トキヤ~異世界㉑勘違い勇者?~
説明を読んだ感想はこれだった。
その後、数瞬の間、呆けてしまった俺だったが、運営(?)から修正が入るまでは、便利に使わせてもらおうと心に決めた。
きっと修正が入るのだから、このスキルの便利さに慣れてはいけないと思いつつ、これほど使い勝手の良いスキルも他にあるまいと思ってしまう自分がいる。
分かりやすく言うなら、このスキルは最強だ。
「勇者スキルの一部が下位互換みたいになったな……」
『魔法適性』やら『聖なる雷』なんかはまさにそうだろう。
イメージだけで魔法をぶっ放せるなら、適性だろうが固有魔法だろうが全く関係ない。
MPに注意は必要だが、消費魔力の基準が分からないため、警戒するところまではいかないだろう。
「そもそもだ。俺はどうやってこのスキルを手に入れたんだ?」
どうやって手に入れたか……つまり、スキルの発現条件について皆目見当がついていないのだ。しかし、『いつ』の時点で発現していたかというのは、何となくだが分かっている。きっと、リーシュを抱えてジャンプした後、着地のために魔力を纏った時だ。
あの時は、魔力で体を覆うことくらい、出来て当たり前だと思っていたが、超難度の技術だったのだろう。まぁ、某少年雑誌で長期連載中の漫画を読んでいなければ、俺もそんなことをしようとは思わなかった。
そんなことも考慮すると、この技に必要な発想力の高さは相当なものだ。
『何が出来るか検証したいところだが、とりあえず戻らなきゃな。』
俺は新しく手に入った力に胸を躍らせながら、スキル画面を閉じた。
「あ、やっと出てきた。何してたのよ?」
リーシュが声をかけてきた。
俺としてはそんなに時間をかけたつもりはないのだが、思っていたより時間がかかっていたのかもしれない。
「さて小僧。お主のステータスを聞かせてもらおうかの。小娘どものステータスはもう聞いておる。あとはお主だけじゃ。」
「ここで言うのか?」
いくら『力』『素早さ』『体力』だけとはいえ、ステータスを公開するのは躊躇われる。
仲間を信用していないわけではないのだが、どこから漏れるか分からないのだ。
「なんじゃ?そんなに繊細な心の持ち主なのか?」
「そんなわけじゃねーよ。俺のステータスをリーシュたちが知ることで、危険が増す事だってあるんだよ。」
ギルサムは俺を小馬鹿にしたような口調で尋ねてきたが、俺の言葉を聞いて表情が変わった。
「どういうことじゃ?」
「例えばだ、俺の力が10とするだろ。俺を殺したい奴が、20のステータスの奴を刺客として送り込んできたら、俺は苦戦するはずだ。ステータスがバレるってことは、そういう刺客を呼び込みやすくなるんだよ。」
俺は他にも、あるのかどうかも分からない『誘惑』や『魅了』の魔法、自白を強要させるような魔法の話をしながら、ステータス情報の漏洩による危険性を説明していった。
「なるほどのぅ。お主の話通りとなると、一番狙われるのは儂じゃが……。わっはっは!そんな賊は片っ端から吹き飛ばしてやるわい!」
そう言い切った残念ドワーフがそこにいた。
こりゃダメだと心の底から思った。こいつはまるで分かってない。
『こりゃ、解らせる必要があるな。』
そう感じた俺は、脚に魔力を集中した。
「ギルサムさん。あんたがそこそこ強いのは雰囲気で分かる。けど、世界は広い。言いたかないけど、あんたより強い奴は山ほどいるだろう。そいつらに狙われてなお、情報を守れんのか?」
「む……うっ!」
ギルサムが言葉に詰まった一瞬だった。俺は集中した魔力を推進剤として、ギルサムの後ろに回り込み、手でピストルの形を作って背中に押し付けた。
リーシュたちも、この状況を、固唾をのんで見守っていた。
「ギルサムさん。あんたが狙われるのは、申し訳ないが俺にとってどうでもいいんだ。けど、俺のステータスを知ることで、仲間に危害が及ぶことを、俺は許容できない。」
そう伝えると、ギルサムは両手を上げて、降参のポーズをとった。
