トキヤ~異世界⑰新たな仲間?~
「それで、報復に出た猫耳族に対して、さらに報復が始まって……最終的に内乱ってわけか。」
「はい。現在は、我々猫耳族と兎耳族が、猪耳族、熊耳族を頭とした種族と敵対しております。今は膠着状態が続いていて、小競り合い程度で済んでいますが、このままですと、全面戦争にまで発展することは、目に見えて明らかです。」
ここまで聞いた感想だが、率直に言って面倒極まりない。
このステータスに任せて、猪耳族とか熊耳族をぶっ飛ばせば解決するんだろうけど、それをしてしまった場合、ミューの父親の考え方を否定することになる。
解決は、あくまで話し合いが前提だ。
しかし、『力こそ全て』を地で行く連中が、話し合いになど応じるはずがない。
『さて……どうすれば……』
あれやこれやと考えていると、リーシュがある疑問を口にした。
「ねぇ。リンドウは何でそんなに強いの?」
それは思った。あの時、俺じゃなきゃ間に合ってなかったくらいだ。
魔法の強化による補助はあったとしても、あの速さは異常だ。
「別に、特段強いわけではありません。私は、種族特性で素早さがかなり高いんです。それに、回転を加えたりして攻撃してるんですけど……。」
そこまで言って、リンドウが言葉に詰まった。
「どした?」
「一対一なら負けないんですけど、複数で足を止めてくるような戦いはどうも苦手で……。」
まぁ、そうだろうな。
戦闘で重要なのは、個の能力だけではない。もちろん、突出した能力の持ち主も必要なのだが、それが全てではないのだ。複数で来られた時の対応もできてこその戦闘である。
リンドウも、素早さで撹乱し、ヒットアンドアウェイの戦法がとれるのであれば、おそらく負けることはないだろう。しかし、複数を相手取る戦いならば、リンドウの持つ優位性はいともたやすく覆ってしまうだろう。
「うぅ……。それでも、追跡者をなんとか躱しながらここまで辿り着いたのですが、道中、ロクに食事も摂れずでして……。危険だとは思ったのですが、酒場に入ったのですが……そこからはお二人もご存じの通りです。」
展開がここまでベタだと、逆にどうすればいいのか分からなくなってくるのだが、この2人を助けないというわけにはいかないだろう。
では、どう助ければいいのだろうか。
とりあえずの選択肢として、やはり全員ぶっ飛ばしてしまうのが、一番手っ取り早いだろう。
その後、俺が獣人族の長になり、ミューの父親に全権を代理させる。しかし、この方法では、本当の意味でミューの父親が認められたわけではない。
「さて、ここまで話を聞いていたけど、リーシュはどうする?」
「どうするって……」
俺としては、答えは決まっているのだが、とりあえずリーシュにも聞いてみた。
「ここまで聞いちゃったら、助けてあげるしか……って、そういうことね。トキヤさっき言ってた、巻き込まれるって意味が分かったわ。」
そう言って、柔らかな笑みを浮かべるリーシュ。
俺も、肩をすくめて笑い返した。
「さて、こっちの話は纏まった。ミュー。リンドウ。俺たちは手助けがしたいんだが、2人はどうだ?」
「へ?」
俺の問いかけに、ミューが間の抜けた声を出した。
自分たちを置いて話が進んでいることに驚いているのだろう。まぁ、助けてくれなんて言ってないのに、こんな話になっているのだから、当然といえば当然だな。
「だから、俺たちの手伝いはいらないかって話だよ。解決方法とかはまるでノープランだから、そこは考えなきゃなんだけどな。」
「そ、それはとてもありがたい提案なのですが……その……本当によろしいのですか?」
ミューがおずおずと尋ねる。
「別にいいわよ。その代わり、お礼のほうはよろしくね。」
俺の代わりにリーシュが答えたのだが、相変わらず現金なエルフだ。まぁ、理想を語りまくるやつなんかより、よっぽど好感は持てるがな。
「あ、ありがとうございます!」
ミューに続いて、リンドウも頭を下げた。
しかし……バスローブ姿に正座状態で頭を下げると、なんだか土下座させてるように見えるな。
「とりあえず頭を上げて。その……バスローブがね。はだけちゃって、見えそうだからさ。」
「「!!」」
慌てて胸のあたりを抑える二人。
うんうん。素晴らしいリアクションだ。
「トキヤー……」
おっと。リーシュがキレそうだ。
「いや、不可抗力だから。とりあえず、作戦会議も兼ねて飯でも行かないか?二人とも、食事がまだだったろ。それに、いつまでもリーシュの装備を借りてるわけにもいかないから、服屋なんかも見て回りたいし。」
こういうのは、慌てると状況が悪くなるのだ。
冷静に躱して次の話に移ってしまえば、相手はもう何も言えなくなるのだ。
「分かったわよ……。後で覚えておきなさいよ。じゃあ、適当な服に着替えたら、食事に行 きましょう。」
一体ナニを覚えておかなければならないのかも不明だが、きっと夜の話だろうと、あくまでポジティブシンキングに努めることにして、俺たちはリーシュがオススメするレストランへと向かった。
道すがら、俺はリンドウにある質問をしてみた。
「リンドウはやっぱり変身するんだ?」
「お、おかしいでしょうか?」
リンドウは今も変身魔法を使っている。
獣人族が二人もいると目立つからだそうだが、フードを被っているため、なんだか変に目立ってしまっている。それに、瓶底メガネのミューもかなり目立つ。よくこれだけ目立つ格好をして逃げ延びれたものだと、逆に感心してしまうほどだ。
一応、俺としても、襲われた時のために警戒していたおかげで、攻撃を受ける気配はなかった。
『おかしな視線はいくつか感じるんだけどな……。来ないならこっちから仕掛けてみるか?』
そんなことを考えていると、無事に目的地に到着したようだ。
『黄金のらんぷ亭』
ヨーロッパテイストの街並みにとてもマッチした佇まいのレストランだ。オープンテラスは満席で、入り口も僅かだが人が並んでいる。
「あちゃー。ランチも過ぎてるから空いてるかと思ったんだけど、まだちょっと並んでるわね。どうする?別の店もあることはあるけど、待ってみる?」
リーシュの問いに、ミューとリンドウは互いに顔を見合わせた。
「私たちは構いませんよ。リーシュさんのオススメのお店ですから、期待してしまいます。」
「まぁ、俺も別に構わな……ん?」
そこまで言って、俺は突然、脳裏にとある疑問がよぎった。
「どうしたの?」
俺の反応に、リーシュは緊張の色を込めて尋ねてきた。
リーシュにつられて、ミューとリンドウにも緊張が走った。




