Sequence‐3 ~深蘭の事情 ①~
「ただいまぁ」
「おかえり深蘭、お疲れ様。 お仕事は…大丈夫だった?」
いつもながらの都心部でのロケ番組収録…だが生活環境が一変してから初めての仕事だったからか…心配そうに母親が玄関まで出迎えた。
「上々です!」
深蘭は笑顔で答えつつ…心は夕飯の匂い広がる食卓だ。
明日は日曜日。
今日は自宅に一泊して…ゆっくり律専に戻ることが出来る…。
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「ところで深蘭… 新しい学校は…家を離れて…どうだ?」
夕食後の団欒で、父親がそれとなく平静を装って聞いてくる。
「昨日、入学式終わったばかりだし…まだ3日しか経ってないのに…」
「ふたりのことが…心配で仕方がないのよね…パパ」
テーブルの上の食器を片付けながら、母親が苦笑する。
父親は、バツが悪そうに手元にあった夕刊を手に取り大きく広げた。
「ごちそうさま! おいしかったよ、ママ」
「そう? よかったわ」
キッチンから、母親の嬉しそうな声が深蘭の耳に届く。
二階の自室に向かおうとした深蘭だが、ふと…思い出して、踵を返した。
「あ…そういえばパパ…昨日、私ね“天空の鐘”…が喋る夢を見たの」
夕刊を広げていた父親が、腕を下げて顔を出す。
「喋る…? おじいちゃんの形見がか?」
「そう。 でね、確かに“天空の鐘”なんだけど…女の子の姿でね…」
「女の子…どんな夢だよ」
「でね、“会いたい”って…言われたの」
「そりゃまた意味深だな」
小さい頃から、子供の話を正面から聞いてくれる父親だった。
それが例え、他愛もない夢の話しだとしても…。
「夢判断とか、まったくわからんが…ふたりとも出て行ってしまって…あれもきっと寂しいんじゃないか?」
「パパと同じね」
突然キッチンから、すべてお見通しの母親の一声が飛んでくる。
「…まぁ、この後しっかり磨いてやれば喜ぶんじゃないかな?」
すこぶる仲の良い両親に、つい笑顔になってしまう…。
「わかった!」
深蘭は、意気揚々と二階へ駆け上がった。




