Case.01 (5) 本当の悪い男
「では、その「本当に悪い男」とは、どんなものなのか。男のお前はわかるか、ロメル・バシェリ?」
「いや……。男から見て、イヤな奴ならわかりますがね」
「お前……。そこに私怨が入ってないか?」
「そんなこと言わないでくださいよぉーー!? メリル・アーチャー様ぁー。さっ、どうぞ話を続けてください」
「まぁ、わかった。端的に言えば、「自分の見た目の武器の使い方をよくわかっている」もののことだ」
「ほらぁーー。やっぱり、そういうことじゃないですかぁーー!?」
「そのお前の言う、やっぱりとはなんだ?」
「だかぁーー。見た目のイイ、イケ好かない野郎のことでしょーー!?」
「お前、やはり何か私怨があるのだな……」
「まぁ、そこはイイじゃないですかぁーー。さぁ、話をお続けになって」
「近年において、「イケメンに限る」という言葉が流行った。このことからも、「見た目が良ければある程度のことは許される」という構図ができ上がっている」
「本当、許せませんよぉーー!? そういう奴ら」
「……。これは女たちの言う、「カワイイは正義」もある意味、同義語に当たる」
「あぁーー! アレもよくわかりませんけどねぇーー」
「実際に心理学のうえでも、「人は見た目が9割」という言葉がある。これは最初の第一印象が大事だという意味だが、これが「本当に悪い男」の場合には、自己顕示欲が強かったり、支配欲が強かったりする傾向にある」
「そりゃーー、よっぽど悪い男なんでしょうねぇーー」
「但し、その「イケメン」だからといって「悪い男」というわけではない」
「そりゃ、残念だぁーー」
「大事なことは、「自分の見た目の良さを武器にして、何かしら相手を騙そうとしたりする」もののことだ。お前たちのまわりにも、付き合っている女を騙して、あちこちで「浮気」をしている男はいないか?」
「いや。ホント、そういう男って、どこにでもいますよねぇーー」
「生物学的に、「男は自分の遺伝子をバラ撒きたい」と言ったが、人間には、理性であったり、倫理観というものが存在する。そんな倫理観に外れたものが、いわゆる「本当に悪い男」となるのだ」
「ほぉーー」
「では、その「本当に悪い男」は、頭の中でどんなことを思っているかといえばだが、ここからは、どういう流れで、「本当に悪い男」が形成されていくのかを話してやる」
「お願いします」
「なんだ? 急に真面目だな」
「いえ。お気になさらず」
「その「見た目がイケメン」であるということは、整形手術でもしない限り、ある日突然に「イケメン」になるわけではない。これはもちろん遺伝的な要素が大きいのだが、単に「見た目が良い」ことと、その人の「性格」には、少なからず乖離がある。それは見た目もそうだが、性格も多かれ少なかれ遺伝するからだ」
「まぁ、確かに見た目のイイ奴にも、性格のイイのはいますね」
「また近年では、親が浮気をするならば、子も浮気をする傾向にあるという研究結果が挙げられた。但し、実際に性格そのものが遺伝する割合は、ほんの数パーセントにすぎない」
「それはやはり、環境ですか?」
「そうだ。その個人の性格というのは、生まれたときからはじまり、そこからいろいろな経験や環境などを経て形成されていく。男の場合には、精神の発達が女よりも遅い傾向にあり、それがより顕著に影響する」
「それじゃ、今の私のこの性格も、それによったんですねぇーー」
「逆に女の方は、物心がついた頃の性格を基本ベースとして、その後の経験や環境などが影響している。もっとわかりやすく例えるならば、男は性格形成の軸がまわりにあり、女の場合には、性格形成の軸は、あくまでも自分にあるということだ」
「えっ!? それって逆なのではないですか? だって、男同士の社会は「戦い」であり、女同士の社会は「協力」の上に成り立っているんじゃないですか?」
「それはだな。それが実際には、男は「協力」や「議論」の構造の中で、自分の存在価値を示さなければいけない社会構造に生きてきており、女は「協力」というよりも、「共感」の社会構造で生きてきた経緯があるからだ」
「はぁー。そういうことですかぁーー」
「話を元に戻すぞ」
「どうぞどうぞ」
「子どもの頃、女にモテる男というのは、顕著にわかる。そして遺伝子的に刻まれた「自分の遺伝子をバラ撒きたい」男にとって、子どもの頃には、それがプラスに働くことはあっても、マイナスに影響することはほとんどない。もしそれがマイナスに影響した場合には、それはまた別の要因があるが、それはまた別の機会に話してやろう」
「それで、そのプラスの働きとは?」
「そのプラスに働いたことがどう影響するのかといえば、男の間に力関係が生まれるということだ。現代社会において、昔いた「ガキ大将」などという存在はもうない。一昔前にあった成金の親が自らの財力をまわりに見せつけるということもなくなったはずだ」
「確かに。そういうのは聞かなくなりましたねぇーー」
「何故なら、裕福な家庭であったり、教育熱心な親であれば、自分の生活エリアに、有名な私立幼稚園や私立の学校があれば、親はそこに入園・入学させたい傾向にあるからだ」
「あぁーー。それはよく聞きますなぁーー」
「つまり、同じレベルのもの同士が集まれば、経済力などはテレビドラマの中にあるような格差を、基本的には生まないからだ。では、子どもの「男同士の力関係」とはなんなのか」
「なんですか、それは?」
「皮肉なことだが、それがまさに「生物学的な力関係」だ」
「それを言っちゃーー、お終いじゃないですかぁーー!?」
「では、何故そこから「本当に悪い男」が生まれてしまうのか。それはまわりからの持ち上げられ方であったり、自分の本来の性格や欲の持ち方が関わってくるからだ。もちろん、このケースがすべて「本当に悪い男」になるわけではない。そこは注意が必要だ」
「そりゃ、もちろん」
「では、「本当に悪い男」が生まれる最も強い要因とはなんなのか。そこにあるのは、残念ながら「能力による」と言わざるを得ない」
「能力?」
「つまり、「能力=見た目以外のポテンシャル」だ。その能力が高ければ、自らの見た目に溺れたり、頼ることはない。問題なのは、「見た目の良さ」というものだけに頼った場合、それを如何に活かして利益を得るのかを考え出したときだ」
「それ、なんとなくわかります」
「それでそこから、俗にいう「狡賢さ」に転化したときに、本当に悪い男が生まれるのだ。では逆に、「悪い女」とは、どういうものなのか。
次は、そのことについて話をしてやろう」




