異変 117
グリードは、ニフエルからの説教の後、部屋に戻るとベッドに横になった。
先程から異様に体が重い。
ニフエルの説教が、精神的にもきた。
だが、グリードに一切の後悔はなかった。
むしろ、よくやった自分と褒めたい。
けれど、この体の不調は、、、普通ではない。
額から流れ落ちる汗を拭いながら、体の不調の原因を考える。
本当は、何が原因かなど、考えないでも分かるが。
瞼を閉じると、自分の身体の中から、小さな悲鳴が聞こえる。
蠢く魔力と、身体の痛みが、駆け巡る。
あぁ。
もう、時間がないのだ。
身体が、心が、魂が、災いの魔力に染まっていくのが分かる。
気を抜いたら全てを持っていかれる。
「はぁ、、、はぁ、、、駄目だ。耐えろ。」
ぐわんぐわんと、視界が揺れる。
瞳の中が災いの魔力に飲み込まれる。
一瞬、何も見えなくなる。
恐怖を感じた。
けれど、それでも自分を落ち着かせる。
何も見えなくなっても、思い出すことはできる。
自分の、小さな光を。
長い年月を一人で苦しみに耐えてきた。そんな時に現れた一筋の光。
幼いその手は、自分に温もりをくれた。
凍えていた身体も、心も、魂までもが温かな、太陽の光に照らされたかのようであった。
そうだ。
フィリアを残しては行けない。
そう思い、瞼を開けるとそこにはニフエルがいた。
ニフエルは、ため息をつくと、部屋の中に、聖なる光を溢れさせていく。
「少しは、私でも力になれる。だから、耐えろよ。決して負けるな。」
その言葉に、思わず笑った。
「あぁ。負けないさ。」
「昔からお前は、お人好しすぎる。」
「そうか?」
「そうだ。だが、人間と生活し、私にも少しはその気持ちが分かった。」
「っはは!そうか。」
「だから、諦めるな。皆がついている。」
グリードは、皆を思い出す。
フィリアが見守ってきた彼らを、自分も共に見守ってきた。
大丈夫だ。
まだ、自分は耐えられる。
精霊王らは、それを彼方から見つめながら、笑う。
『よく耐えるな。』
『本当に。本来ならばすでに呑まれているだろうに。』
『愛の力か?』
『あぁ。フィリアもアイツを好いているしね。』
『ここまでこれたら、上手く行くようにって思ってしまうわぁ。』
『フィリアの願いならば尚の事な。』
『だが、、、それは。無理だろうな。』
『あそこまで強力な災いの魔力だ。』
『グリードだけの力では無理だろう。』
『我らの愛子にかかっている。』
『そうだね。』
『ならば、祈ろう。』
『我らの愛子の為に。』
最後のイベントが、やってくる。




