Case.01 (4) 悪い男
「では、そんな防衛本能を狂わせるほどの影響受けるとは、どんな男からなのか。まず、このことが顕著に現れるのは、中学生ぐらいからになる」
「いわゆる、思春期というやつですね」
「そうだ。ここが一つの境界線となる。では、何故それが現れだすのか」
「その理由はなんですか?」
「それは思春期であるこの時期には、同時に性が目覚めてくるときでもあるからだ」
「あぁーー。やっぱり、そう来るんですねぇーー」
「そのイヤらしい顔はやめろ、ロメル・バシュリ」
「どうもぉすみませーん。話を続けてください、メリル・アーチャー様」
「つまりだ。最初に「SEX」に対しての衝動が、相手を如何に攻略するかという考えを持つきっかけになる可能性が高いだ」
「あぁーー。それはよくわかりますねぇーー」
「だから、そのイヤらしい顔はやめろと言っている」
「まぁ、まぁ、そこはお気になさらずに」
「この本能を満たすためにはどうしたらいいのか。相手の本能を利用するにはどうしたらいいのか。これを考えることで、如何に自分にとって都合のいい結果になるのかを、軸に「欲求」という本能が働く」
「そこに性欲が加わるっていうやつですねぇーー」
「そうだ。人間には、「食欲」「睡眠欲」「性欲」と呼ばれる三大欲求があり、これは本能によるものだ。その中の「性欲」を上手く利用しようとするものが、少なからずいるのだ」
「うんうん。なるほどぉーー」
「お前たちのまわりにも、中学生や高校生の頃に、女性を騙すような男や、男を手玉に取るような女はいなかったか?」
「あぁー。それは確かにいました!」
「その中で、男であれば、何人の女とSEXをしたとか自慢するようなものや、女であれば、男からいくらのプレゼントを貰ったかを暗に自慢する女はいなかったか?」
「居ましたいました。男も女も、どっちも悪いやつでねぇーー」
「だが、ここで大事なことは、男の場合には、本能として「如何に自分の遺伝子をバラ撒きたい」かが重要であり、女の場合には、「如何に優秀な遺伝子を残したい」が重要だということだ。ただ、これがあるだけの頃は、これもさほど問題は大きくはなかった」
「それなら、今現在はどうなんですか、アーチャー様」
「これが大きく様変わりしたのは、「情報」というものが、無限に溢れだし、本当の意味での基準というものが曖昧になってしまってからになる」
「なんですか、それは?」
「つまりだ。それがただ自分が「好き」であれば良かっただけのはずなのに、まわりの評価の方が大事になってしまったということが挙げられる。それが「承認欲求」であり、「自己顕示欲」というやつだ」
「なるほどぉーー。つまりそれが本能の欲を上回ったというわけですね」
「そうだ。これが社会構造の変化から時代を追うごとに、強くなっていった。それがいわゆる、SNSなどの「いいね」に対する欲求が絶対的な基準になってしまった可能性がある」
「おぉ、なんか納得」
「話を元の悪い男に戻すぞ。この前に、「悪い思い込みの場合」が厄介なのは、その「防衛本能」に対して、強く上書きされていくところだと話をしたが、それでは、その「悪い思い込み」とは何だと思う?」
「さぁ、それはわかりません」
「それはな。一番わかりやすく説明するならば、「客観性のない思い込み」のことだ。この「客観性」とは、いわゆる「冷静さ」でもある」
「では、その悪い思い込みのときには、その冷静さはないと?」
「そうだ。例えば、男の場合には、女に対して、まずは「見た目から」入る。この見た目から入って、女の反応が好意的だと思い込んだ場合。男の気持は加速する」
「居るいる。そういう馬鹿な男」
「お前のことではないのか、ロメル・バシェリ」
「そんな私は違いますよぁーー」
「但しだ。ここで一方的に気持ちが加速して、「悪い思い込み」になるのは、残念ながら、見た目が普通か、それ以下のコミュニケーション能力が低い男が多い傾向にある」
「あぁーー。なるほどですねぇーー」
「逆に見た目の良い、如何にもモテそうな男は、コミュニケーション能力に問題なければ、そのままでも思い込む必要はないから、そうなってしまうことは少ない」
「だから、イケメンというやつは嫌いなんですよ!」
「なんだ? 随分と感情的ではないか、バシェリ」
「いいから、話を続けてください、アーチャー様」
「わかった。そこで女が男に対して、「特に好意は持っていない」と告白などがされる前に一定の距離を取ったり、またはハッキリと断ればいいのだが、そこからの人間関係を円滑にしておくためには、そうも簡単にはできない。何か思い当たるところがあるようだな、バシェリ」
「いいから、放っておいてください!」
「繫殖期の野生動物の雄は、必死になって雌の気を引こうとする。鳥の雄が雌の前で「踊って見せる」のもそのためだ。しかし、人間には、繫殖期というものは存在しない。男女問わず、必要であれば、自らの存在を示すために、自分を強くアピールしたり、プレゼントをしたりする」
「あぁーー」
「これはお前にも少なからず、経験があるようだな」
「そこは否定はしません」
「その男のアピールの場合には、これが客観的に見た場合に、実に滑稽に映ることもある」
「いやいや。男は男心というものがわかるんじゃないですか」
「そうか? 例えば、必死になって自分の良いところアピールしたり、自分の失敗談で笑わせようとしていても、それを外からの見た場合には、女からまったく相手にされずに、単に聞き流されていることがよくある」
「あっ……」
「これは女の好みの問題であったり、相性の問題だったりするだが、男からすると、「まだ上手くいっていないだけで、絶対に自分には好意があるはずだ」と、その「思い込み」が深くなることがあるのだ」
「では、そのあとに男からして、上手くはいかなかった場合にはどうなるのですか?」
「それはな。そこで起きるのが、いわゆる「逆恨み」というやつだ。これが男の「ストーカー行為」のきっかけになったりする。まさかお前はやってはいまいな、ロメル・バシェリ」
「そんな。滅相もない」
「まだ軽い「逆恨み」のケースであれば、例えば自分が好意のあった女の前に、わざわざ別の女を連れてくるというのもある。お前は、ないよな?」
「そりゃーー、もちろん、ありませーん」
「そうか。つまり、その男はそうすることで、「自分は優良物件だった」と、その自分の願いが叶わなかった女に対してアピールしているわけだ。だが、ここで可哀想なのは、そのことを知らない連れてこられた女だ。その連れてこられた女は、結局はその男にとっては二番目でしかない」
「それはもう、ずいぶんと昔の話なので……」
「しかし、男はそのことを話すことは、おそらくはないので、それが知られない限りは何の問題もないはずだ」
「確かに、そうです!」
「では、本当の意味での「悪い男」とは、どんなものなのか。次は、そのことについて話をしてやる」




