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リサ~異世界⑤話の結果~

一方、3人のヒソヒソ話の間、眠るキラーをモフモフし続けた理沙は、それはそれはご機嫌だった。

一体、普段、どうやって毛づくろいをしているのかと思うくらい毛玉もなく、指どおりはサラサラだ。重さにしても、抱きかかえてみた感じだが、予想以上に軽かった。おそらく、10キロを少し超えるかどう

かというところだ。

そんなキラー君は、私に体を撫でられたことが気持ちよかったのか、今はお腹を出してひっくり返って眠っていた。

そんなことをしていると、話し合いを終えた3人が戻って来た。


「嬢ちゃん。待たせ……ん?おいおい。キラーのやつ、腹出して寝てやがるぜ。」


メタきちさんの驚きぶりに、そんなに驚くことかなと思ったが、悪魔さんとハーピィーさんも目を見開いていた。何がそんなに珍しいのか分からない私は、慌ててみんなに質問をする。


「ど、どうしたんですか?人懐っこい犬とか猫って、さすってるとお腹見せて寝ますよね?」


私のその発言で3人が固まってしまった。

そして、3人はお互いに顔を見合わせると、メタきちさんが盛大に笑い出した。

悪魔さんとハーピィーさんも、笑いをこらえている様子だった。


「ぶあーっはっはっは!キラーを犬や猫と一緒にするとは驚きだ!嬢ちゃん。教えておいてやるよ。キラーの種族はキラーパンサーってんだ。素早さと攻撃の正確性で右に出る者はいないと言われている種族だ。そして、そいつの親父は、そのキラーパンサーの頂点に君臨してんだ。言い換えれば、キラーは誇り高き王者の息子なんだよ。」

「へー……」


私は感心しながらも、お腹を出して眠るキラー君を撫で続ける。しかし、キラー君のこの爆睡ぶりを見る限り、今の話はなんとも信じがたい。


「ふぅ……。王者の風格は微塵も感じられませんが、まぁ、いいでしょう。それよりも、気を取り直して話の続きをおこないましょう。リサさん。魔物マスターのスキルの詳細を読み上げていただけますか?」


何故だか分からないが、悪魔さんが疲れていた。

まぁ、確かに、今のキラー君に王者の風格がどうこうだと言っても、そんなものは全く感じることは出来ない。

悪魔さんの言葉を思い返して、私は小さく笑ってしまったのだが、今は笑っている場合ではない。

私は、自らのスキルを読み上げた。


「えっと。

魔物の言葉が分かる。

魔物と心を通わせられる。

心を通わせた魔物のステータスが倍になる。

4名まで、レベル上限の撤廃。

心を通わせた魔物が信じる魔物のステータスが30パーセントアップ。

心を通わせた魔物の数だけ、自身のステータスに補正がかかる。

心を通わせた魔物のスキルを、一定時間ごとに1度使える。

魔物は、このスキルを扱う人間の「心」に、強く影響を受ける。

って書いてあります。」


言い終わって、悪魔さんを見ると、悪魔さんは頭を抱えていた。

何で?


