トキヤ~異世界⑳修正待ちの能力とは~
「1つだけレベルが上がっていたわ。あのゴブリンの群れの経験値が効いたわね。でも、おかしいのよね。1つしか上がってないのに、ステータスの伸びがとんでもないのよ。」
それを聞いて、俺は疑問に思うことが2つあった。
まずは、経験値の獲得条件はどうなっているのかということだ。
ゴブリンに囲まれた時、リーシュはその場にいたものの戦闘には参加していなかった。
ゲームなら、獲得経験値はメンバーで山分けとなる。しかし、それはあくまでもパーティーだった場合だ。あの時、リーシュとはパーティーを組んでいなかった。まぁ、正式なパーティーの組み方というのがよく分からないので、今の状態もどうなんだって話なんだけど。
仮に、戦闘に参加せず、近くにいるだけで経験値が入ってくるならば、パワーレベリングが可能になる。
これが出来るならば、ミューやリンドウのレベル上げが簡単になるんだけど……。
いや。それをするとなると、まずは経験値の配分について調べる必要がある。
一撃いくらで経験値が入るのであれば、レベリング方法自体を考え直さなければならないしな。
ただ、この街に辿り着くまでに、リーシュも参加した戦闘がいくつかあったので、その時の経験値によってレベルアップしたとも言えなくもない。つまり、直接殴らなければ経験値が入らないという可能性があるということだ。
どちらにせよ、検証は必要だろう。
しかし、毎回測定盤を持ち出すわけにはいかないし、戦闘の度に測るなんて面倒すぎる。
それに、測定盤のお値段がいくらかも分からないのもネックだ。見る限り、かなり高度な技術が用いられていると思う。
チートの魔術師が活躍するラノベでは、この技術は破格のお値段で提供されているしな。
もう一つの疑問は、リーシュのステータスの伸びについてだ。
まさかとは思うが、俺のスキルの恩恵を受けているのではないだろうか。まぁ、そんなことを思っても、マナー違反にあたるため、ステータスを直接聞くことはできない。
勇者だと打ち明けて、ステータスに補正がかかっているというべきなのだろうかと悩んでいるうちに、いつの間にかミューとリンドウの測定も終わっていた。
部屋から出てきた二人は、何やら納得いかないという顔をしていた。
「どうしたの?」
2人の表情を見たリーシュが尋ねる。
「えっとですね、私たちはここまであまり戦闘はしてきませんでした。その……敵にも出会いませんでしたし……。ですので、レベルは上がっていないはずなのですが、ステータスの値が上昇しているんです。」
『あ、これは間違いない。』
俺は目を細め、遠くを見つめた。
「勘違いじゃないの?前からその数字だったとか。」
リーシュが再び尋ねると、リンドウが返事をした。
「それはあり得ません。私は、姫さ……じゃなくて、ミューのステータスを把握していますので、上昇に関しては間違いありません。それに、おかしなことに、私のステータスも上昇していました。」
とりあえず、リンドウがミューを姫様と言いかけたことは置いておいて、いよいよおかしな展開になってきた。
その時、ふとどこからか視線を感じたので、その気配を探ってみると、リーシュがこちらを見つめていた。
いや、違うな。
見つめているんじゃなくて、何かを疑っているような目だ。
まぁ、何かを疑われたとしても、証拠がないんだから、最悪しらばっくれてしまえばいいだけの話だ。
けれど、気持ちのいい話ではないのは間違いない。打ち明けてしまうのも手だろうな……。
そんなことを考えていると、いよいよ俺の出番となった。
測定盤を受け取って隣の部屋へと進んでいく。
扉を閉めたところで、俺はどうするかを考えるあまり、肝心の測定の方法を聞いていなかったことに気づいたのだが、もはや後の祭りだろう。
『さて、困ったぞ。どやって動かしたらいいものか……。』
そう思いながら、測定盤をテーブルに置いて、スイッチ的な何かを探したのだが、まるで見当たらなかった。
「やっぱり、これに何かするんだと思うんだよなぁ。」
そう思いながら、俺は宝石に向けて魔力を流し込んでみた。
「反応ナシ……」
続いて、俺は指先を少しだけかじった。指先から、少しずつ血が滲んでくる。その血を、測定盤の宝石に垂らしてみた。
「これもダメ……あ!汚しちまった!」
慌てて血を拭き取る。
次に、測定盤に両手を乗せてみた。
指紋認証的なギミックがあるかもしれないと考えたのだが、この方法でも、測定盤は反応しなかった。
「これだけはしたくなかったが、仕方ない……」
俺は最後の手段にでた。
