トキヤ~異世界㊲一日目終了~
「後衛は俺がやる。」
「はぁ?トキヤが後衛?」
リーシュが素っ頓狂な声を上げた。こちらも、俺の動きを理解しているからこそなのだが、他に後衛を任せられる人材がいないのだから仕方ない。
最初は、俺が前衛に出て瞬殺すればいいかとも思ったのだが、それをすると、リーシュたちに経験値がはいらないのではないかという不安があった。
レベリングと連携強化が目的で、経験値が入らないとなるとやる意味がなくなってしまう。
俺たちは強くならなければならないのだ。
その点、俺が後衛にいれば、なんだかんだと後回しになっていた実験もできるし、相手に一発でも入れれば経験値になるなら、単発魔法でもラストアタックでも問題ない。
「他にやれる奴がいないだろ?」
「そうだけど……」
いまだに不安そうなリーシュ。よく考えてみれば、ギガントオークは簡単に討伐できる相手ではないのだ。
一つ間違えれば死ぬことだってありえる。
そんな相手に挑むからこそ、パートナーは強い方がいいのだろう。リンドウを信頼していないわけではないが、攻撃力に不安を感じているのだろう。
「安心しろって言っても難しいよな。うーん……どうしたもんだろうな。そうだ。リーシュたちの戦闘中にかけてやる予定だった魔法の効果を見てみるってのはどうだ?」
当たりどころが悪く、一撃で沈められる可能性だってある。そうならないように、リーシュたちには俺の魔力障壁に近い魔法をかける予定だった。
いきなり披露して驚かせてやろうと思っていたのだが、不安を取り除くために、今、見せてやることにした。
「ほら。見えるか?これをかけてやるつもりでいたんだ。ある程度までの攻撃は通さないし、通ったとしても、二重膜になってて、この膜が威力を抑えてくれるんだ。」
ス○ルトとフバー○を重ねがけするイメージと、俺の使っている魔力障壁で対象を『覆う』イメージで作ったオリジナル魔法だ。
あ、いや、正確には、第三の目がある賢者様の魔法をパクったのだが、ここでそれをいう必要はないだろう。
「オリジナルスペルだから名前はないし、どれだけの威力に耐えれるかとかも確認してないけど、ないよりマシだろ?」
俺の説明に、ゴクリと喉を鳴らす3人。どうやら圧倒されているようだ。
確かに、反則っぽい魔法ではあると思うが、命がかかっているんだし、これくらいの威力は許してもらいたい。
「あなた……一体何者なの……」
リーシュが小声で呟く。しっかりと聞き取れてはいたが、聞こえないフリをすることにした。
「他にも、旅の魔法使い様から教えてもらった魔法がたくさんあるんだ。便利なものもたくさんあるんだけど、旅の魔法使い様のオリジナルばかりだから、あんまり使うなって言われてるんだよ。」
旅の魔法使いから教えてもらったことにしてしまえば、リーシュとて納得するしかあるまい。
「旅の魔法使い様ねぇ……。」
旅の魔法使いと言えば、そんなものなのかと少なからず納得を示していたリーシュも、さすがにだんだんと通じなくなってきているようだった。
『だんだん通じなくなってきたな。』
俺は心の中で深いため息をついたが、気を取り直して3人に話し始める。
「それで、みんなはこの布陣で構わないか?」
「「はい。」」
「いいわよ。」
その後、思いつく限りの連携パターンと、刺客が攻撃してきた場合の対処法を確認して、俺たちは休むことにした。
「あ、トキヤはちょっと待って。」
リーシュに呼ばれて、18禁な期待を胸に待っているとなぜか簀巻きにされてしまった。
「え?」
「あんたは危険だから、しばらく寝るときはこうしておくわ!」
どうやら、睡眠中に俺がみんなにイタズラすると思っていらっしゃるようだ。
そんな手があったか!と心から思う俺であったが、どこから刺客が監視しているか分からない……まてよ?ジャミングの魔法とか使えば問題ない……いやいや、さすがにこの状況でそんなことはしない。
「お、おい!これだと、刺客が襲ってきたら対応できねーよ!」
「そ、そうですリーシュさん!それに、これで眠れというのはあまりにも不憫です!」
この程度の拘束なら魔法でどうとでもなるので全く問題ないのだが、それを知らないミューは、真剣に心配してくれているようだ。
「甘いわねミュー。多分だけど、こいつの力は常識から大きく外れたものよ。それこそ、こんな拘束程度じゃ、拘束してないのと変わらないんじゃないかしら。」
その言葉を聞いた俺の背中に冷たい汗が流れた気がした。
リーシュの推理はズバリ的中しすぎだ。
「だけどね、エッチなことをするには拘束を解かなきゃならないでしょ?もし、拘束を解かずに、大人しくしていれば、私たちの信頼を勝ち取れるけど、拘束を解いてエッチなことをしちゃったら、私たちの信頼は二度と得られないわ。」
「「「なるほど。」」」
俺を含めた全員が思わず声に出して納得してしまった。
『まてよ……たしか、大賢者カ○ル様の魔法に時の砂の魔法があったはず……いや、ダメだ。魔法自体は問題なく発動しそうだけど、虚しくな……らないな。眠りの霧とか発生させてイタズラ放題とか素晴らしいな。でも、やっぱダメだな。ラノベとして発売できなくなっちゃうな。』
俺の倫理は、最後の最後で何とか踏みとどまった。
こうして、俺だけ簀巻きにされてベッドに転がされるという、なんとも妙な展開になった。
『さて、寝る前に結界張っとくか。あ!これってトイレどーすんだ!?』
そんな締まりのないことを思いながら、冒険1日目が終わった。




