Sequence‐1 ~“おわり”からの“はじまり” ③~
「ここよ!」
通路脇に埋め込まれた案内プレート【CCH‐№3 (C301~C318)】を通り過ぎ、三人は文化部クラブハウス3号棟へと入って行く。
「おもしろい構造ですね」
3号棟は、地上2F/半地下1Fの3F構造で、デザイナーズ建築風だ。
1Fは窓が無い代わりに、地上階のおおよそ三倍の広さがあり、演劇の舞台練習や、吹奏楽・軽音など楽器関係の練習場として使われていた。
現に今も、管楽器の練習音が1F通路から漏れ聞こえてくる。
「造りが、無駄にオシャレ…」
聞こえるか聞こえないか微妙な声で玲は呟きながら、階段を上って行く。
・
「306号室、目的地到着よ…って、あれ?」
「…?(×2)」
「開いてる?! なんで??」
慌てて部室の入口に駆け寄った佑梨に続く二人。
そんな、三人の目に飛び込んできたのは…
一面大きく開け放たれた窓に揺れるカーテン。
そしてそこに佇む…大きめのPADを片手に持つ白衣の美少女の横に、ヘンテコな機械を背負った一匹のメカ雑種犬が寄り添っている…という、摩訶不思議な光景であった。
「……」
入口で硬直する三人の横を、心地よい風が通り抜けていく。
「おおサクマリか…久しぶりだな」
「リエゾン准教授!!!???」
「お・絹・だ! それに、今期から教授だぞ」
「うわぁ、おめでとうございます教授⤴…って、そうじゃなくて!」
突然始まったノリツッコミ漫才のような会話に、只々傍観するしかない吏玖哉と玲。
「なにやってるんです? こんなところで…」
「ここで、磁場の歪みが頻発しててなぁ…故に調査を…」
至って当たり前のように自分の行動を正当化するシルビアに、教え子がいる手前…努めて冷静に対応していた佑梨が、次第にイライラし始める。
「いや・だ・か・ら、どうやって入ったんです? 鍵はひとつのはずなのに」
「いや、そもそも顧問だったんだから、持っていても不思議なかろう?」
とぼけた仕草で受け答えをするシルビアは、自ら3Dプリンターで作成したCFRP(炭素繊維強化ナイロン)製の鍵を見せた。
「い…いつの間に…?!」
「おっと、勘違いするな。 メインキーを複製した訳じゃないぞ!」
呆然とする佑梨を横目に、シルビアは堂々と胸を張る。
「シリンダーを細密レーザー測定器でスキャンして形状を特定。ついでに少し手を加えて、マスターキーにまで昇華させた…我ながら見事な一品」
「はいOUT! そんなのダメに決まってるでしょ!!!」
サクマリ火山が、ついに大爆発した。
「なにを怒ってるんだ? 訳が分からん!」
「それは、こっちのセリフです! まったく…油断も隙もない」
「…あ、あのぉ」
鼻息の荒い佑梨に、恐る恐る声をかける吏玖哉。
・白衣を纏い、PAD片手の見た目サイバー美少女…
・戦隊ヒーローもの風装置を背負ったメカニカルドッグ…
ひとつひとつ確認したいことが、てんこ盛りだ。
その声にハッと我に返った佑梨は、慌てて振り返えると、取り繕うように両手を合わせた。
「二人ともゴメンね、ちょっと混み入った話になっちゃってて…」
「いや、別に大丈夫ですけど…」
と答えつつ…《これってゲームキャラのコスプレ?》と、シルビアと謙を凝視する吏玖哉。
「逆に、先生こそ大丈夫ですか?」
と答えつつ…《大きなPAD…性能良さそう》と、シルビアのPADに興味深々な玲。
「あはは、面目ない…」
教え子に心配されて、恐縮してしまう担任教師。
そんな佑梨の背中越しから、ヒョイと顔を出したシルビアは…
「なんだ、この子らは…新入生か?」
掛けている眼鏡をチョイ上げながら、ふたりをまじまじと観察する。
「そうです…けど…教授? ヘンな“ちょっかい”出さないで下さいね!」
「失礼な! そこまで暇ではないぞ…って、それよりも! コレを見ろ」
漫才トークのテンションが一転、シルビアの口調が厳しくなった。
「…コレって?」
整理棚の上…
シルビアが目線と顎で指し示した先には、濃色の房が付いた紐で口が閉められた…藍鼠の巾着が置かれていた…。




