↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/256

トキヤ~異世界⑱異世界での一息~

「いや……リーシュってエルフじゃん。エルフって菜食主義とかなんじゃないのかなって。」


そんな俺の返答に対して、3人が大きくため息をついた。

その表情に、さきほどの緊張はなかったが、いまさら何を言っているんだという感じが強く込められていた。


「あのね。確かに、そういう感覚のエルフもいるけど、全部がそうじゃないの。私も一時期は菜食主義だったけど、冒険者を始めてからはエネルギーをとらないといけないくなって、お肉なんかも普通に食べるようになったわよ。」


呆れながらも、リーシュは丁寧に教えてくれた。

なるほど。食べれないわけではないのか。

ラノベの知識がありすぎるせいか、細かな部分で食い違うところが出てきた場合、気をつけなければならないだろうなと、俺は改めて気を引き締めた。


「はぁ……。トキヤの様子からして、敵でも来たんじゃないかって、緊張しちゃったわよ。」

「はい。私もです。」


ミューの横では、リンドウも頷いていた。

どうやら三人とも、追っ手が現れたのではないかと勘違いしていたようだ。勘違いするところなんてなかった気がするのだが、なんだかんだと、神経が過敏になっているのだろう。


「あぁ、ごめんごめん。」


俺はとりあえず謝っておくことにした。


何者かの視線をずっと感じてはいるのだが、それについては言わないことにした。


美味しい食事の前に、わざわざ不安にさせる必要もないだろうしな。


『さすがに食事中に襲ってはこないだろう。でもなぁ…そろそろ鬱陶しくなってきたな。』


女の子3人が、いつの間にか手にしたメニューを見てはしゃいでいた。


『ミューを囮にして……駄目だな。守れないわけじゃないけど、気分的に良くないな。宿屋 におびき出すのもなー。何か壊しちゃっても、弁償とかできないし。って!よく考えたら、俺って無一文じゃん!』


追跡者らしき視線への対応を考えている途中で、俺はとんでもなく重大なことに気がつき、慌ててリーシュの肩をたたく。


「な、なぁ。俺さ、森で財布落としちゃったじゃん?」

「え、ええ。だから何よ?」


俺は、何事かと驚くリーシュの耳元で囁いた。


「それでさ、俺って今、無一文なんですよねー……って。」


女の子と食事に来て、お金がありませんというのは、男としてかなり情けない。

穴があったら入りたいくらいだ。


「あぁ、そんなことね。いいわよ。命も助けてもらったし。そ、それに!あなたとはこれからずっと一緒にいるわけなんだから、しっかり働いて稼いでよね!」

「あぁ、分かった……って!えぇ!!」


リーシュさんから、まさかの受け入れ宣言が飛び出した。

そんな俺らのやりとりが気になったのか、ミューとリンドウが不思議そうにこちらを見ている。


「お二人とも、どうされたんですか?」

「な、何でもないわよ。」


ミューの問いかけに対し、動揺を隠しきれていないリーシュ。またしても、耳まで真っ赤なエルフが現れた瞬間だった。

これは、今夜はかなり熱い夜になりそうだ。


「ト、トキヤさん?」


リンドウが不思議そうな顔で俺を見ていた。

おっと。もしかしたら顔が緩んでいたのかもしれないな。

気をつけねば。


「お次、4名でお待ちのお客様どうぞー!」


そうこうしているうちに順番がきたようだ。残念ながら、俺たちを席に案内してくれたのは人間のおばさんだった。ラノベ展開ならば、ここは幼女系の看板娘が登場するところだろうに。


そんな店内は、俺の予想に反してアジアンテイストなものとなっていた。


街並みに合わせたヨーロピアンなものを期待したのだが……。

さらに、メニューを見てもどんな料理かの見当がつかなかった。とりあえず、リーシュのオススメをということでその場はやり過ごせたが、やはりこの世界の常識がないのは厳しいものがある。

どこでバレるか分からないから、内心はヒヤヒヤだ。


「お待たせしました~。」


リーシュたちが、メニューを見ながらデザートはどうだこうだと言っていると、食事が運ばれてきた。


「こちら、クリームサラダの盛り合わせに、グロウドラゴンのステーキと、ホロホロ鳥のオムレツ。それと、エクストラチーズのピザを、それぞれ三人前です。あと、こちらエールになります。」


聞いたことのない食材を使った料理が次々に置かれていく。

前世でも見たことのある料理も並んでいたが、驚くべきはその量だ。


「美味しそうだけど……これで3人前?」


明らかに3人前を上回る量だ。


「ここはね、安い、美味い、多いってのがウリなのよ。それと、ここのエールは他と違って美味しいのよ。」


このエルフは酒まで飲むのかとも思ったが、中世くらいでは小学生でも飲んでいたくらいだからな。

この世界でも、飲み水の代わりなのかもしれない。実際に、この店では飲料水の提供はなかったので、俺の読みは当たっていたのだろう。

変に尋ねなくてよかった。


その後、看板娘の登場もないまま、俺たちは料理に舌鼓をうった。


「んー!美味しー!」

「確かに美味しいです!木苺の酸味がアクセントになってますね!」


食事の後、デザートに突入した3人は、注文したケーキの感想を伝えあっていた。

デザートは別腹だという言葉は知っているが、あれほどの量を食べた後に、デザートを食べることができるというのはやはり凄い。まぁ、日本でも大食いタレントなんて人がいるくらいだから、こちらの世界でも、そんな人がいてもおかしくはないだろう。


「トキヤは食べないの?」


リーシュが勧めてくれるが、すでに俺のお腹は満腹だ。


「あ、あぁ……。もうお腹がいっぱいで入らないんだ。それよりミュー。獣人族って、神格 化しているものとか、祀っているものってないのか?」


俺のこの質問から、ようやく作戦会議らしきものが始まった。


「神格化……ですか?えっと、それぞれの部族に、『始祖』と呼ばれる神様がいらっしゃいます。あと、それらを束ね、部族として我々をお導きくださった獣神様がいらっしゃいます。」

『なるほど。獣神ときたか。確か、配合を繰り返しまくったらできるんだったっけ……って、それは神獣だな。』


思考が逸れまくっている俺に、リーシュが声をかけてきた。


「そんなこと聞いてどうするのよ?」

「ん?いや、言うこと聞かないなら、言うことを聞かせられる人に説得してもらおうと思ってさ。けど、始祖やら獣神やらってのは、もう生きてなさそうだな。」


残念そうに俺は言ったが、実のところ、そんなことは微塵も思っていなかった。俺

のラノベ知識では、こういった連中は必ず生きている。そして、なんらかの影響を一族に与え続けているはずなのだ。


「え?獣神様でしたら御存命ですよ。と言っても、私はまだお会いしたことはありませんが……。」


ほらな。


俺は内心でガッツポーズをした。

これで、作戦の八割は決定打だ。

残る2割は、獣神の場所と、俺のレベル問題を解決すれば大丈夫なはずだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。