「分かったわい。お前さんのステータスは別の部屋で聞くとしよう。」
そして、俺とギルサムは隣の部屋に向かった。
「さてと。まずは手荒な真似をしてしまったことを詫びさせてほしい。すまなかった。ちょっとした理由があるんだが、理解してほしい。」
部屋に入って早々、俺は先ほどの非礼を詫びた。
力に任せるようなやり方は取りたくはなかったのだが、自分のステータスがどれほどチートなのかが分からない以上、リーシュたちにステータスを知られるわけにはいかなかったのだ。
リーシュたちのステータスを聞くことが出来ていれば、話はまた違っていたかもしれないが、今、それを言っても仕方ない。
「ここまで徹底するほどじゃ。何かあるのは理解できるわい。まぁ、儂にはどうでもいいわ。ほれ。それほどまでして隠したかったステータスを早う教えんかい。」
何やら興奮しだすギルサム。どうやら、俺のステータスがかなり気になるようだ。
そんなギルサムに俺はステータスを伝えた。
「はぁ!?なんじゃそのステータスは?」
『やっぱりチートか……』
ギルサムの驚いたリアクションで、俺のステータスがチートだということは確定した。
俺はため息をつきながら、次はどんな言い訳をしようかと思い悩んでいると……
「そのステータスでよくあんな大きな事が言えたもんじゃな!」
「は?」
馬鹿でかい声もそうだが、その内容に驚いた。どうやら、俺のステータスはチートでも何でもなかったようだ。
まぁ、それはそれで一安心なのだが。
「ど、どうしたのよ!」
間髪入れず、勢いよく扉が開いたと思ったら、リーシュたちが飛び込んできた。
「どうしたもこうしたもあるか!この小僧、あんな大口を叩きよるから、どれほどのステータスかと期待してみれば、そこらの中級冒険者より劣るではないか!確かに、この若さならば頭一つ抜けた力じゃろうが、儂に槌を振るわすほどではないわ!」
怒りに任せて全て話してしまうのはどうかと思うが、かなり有益な情報を得られたということでチャラにしておこう。
「えっと……具体的にどれくらいか聞きたいんだけど、構わないのかしら?」
リーシュがおずおずと尋ねてきた。
まぁ、このステータスが中級冒険者並であるならば、知られたところで問題はないだろう。そう判断した俺は、リーシュたちのステータス情報と引き換えに、自分のステータスを伝えた。
「えっと……そのステータスの値で、私の攻撃を防いだんですか?それに、私の腕をつかんだ時の力は、そのステータスだと出せない気がするんですけど……。」
変身しているにも関わらず、口調が戻ってしまっているリンドウが最初に口を開いた。
リーシュとの間に割って入った時、俺は無我夢中だった。
あの時、俺は何かしらの強化を施した覚えもないし、意識的に身体を魔力で覆うこともしなかった。あの時は、勇者補正のなせる業だと思っていたが、もしかすると、無意識のうちに魔力強化が発動していたのかもしれない。
8割くらいキレてたから、ほとんど覚えてないんだけどね。
「そ、そうよ!それに、その素早さじゃ、20メートルも跳ぶなんて不可能よ!
「20メートルも跳んだんですか!?」
リーシュの言葉にミューが反応する。リンドウとギルサムも驚いているようだ。
「あっ!」
ついうっかり情報を漏らしてしまったことに気が付いたのだろう。
リーシュが慌てて口を押えるが、時すでに遅しだ。
「リーシュさん?」
俺は静かに、それでいて満面の笑みで声をかけた。
「……」
リーシュはただ黙って頷くだけだった。自分がしでかしてしまったことの重大さを理解しているのだろう。
まぁ、ラノベでは鉄板ネタにはなっているが、普通は冒険者が他の冒険者の能力をバラすなんてのは、マナー違反すぎて、駆け出しでもやらないレベルなはずだ。
「今日の夜は……分かってるよね?」
俺は笑顔でそう告げると、リーシュは涙目になりながら頷いている。というか、頷くしかないという感じにも見える。




