオンはよろめくように一歩後ずさった。
「ど、、どうして?」
いつものように2人でカフェでお茶をしようと誘いかけた時であった。
シェーラからの言葉にシオンは動揺を隠せない。
シェーラは、じとっとした目で、非難するかのように呟いた。
「淑女にやすやすと触れる殿方は嫌いですの。」
その言葉にハッとした時、シオンは教室の後ろの扉の影からこちらをにやにやと見つめるフィリアを視線の端に捉えた。
してやられた、
なるほど、これはフィリアの差金かと思い、気を引き締めると、シオンは微笑みを浮かべていった。
「フィリア嬢のことなら、演技だからね?これまでユーリもカインもロイもフィリア嬢にどぎまぎとさせられていたから先手をうったんだよ?」
その言葉にシェーラは冷たく言い放った。
「ならばシオン様は演技でなら触れてもいいとおっしゃるのね。まあ、一体誰に触れる気かしら。」
「そうは言っていないよ。シェーラ、機嫌をなおして。フィリア嬢だって僕らに触れてきたじゃないか?」
「フィリアは、本当はしたくないけど泣く泣くしているのです!シオン様とは違うわ!」
いや、あのにやにや顔は絶対に楽しんでやっている。
以前は僕らをくっつけようとしていたのに喧嘩させてもいいのか!?
「痴話喧嘩、、、尊い。」
あぁそうかい!なるほどね!フィリア嬢の頭の中はいつでもお花畑か!
小さな声でも聞こえたフィリアの声にシオンは心の中で。毒づいた。
「わかったよ。シェーラ。フィリア嬢にはもう触れないから。約束する。」
シオンはフィリアの策略に納得はいかないものの、このままシェーラに嫌われるのはどうしても嫌であっさりと白旗を上げた。
すると、シェーラはシオンの顔をじっと見つめてきた。
「本当に?絶対?」
シオンは手を胸に当てて頷いた。
「あぁ、誓う。」
シェーラはその言葉に満足そうに頷いたが、次の瞬間、思わぬ言葉が、シオンに帰ってきた。
「なら、フィリアにしたことを私にもしてくださいませ。そしたら許して差し上げますわ。」
その言葉にシオンは固まった。
「たしか、手にはぁーってするのと、手をつなぐのと、あーんもしたのですよね?カフェでしてくださる?」
シオンは、固まった。
そして、にっこりと笑うとシェーラの手を取り、はぁーっと息を吐きかけた。
「シェーラから誘ってくれるとは思わなかった。一度触れたら全部欲しくなるって前にいったよね?」
暖かくなったシオンに包まれた自分の片手に、かぶせるようにもう片方の手ものせた。
「ふふ。シオン様、私を焦らせようとしても無駄です。小さい頃から一緒にいる私が、この程度のシオン様の言葉で揺らぐわけがないじゃないですか。」
シオンは目を見張り、そして心の中で。叫び声をあげた。
さりげなくぎゅっと手を握られ、シオンは手のひらで頭を抑えた。
揺らぐことのなかった感情が、自分の中でひどく揺らぐ。
心の動きに、シオンは苦笑を浮かべた。
きっとシェーラが居なければもっと世界はつまらなかっただろうなと思う。
自分を変えてくれた人。
愛しいシェーラ。
シオンは結婚するまで、自分の我慢がちゃんと続くことを祈った。
シオンくんはシェーラには勝てません。
読んで下さりありがとうございました!