「ステータス画面画面っと。」
自前のステータス画面を開くという禁断の荒技にでた。
正直なところ、ステータスが分かればいいのだ。
測定盤なんぞ、無理に使う必要はない。ちなみに、これは決して言い訳ではない。使えなかったから拗ねているというわけでも何でもないのだ。そうやって自分に言い訳をしながら、俺はステータスを開いた。
・名前 トキヤ
・性別 男
・年齢 15
・種族 ヒューマン
・職業 駆け出し勇者
・称号 エルフの隣人
・レベル 10
・力 80
・素早さ 110
・体力 80
・賢さ 140
・運のよさ 5
・最大HP 170
・最大MP 257
・攻撃力 160
・守備力 5
・装備品 旅人のマント 奴隷のくつ
・所持金 0
「まぁ、変わってないわな。」
どうやら、ハゲーンとの戦闘は経験値として認められなかったようだ。
「いや。違うか。あれが経験値として認められないなら、兵士の訓練が無意味なものになる。ということは、レベルアップするほどの経験値が入らなかったのか。」
当たり前のことを一つ一つ確認していく。まどろっこしいが、今はこれが必要なのだ。俺は次に、改めてスキルを確認することにした。
『スキル』
・勇者(特級)
・複製(上級)
・言語理解(下級)
・超感覚(上級)
・魔法ヲ創リシ者(特級)
『増えてるし!つか、特級かよ!』
心の中でガッツポーズを繰り出しながら、俺はもう一度、個別に確認していった。
・勇者(特級)
『世界を救う伝説の英雄』
自身の行動に対して、常に民衆の支持を得ることができる。
自身の行動を、民衆が都合よく解釈してくれる。
『カリスマ』
圧倒的なカリスマで周囲を惹きつける。
大規模集団戦闘において、リーダーに指定された場合、配下の士気を上昇。全ステータスを10%
上昇させ、「不屈の闘志」を付与する。
『勇者補正』
レベルアップ時のステータス上昇値に補正がかかる。
パーティーメンバー全員の全ステータスを30%上昇させる。
『武器適性』
全武器に適性を持つ。
武器固有スキルを5まで使用可能。
『鎧適性』
威厳のある勇者的な鎧を装備したとき、守備力が10倍になる。
『魔法適性』
闇属性以外の魔法なら、ランク3まで全て覚えることができる。
『聖なる雷』
勇者のみに与えられる固有魔法。レベルの上昇に比例して威力が増す。
魔力を注ぐ量により、威力が増す。闇属性の相手に2倍の効果を与える。
『闇を払う者』
闇属性の相手に対して攻撃力が上昇する。
『闇の敵対者』
闇属性の相手から受けるダメージが倍になる。
『光に導かれし者』
精霊を視ることができる。
『神の加護』
即死耐性や痛恨率の低下。
バットステータスからの自然回復速度上昇。
『勇者の宿命』
行く先々でトラブルに巻き込まれる。
『???』
『あー……やっぱりこれだな。』
俺は、改めて勇者補正の凄さを実感した。
やはり、俺たちはパーティーとして扱われているようだ。しかし、どうやってパーティーと認められたのかどうかは分からない。
疑問が解決する度に、新しい疑問にぶち当たる。
まさに手探りという感じだが、一つ一つ解決していくしかない。なんとももどかしいが、仕方ない。半ば諦めつつ、俺は残りのスキルを確認していった。
・複製(上級)
『ものまね』
他人が持つスキルをレベル2まで複製して、使用することができる。ただし、複製が成功するかど
うかは、相手の気持ち次第である。複製した能力は、相手が死ぬと失われる。
複製した能力は、鍛錬次第で、相手の死後も失われず、自身に残り続ける。
・言語理解(下級)
『世界共通語理解』
世界共通語を習得した者に与えられる。
ここまでは変わらないな。さて、次はいよいよ新スキルだ。
・超感覚(上級)
『第六感』
感覚が鋭くなる。
「こんだけ?」
思わず声が出てしまった。
それくらい不親切な説明だったのだ。
まぁ、何となく理解できるし、効果は体験済みなので問題はないのだが、もう少し丁寧に説明してくれてもなぁと思わなくもない。
最後は『魔法ヲ創リシ者』(特級)だ。
名称から、だいたいの中身は想像できているのだが、問題は、どの程度のことまで出来るのかだ。
・魔法ヲ創リシ者(特級)
『創造者』
イメージで魔法を創り出すことができる。ただし、術者が効果をイメージ出来ていない場合や、心
理的な問題が起こった場合、魔法は発動しない。また、消費魔力は術者のイメージに応じて、適切
な量が消費される。その際、保有魔力量を超える魔力を必要とする魔法は発動しない。
『あ、修正入るやつだ……』




