聖なる乙女 123
聖なる光が、学園の中央部を包み込み続けて一週間が経過した。
王国は特別警戒態勢のままその様子を見つめ続けている。
人々は暗黒龍が戻ってくるのでは無いかと息を潜め、聖なる乙女を信じて事の成り行きを見守っている。
ニフエルは、その様子から皆を呼び出すと静かな声で言った。
「恐らくだが、暗黒龍は消えた。」
「それは?どういう、意味だ?」
ハロルドの言葉に、ニフエルは皆を見回してからゆっくりと伝える。
「災いの魔力をまったく感じられない。」
その言葉に一瞬皆が希望の色を見せる。
だが、次の言葉で、その色は消えた。
「それと同時に、グリードの気配もしない。」
令嬢達は瞳に涙をため、そしてエマが言った。
「フィリアは?」
皆が息を呑んで、ニフエルの言葉を待つ。
「これだけの聖なる乙女の光を放ち続けているんだ、、、、無事では、、、ないだろう。」
一週間の間、微かにだが延々と歌が聞こえてくる。
フィリアの声だと言うことは分かっていた。
だが、飲まず食わずで一週間である。
無事なわけがない。
「フィリアを、、、無理矢理にでも止めるべきだと思う。」
グリードの気配がないという事から、皆が、最悪の事態を想像する。
ハロルドは、その言葉に頷こうとした時、ルーナがコロコロと笑いながら言った。
「馬鹿なことを仰らないで。」
その言葉に、エマ、クロエラ、マリア、シェーラも賛同する。
「フィリアは自身で決めたのよ。」
「女は度胸。それを男が勝手に止めるなんて以ての外。」
「どんな結果になろうとも、最後までさせてあげて。」
「フィリアは、絶対に諦めないわ。」
先程までは涙を携えていた瞳とは思えない力強い眼力で男性陣を見つめるとそう言い放った令嬢達は、コロコロと笑いながら言った。
『フィリアを応援しましょう。』
その言葉に男性陣は押し黙る。
ニフエルはその様子に笑い声を上げた。
「さすがだな。女性の方が肝が座っている。」
そんな、会話をしていた時であった。
空気が揺れた気がした。
皆が息を呑む。
駆け出し、学園の中央部を目指す。
聖なる光が見えた。
令息らは令嬢の手を取り、光を見つめる。
光が溢れていく。
風が、柔らかく、心地の良い風が吹き抜ける。
心の中に、歓喜に満ちる。
蕾は美しく咲き、枯れた植物は蘇る。
足の悪いもの、目の悪いもの、心を病んだもの、皆の心に光が満ちる。
「奇跡だ。」
人々は、奇跡を見る。
その日、奇跡が王国全土を包み込んだ。
「お父さん!私、目が見えるわ!」
「なおったぁぁぁぁ!」
「あ、、、足が動く。」
「、、、、、、光?」
国中に歓喜の声が響き渡る。
その声の中、光の中から、聖なる乙女が現れた。
その髪と瞳は光を携え、美しく輝く。
あまりの美しさに、皆が、言葉を失った。
聖なる乙女がゆっくりと、その柔らかな、赤い唇を開いた。
「あら?皆さん、寄り添って!?あら、素敵なスチル?!え?私は何かイベントを見逃したのかしら?!」
意味は分からなかったが、皆が、思わずため息を付いた。




