Sequence‐2 ~双子の事情 ①~
「じゃあね、高坂さん」
「高坂さん…また明日!」
クラスメイトが、親しげに挨拶して教室を後にしていく。
「ええ、さようなら」
笑顔で軽く会釈をし、クラスメイトを見送る。
下校の支度をしながら、深蘭は穏やかな放課後を迎えていた。
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高坂深蘭…芸名“香阪美蘭”
幼少の頃より、子役として活躍してきたが、10歳を迎えた頃から演技だけに留まらず、タレント・モデルの仕事もこなすなど…仕事の幅を広げている、名実ともに一流の芸能人である。
しかし、芸能界での成功が、学校生活に支障をきたし始めたのは3年程前…中学生に進級した頃からだっただろうか。
芸能活動が理由で、やたらと友達関係を強要してきたり、そうかと思えば、やたらと反発していじめてきたり…と、雑音の絶えない面倒臭いクラスメイトばかりで、正直、学校自体が嫌いになりかけていた自分がいた。
しかし、この学院に入学して二週間…状況が一変する。
ここは…まるで理想郷だった。
先生もクラスメイトも…自分をいち生徒として、普通に接してくれる。
“普通”という、なんとも心地良い距離感…。
この、“当たり前のような普通”が、深蘭にとってどれほど貴重でありがたいことなのかは、云うまでもなかった。
自宅のある都心から遠く離れた幼大一貫校である律専教育特区。
その中にある、律専高等学院の進学を勧めてくれた両親には、唯々感謝しかない。
・
「昨日、また見たよ。…実験犬」
「柴っぽい子?」
聞くとも…聞かないともいった表情で、淡々と帰り支度を進める深蘭。
「ううん、白い小型犬…」
「いったい何匹いるの?って感じだよね」
未だ教室に残って、他愛もない雑談しているクラスメイトに、帰り支度を終えた深蘭が会釈する。
「…じゃあ、また明日」
「うん。 気を付けてね、高坂さん」
教室を出ようとした、その時…
「深蘭!」
「!!!!」
勢いよく教室に乱入してきた“そいつ”は、いきなり呼び捨てで名前を呼んできた。
唖然とする深蘭とクラスメイトだが…視線はそいつ一点に集まる。
「…誰?」
「いきなり、下の名前呼び捨て…って」
唖然から一転、騒然とする教室…
突然の乱入に、うつむき加減で立ち尽くしていた深蘭は、ゆっくりと顔を上げると、そいつに鋭い視線を向けながら、努めて冷静に言葉を発する。
「お騒がせしました…この人は高坂凛音…私の…」
「高坂…?」
「え? もしかして…」
顔を見合わせ、ざわめくクラスメイトたち。
「双子の弟です」
「兄だ!!」
訂正する声に、教室は静まり返る…
対峙する双子には、言いようのない緊迫感…
教室内は、意味なく凍り付いていた。