「メタきち……。あいつもこんな能力だったんですか?」

「いや……多分だが……違う。」


表情の変わらないメタきちさんだったが、その困惑ぶりは話し方から十分伝わった。

どうやら、メタきちさんが知っている昔の人のスキルに比べて、かなりパワーアップしているようだ。


「リサちゃんすごーい!」


二人を見ていて油断したせいか、またもやハーピィーさんに抱きつかれてしまった。

なんとか振りほどこうとしたのだが、今回もハーピィーさんは心底嬉しそうだったので、我慢することにした。


「嬢ちゃん。」


硬質な声が響く。

先ほどまでとはまるで違った雰囲気を纏ったメタきちさんだ。

そんな雰囲気のメタきちさんを察してなのか、ハーピィーさんが自然と私から離れていった。


「嬢ちゃんは俺らを信じて、大切なことを教えてくれた。だからこそ、俺らも腹を割る。こっからは、俺らの話を聞いてくれ。」


そう言うと、メタきちさんは今までとは違って真剣に話し始めたのだが、聞かされた内容は、思いきりファンタジーだった。

まずは、邪神の影響から解放された魔物だが、現在は散り散りになっていて、統率が取れない状況なのだという。

それを、このスキルを活かして、各地の魔物を統率してほしいとのことだ。

その方法なのだが、重要な拠点の魔物には、守護獣がいて、人間から魔物を守っているのだそうだ。

さらに、その守護獣を介すことによって、各地の状況を伝えあっているという。

そこで、私に守護獣のところに向かい、人間たちとの争いをやめて、融和を勧めてほしいのだということだ。


「結構、無茶じゃない?」


聞き終えた私は、思わず正直な感想が漏れてしまった。

一体何をお願いされるのかと思っていたが、まさかここまでヘビーなものだとは思わなかった。


「確かに、穴だらけの計画です。守護獣が簡単に頷くとも思えない。それに、厳しい旅になるでしょう。けれど、これは我々の悲願なのです。リサさん。あなたには、兄を捜すという目的がありますよね。けれど、それを達成するための手がかりはない。それに対して、我々魔物は数が多く、それらが各地に散らばっている。情報を集めるという点において、これほど適するものはないと思いませんか?」


ここまで言われれば、さすがの私でも、悪魔さんが何を言いたいのかは分かった。


「我々を、リサさんの目的のために使ってください。そのついでで構いません。我々の悲願のため、お手伝いいただけませんか。」


そう言って、悪魔さんは大げさに頭を下げた。

メリットを前面に押し出しながら、自分たちにも利益があるような、いやらしいというか、悪魔らしい言い方だ。しかし、悪魔さんを注意深く見ると、その肩がわずかだが震えていた。

当然だろう。

このスキルを持つ人間を、50年も待ったのだ。

私に断られれば、魔物たちはこれからも終わりのない戦いを続けなければならない。

そんな魔物たちの命運がかかった交渉をしているのだ。恐怖しないはずがない。

それを分かっているのか、メタきちさんとハーピィーさんが、じっとこちらを見つめている。


『別に断らないんだけどなー……。』


未だお腹を出して眠っているキラー君を撫でながら、そんなことを考える。むしろ、言葉は通じないし、何の知識もないから、協力をお願いしないといけないのはこちらのほうなのだ。しかし、悪魔さんが作り上げたこの場を壊すわけにはいかない。

そう。私は何気に空気が読めるのだ。


「分かりました。出来るか分からないけど、精いっぱい頑張ってみます。その代わり、助けてくださいね。」


その言葉を聞いて、頭を下げていた悪魔さんが顔を上げた。


「ありがとうございます。」


その表情は、悪魔とはかけ離れた、心から安堵していると感じさせるものだった。


「で、これからどうするんですか?」


私はメタきちさんに尋ねた。


「とりあえず、嬢ちゃんのステータスやら能力やらの把握と、それを使いこなす訓練だ。それと、この世界についての勉強だな。けど、今日はもう遅い。ほれ。ついてきな。おい!キラー!起きやがれ!」


キラー君をたたき起こし、再び歩き出したメタきちさんについて、そこから少し奥へと進んでいく。


「うわぁー!」


あの何もない場所から、ほんとうに少しだけ奥に行くと、そこにいきなりログハウスが現れた。

私は、さきほどまで確認することの出来なかったログハウスを見て心から驚いた。


「あの場所からは魔法で見えなくなってんだ。近くに行くと見えるんだが……」


そこまで言って、メタきちさんが言葉に詰まった。

一体何がどうしたというのだろう。

そんなことを考えていると、ハーピィーさんが続きを話し始めた。


「この建物ね。私たちがここに来た時にはすでにあったものなのよ。でもね。入ろうとしても扉が開かないのよ。」


そういうことか。入れないのであれば、さきほどのメタきちさんの躊躇いはよく分かる。しかし、入れないログハウスに案内するとは、一体どういうことなのだろうか。


「入れないわけでありません。50年前、あの若者たちは普通に入ってましたからね。まぁ、あの若者たちが旅立ったあと、再び入れなくなってしまいましたが……。」

「多分だが、特殊な力を持つ人間が鍵になってんだと思うんだよ。で、あいつと同じスキルを持つ嬢ちゃんなら、開けられるかもしれねぇってことだ。」


悪魔さんとメタきちさんの話を聞いて、確かに私なら開けられるかもしれないと思った。

けど、そんな期待を込めた眼差しはやめてほしい。

開けられなかったら恥ずかしすぎる。

なんだか妙なプレッシャーを感じながらも、私はドアノブに手をかけた。


「じゃあいきますよ。開かなくても、文句言わないでくださいね。」


しっかりと前置きをしてから、勢いよくノブを回す。



『ガチャリ』



扉が開いた。


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