トキヤ~異世界㉕お約束~
『ほらね。』
俺はため息をつきながら、声がしたほうに視線を向ける。すると、そこにはどこかで見たようなハゲがいた。誰だっけ?
「おい、聞いてんのか?まぁいい。それよりも、お前、そこにいる二人の仲間か?」
ハゲはミューとリンドウを指さした。
『思い出した!ミューとリンドウに絡んでたやつだ。』
ミューとリンドウを酒場の前で助けたとき、魔力弾で吹っ飛ばしたハゲが、今度は俺に絡んできた。しかし、なぜ俺に絡むんだろうか。
俺が一番弱そうだから?いや、外見に関しては、あの時よりもマシになっているはずだ。
そんなことを考えていると、ハゲーン2号が話を続けた。
「悪いことは言わねぇ。そいつらはやめとけ。成功する冒険者ってのは、パーティーにも華があるもんだ。言っちゃ悪いが、そいつら二人からは何も感じねぇ。その点、お前とそこのエルフは違う。見るからに成功する冒険者の器だ。」
『ほぅ。詳しく聞こうか?』
なんて、某〇ルフの司令官のポーズを心の中で取りながらも、黙って話を聞く。
「そこでだ。あいつらとパーティーを組んでるなら今すぐにでも抜けて、お前とエルフで俺のパーティーに入れよ。普段なら、契約金なんかをもらうところだが、今回は特別にタダでかまわねぇ。どうする?」
ハゲーン2号の言葉に、ミューとリンドウがなぜか固まってしまった。
俺が別の人間とパーティーを組むとでも思ったのだろうか。そう思っているならば心外だ。
まぁ、こんな状況でなければ、迷わず飛びつく話だ。
情報の無い世界で、あっちからパーティーに誘ってくれるのは、願ったり叶ったりだ。しかし、こいつは見る目がない。
俺のパーティーには、華がないどころか、華しかないのだ。まぁ、瓶底メガネを外したミューの美しさや、リンドウの変身なんてものを看破できる人間なんてそういないだろうから、華が無いと思うのも仕方ないことだろう。
そんな自分の思考に、うんうんと頷いていると、苛立ったような声が聞こえてきた。
「で、どうすんだよ。」
どうするも何も、断るに決まっているのだが、断ろうとした瞬間、俺の脳裏にある疑問が浮かんだ。
「なぁ、俺だけでも構わないのか?」
その問いに、ハゲーン2号は、本当に一瞬だが沈黙した。
「ちょっと!」
リーシュが驚いた顔で声をかけてくる。
「おう!お前さんだけでも構わないぜ!」
嘘だな。いや、俺だけでも構わないのは事実だろう。
絶対にリーシュが付いてくると踏んだのだ。
こいつの狙いはリーシュだ。
俺とリーシュをパーティーに引き込んだあと、実力やら信頼やら、なにかと難癖をつけて、俺だけパーティーから追い出す気でいるんだろう。
一瞬の沈黙でそこまで考えるとは、頭の回転はそこそこだ。しかし、俺としては、そんな欲にまみれた提案は真っ平ごめんだ。
「さっさと答えろよ!」
考えている途中でハゲーン2号が声を荒げる。たったこれくらいの時間も待てないとは、色々な意味で終わっている。
丁重にお断りしても良かったのだが、俺としては、仲間をコケにされて黙っていられるほど、人間はできていない。
目立ちたくなかったのだが、実力に関してはいずれバレるんだ。遅いか早いかの差だろう。
そう思った俺は、ハゲーン2号に一歩近づいた。
「あん?来る気になったのか?」
自分の計画通りに進んでいると思い、ニヤニヤしているだけなのだろうが、俺には下卑た笑みにしか見えなかった。
「あの2人は俺の大切な仲間だ。それに、お前が言うエルフも手放す気はない。とりあえず、お前は果てまで吹き飛んどけや。」
社畜時代からは考えられないようなセリフだ。
俺もこの世界にしっかり染まってしまったなと思いつつ、拳に魔力を集中し、正拳突きの(ような)構えをとった。
「はぁ!てめぇ、何を偉そうに!俺は親切で言ってやってるんだ!感謝されてもいいくれーだぜ!それになんだ!その構えは!攻撃するつもりか?ここはギルドだぜ?ケンカはご法度なんだよ!」
あ、そうだった。しかし、俺の中で、ハゲーン2号に攻撃することはもはや確定事項だ。
「黙れよ。」
その言葉と同時に、ハゲーン2号が壁を突き破り、建物をも無視して真っすぐに吹き飛んだ。
3割ほどの魔力強化だったのだが、一般人に向けて使うにはかなり危険なようだ。というか、あれは死んでるかもしれない。
まぁ、勉強になったから良しとしよう。と、開き直りたいところではあったが、周囲の冒険者の視線がそれを許してはくれなかった。
「わぁーい。まぐれ当たりがクリティカルヒットしたー。」
ハリウッドもビックリの超絶演技を挟み込んでみた。これでこの場を乗り切れれば……
「トキヤ……」
「「トキヤさん……」」
3人の視線が痛すぎる。
「「「それは無理。」」」
やっぱりか。
それにしても、俺の仲間は息がピッタリだ。
連携の訓練なんか必要ないのではないかと思うくらいだ。気になるのは、周りの冒険者も頷いているところだ。
これで誤魔化せないとなると、あとは『テヘペロ』くらいしか思いつかないのだが……。
吹き飛んだハゲーン2号を追いかけるように、慌てて助けに向かう冒険者の姿があった。きっと仲間なのだろう。
ちょっとだけ悪いことをしたような気もするが、仲間をコケにされたのだ。
黙っているだけではナメられるだけだ。
『あ、生きてる生きてる。』
ハゲーン2号はなんとか生きているようだ。良かった良かった。
「さて、周りも黙ったところで、登録に行こうぜ。」
他の冒険者はすっかりと黙ってしまっていた。示威行為としては成功したのだが、俺に対する視線に、警戒がこもりすぎている。
「何いきなり仕切ってんのよ。前々から思ってたんだけど、あんたちょっとおかしいわよ。強すぎよ。」
それに加えて、リーシュが怪しんでいた。
以前から怪しいなとは思っていたようだが、今回の騒動で確信したのだろう。
聞かされたステータス以上の能力を目の当たりにしているのだから、それはそれで当然だ。
不思議に思わないほうがどうかしている。
「あー。あれだよ。一子相伝のスキルがあるんだ。身体能力を爆発的に高めるかわりに、相応のリスクを背負うってやつ。リスクが何かは教えられないけど、ステータスは10倍くらいまでなら上げられるんだ。」
「す、すごいスキルですね。」
リンドウが感心したように答える。口から出まかせなので、俺の良心ゲージはガリガリと削られていくが、あながち間違ってはいない。
10倍くらいなら、ほんとになんとかなりそうなのだ。




