春の季節 30
楽しんで読んでいただけたら嬉しいです!
フィリアは、全力で真夜中の校舎を走っていた。
範囲指定をして結界をはり、防音と幻影の魔法を同時進行し、暗闇を光の魔法で照らした。
スカートを翻し、地面に手をついてくるりと回転すると空中に舞い、土から勢いよく地面を割って出てきた魔物を避ける。
大型の土属性の魔物。
その口にはぎっしりと尖った歯が見える。
その大きさは大型犬ほどであるが、
数が多い。
フィリアの足元を狙い、魔物が次々に飛び出してくる。
フィリアはそれを軽やかによけながら、叫んだ。
「グリード!今よ!」
漆黒の翼を羽ばたかせ、空中に人形の姿に羽の生えた状態で待機していたグリードは黒い炎を次々に魔物に当てていく。
魔物は恐ろしい叫び声をあげ、闇に飲み込まれるように消えた。
フィリアの額から汗が流れ落ちる。
あたりを警戒していたその時、足元に微弱に振動を感じ、フィリアは慌ててグリードに手を伸ばした。
グリードは滑空すると、フィリアの手を取り一気に舞い上がる。
土の中から轟音と共に巨大な魔物が現れ、その口にフィリアを飲み込もうとする。
足が魔物に当たり、「ひっ!」と小さくフィリアは悲鳴を上げた。
空中からその魔物の全容を見て、フィリアは鳥肌がたった。
「巨大なミミズのようだな。」
「こんなんじゃなかったはずなのに。」
ゲームではもっと可愛かった!ミニキャラらしくオメメもぱっちりな魔物だった。
それがどうしてこうなった。
「あれが親玉だろ。あと少しだ。」
この魔物、地面に潜って姿は出さず、フィリアが地面を歩くと襲うように出てくる。
グリードには反応せず。
これがヒロインの役目だからだろう。だが、言わせてもらおう。
これ、ヒロイン死ぬからね!
もぐら叩きとか楽しいゲームではないからね!
地中から襲ってくるとか、恐怖でしかない。
魔物はうねりながらフィリアを探している。
「フィリア。小さいのは本体では無かったから俺の炎でも消せたがあれは無理だ。あれは聖魔法で浄化するしかない。」
フィリアは頷いた。
地中からおびき出した今なら聖魔法が効くだろう。
フィリアは両手を目の前に組むと、祈るように歌った。
癒えるように、穢を祓うように、ただただ歌い続けた。
すると、魔物はピタリと動きを止め、フィリアを見た。
その瞬間、青白く輝いたかと思えば、魔物の口から黒い煙が立ち昇る。
フィリアはグリードの災いの魔力に似ているなと感じながらも歌い続けた。
すると、巨大な魔物の体も、黒い煙までもがキラキラと輝き、そして消えた。
くだけるように一瞬で。
フィリアとグリードは安堵の息を吐いた。
そしてグリードは呟いた。
「フィリアの簡単は、すごく大変という事を覚えておく。」
朝日が登り始め、フィリアとグリードは慌てて自室へと戻るのであった。
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