災いの魔力との対峙 122
白い首筋に、暗黒龍の手が伸びて触れる。
暗黒龍は、その指にゆっくりと力を入れ始めた。
「共に逝こう。」
その笑顔に、一瞬フィリアの心が揺れる。
「俺を一人で逝かせるのか?なんてひどい女だ。もし、あぁ、、、いや、こいつをじゃあ共に逝かせるか?」
暗黒龍の爪が伸び、鋭く光ると自らの首にそれを向ける。
「どうする?」
ニヤリと笑う暗黒龍に、フィリアは目を丸くした。
もう少し。
あと少しでグリードを取り戻せる。
時間稼ぎをしなければならない。
そう思った時、グリードの首が微かに傷つき血が流れた。
それを見た瞬間にフィリアの頭は真っ白になった。
「止めて!私が貴方と共に逝くわ!」
暗黒龍は笑う。
じわじわと時間がないのを感じながらも、災いの魔力を漲らせてどうにかそれを防ぐ。
「グリードは、、、幸せになるべきなのよ。」
「そうか?」
「ずっと貴方に、いえ、この世界に苦しめられてきたの。だから、誰よりも、幸せになるべきなの!」
暗黒龍は笑い声を上げると、フィリアの首筋に鋭い爪を添える。
「なら、グリードの幸せを願い、共に逝くか。」
嘲笑うかのような笑みを浮かべ、爪がフィリアの肌に食い込む。
フィリアは微笑みを浮かべた。
「貴方には、愛がわからないのね?」
「はっ!愛?」
「ええ。そうよ。」
「恥ずかしげもなく言うな?」
「ええ。私はね、その愛を全部グリードからもらったの。」
「何が言いたい?」
「家族の愛も、友としての愛も、そして、愛しい人からの愛も。」
「それで?」
「私の周りは精霊はいても、その他は誰もいなかった。私、ずっと寂しかったのよ。」
「?」
「そんな寂しさを、グリードは全部消してくれたの。貴方も、グリードがいたから、寂しくなかったでしょ?」
「何を馬鹿な。」
「グリードは優しいから、、、、。貴方の事も受け止めた。」
暗黒龍の顔が歪み、フィリアの首を締め付ける。
「馬鹿なことを言うな小娘が。」
ぎりぎりと首が締まっていく。
フィリアは息ができずに、苦しげに息を漏らした。
その時、その手が止まる。
フィリアは、目を見開いた。
「グリード?」
そこには、自分の愛しい人がいた。
ゆっくりとフィリアの首から手を離し、フィリアを抱き締めた。
温かな体温が伝わる。
今までずっと一緒にいた、愛しい人。
身体が、離れ、グリードの微笑みが見える。
唇が動く。
『愛してる。』
身体が、動かなかった。
優しい人が、どんな行動に出るかなんて、想像が出来たのに。
赤い血が舞った。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
少女の悲鳴が響き、災いの魔力は、聖なる光に包まれる。
歌が、歌が聞こえる。
それはとても悲しい、それでいて身体が軽くなるような聖なる乙女の歌。
その歌は、光の中でずっと聞こえ続けた。




