トキヤ~異世界㉜謎の双子~
そんな俺の意図が通じたのかどうかは不明だが、2人は慌てることなく俺を見ている。
どうやら、これからどうすればいいのかという指示を待っているようだ。
「この状態ならいけるか。」
2人の様子を見て、俺は2人に囮になってもらうことにした。
「ミュー。リンドウ。ここは2人に囮になってもらう。不安もかなりあるだろうけど、俺が絶対に守ってやるから、信じてくれないか?」
2人の表情に一瞬だが不安の色が宿ったが、すぐさま決意の表情へと変わっていった。
俺はその後、2人に簡単な説明をおこなった。まずは、俺と別れた2人が適当な路地に入り込む。
当然、刺客は2人を攻撃してくるだろう。そこへ、俺が颯爽と登場して仕留めるというものだ。
「相手が3人ならラッキー。まとめて始末できる。2人と1人に分かれても、一瞬で仕留めてしまえば問題ないだろう。」
俺はそう言って締めくくったが、強制的に相手を戦闘不能にするような攻撃や、閃光弾のようなものを使われた場合にどうするかなど、いくつかの攻撃パターンを想定しておいた。
視界に入ってくれれば一撃で仕留められる自信はあるのだが、視界の外から攻撃してこられると面倒だ。
逃げてしまうのもアリなのかもしれないと思ってしまう。正直、安全策をとっても問題ない場面なのだ。
「ん?」
そう思った瞬間、俺は自分の中で魔力が乱れたような気がした。
「どうかしましたか?」
「いや、ちょっと、何か体の中で違和感があったというか、魔力が乱れたというか……言葉にはできないんだけど、何か妙な感じがしたんだ。」
ミューの問いかけに俺は曖昧な答えしか返せなかった。
「もしかすると、何かしらの繋がりが途切れたのかもしれません。虫の知らせなどと違い、これは自分の中で、何か妙な感覚があったと言い切れるので、ほぼ間違いないのです。トキヤさん。もしかして、魔法的な繋がりをどこかに残してきていませんか?」
リンドウの言葉に、俺は思い当たることがあった。
『罠にかかったか?この場所からなら、ミューとリンドウと戻っても十分な距離だ。』
そう考えた俺は、2人に対して、すでに刺客を1人捕えていることと、そいつに対して罠を仕掛けていることを告げた。
「一体いつの間に……」
2人は呆れ顔でこちらを見ているが、正常な状態に戻るまで待っているほどの時間はない。
「とりあえず、罠のところまで戻ってみよう。すぐに動き出せるならついて来て。まだ呆けてるつもりなら、ここにいた方がいい。」
「い、行きます!」
呆けている2人を連れて行くほど余裕があるわけではない。しかし、俺の言葉を聞いた2人は、なんとか思考を再起動させることに成功したようだ。
「駆け足で行くけど、そんなに早く走るわけじゃないから安心してくれ。俺、ミュー、リンドウの順で行こう。リンドウ。後ろの警戒だけは絶対に怠るなよ。」
2人がしっかりと頷いたことを確認してから、俺は目的地に向かって走り出した。
「もうすぐだ。」
5分ほど走っただろうか。
罠の設置場所まではもう目と鼻の先だ。そう思い、どの建物かを確認していたその時だった。
ドオォン!
「なっ!?」
見上げた先で爆発が起こった。
小規模だったからなのか、建物の倒壊などの二次被害は起きていないようだが、爆発のあった建物では悲鳴が聞こえていた。
「トキヤさん!」
リンドウが警戒を強める。
リンドウの言いたいことはさすがの俺でも分かる。しかしながら、ラノベ展開としては疑問を抱く展開だ。
今回のような流れであれば、罠にかかった刺客を囮にして、残りの刺客をおびき出す展開にした方が、イベントとしてはスムーズに進んでいくはずだ。
刺客を爆殺されてしまったら、今後、このイベントはどうやって進めればいいのだろうか。
「仲間を見捨てた?いや、仲間割れとかか?」
そう呟きながらも、仲間を見捨てることはないだろうと思っている自分がいた。なにせ姿を見せてまで仲間を助けに来るような連中なのだ。
そんな仲間を大切にするやつらが、仲間を爆殺などするだろうか。
同じ理由で、仲間割れもないだろう。
作戦行動中に仲間割れをするようなら、あれほど息の合った連携を見せたりはしないはずだ。
「トキヤさん!私たちなら大丈夫です!行ってください!」
思考がまとまらない中で、ミューの言葉に反応した俺は、思いきり地面を蹴った。
今までにない速度の中で、爆発が起こった建物が近づいてくるのが分かる。
「おらぁ!」
大量の野次馬がいる遥か手前で、今度は地面を蹴って飛び上がった。
「いた!」
飛び上がった先には、爆発地点を見つめる2つの背中があった。
『これで終わり……ん?』
先制攻撃を仕掛けて、一瞬で終わらせるつもりだったのだが、視線の先にいる2人があまりにも無防備すぎたため、攻撃することを躊躇ってしまった。
着地して様子を伺う。
あえて無防備を装い、相手に攻撃させるという戦法かとも思ったが、よく見ると、どうやらそうではないようだ。
「なんだ……わざと……じゃないな。悲しみに暮れている?」
俺の攻撃を誘っているようには見えないし、魔力を内側に溜め込んでいる様子もない。下手をすると、こちらに気づいていないのではないかと思えるほど、相手は無防備だった。
「お前ら……」
最大限の警戒を維持しながらも、俺は2人に声をかけた。
その声に反応するように、2人はこちらを振り向いた。
「女……の子か?同じ顔だな。おい!ここで何があった?お前らはどうしてここにいるんだ?」
仕掛けた罠が発動し、掛かったやつがエサごと吹き飛んだということは分かっている。
そして、それを見つめている様から考えると、多分だが、あの2人が残りの刺客だろう。しかし、背は俺より低く、華奢な体つきで女の子ときたものだ。
本当に刺客としてやっていけるのだろうかと不安になる。
しかし、この状況を考えると、相手がミューを狙う刺客であることは間違いない。間違いないのだが、人違いの可能性だってゼロではない。
だからこそ、俺は相手に尋ねたのだ。
「あなた?」
右側の女の子が声を発してくれた。
ゴボォ!
次の瞬間。俺は左脇腹を思いきり蹴られていた。
「ぐっ……」
蹴られた衝撃で屋根を転がる俺。
魔力強化のおかげでダメージはほとんどないのだが、魔力強化をしていなければ、それなりのダメージをもらっていた。
「くそっ!」
俺が態勢を立て直して立ち上がった瞬間、目の前に先ほどの女の子がいた。
「あなた?」




