Sequence‐1 ~“おわり”からの“はじまり” ②~
「?…ここは」
「手前が文化部クラブハウス4号棟、その奥が3号棟よ」
「これ全部…部室棟なの?」
放課後のクラブハウスは、部活動に勤しむ生徒たちの活気に満ちていた。
律専高等学院に存在する部活や同好会は、多種多様で数も多い。
故に、部室の数も規模も桁外れなのだ。
「うちの学院は、運動部より文化部の方が、圧倒的に多いのよね…」
佑梨は、充実した部活動の現状を、熱く語り始めた。
「運動部のクラブハウスは、A棟からT棟までの20棟で構成されていて…文化部に至っては、大小30ものクラブハウスが用意されているの」
さすがは自主性を重んじる律専教育特区。
その敷地面積は都内文京区とほぼ同等といわれ、噂にたがわず素晴らしい施設を有した、日本屈指の過大規模校なのだ。
「結構…大掛かりな建物ですね」
「これから行く3号棟は、特にね」
集合棟の中でも、比較的大部屋が多い3号棟は、学院設立当初から存在している…いわば老舗の部活動が集中している棟だった。
・
「先生…何故、僕等をここに?」
素直な疑問を…ストレートに聞いてきた吏玖哉に、佑梨は満面の笑みで答える。
「想像して欲しかった…からかな」
「想像?(×2)」
歩みを止め、吏玖哉と玲に向き合った佑梨は、二人に問いかけた。
「もしかしたら、ピンとくる部活が見つからなかったのかも知れないし、慣れない日々に追われて、考える余裕がなかったのかも知れない…どう?」
「うっ…後者です⤵」
「わたしは、前者!」
状況を見事に見透かされ、それぞれの答えが当てはまる。
ただ、想いが上回った玲は、さらに続けた。
「部活の勧誘イベント…理数系部活動をすべて回ったけど、コレ!っていう部活…無かったのよね」
《全部…回った?!》
プリントを無回答で提出した同志だと思っていたのに、中身は全くの正反対…というより、しっかり考えて見据えた結果だったとは…
勧誘イベントをスルーしたことに、穴があったら入りたい思いの吏玖哉。
「まあ、ぶっちゃけるとね…クラブハウスの雰囲気を体感したり、部室を見学したりすることで、部活に参加するイメージの手助けになるかなぁって…思ったわけ」
二人のリアクションを微笑みながら見ていた佑梨は、おもむろに“K”の文字がデザインされたキーホルダー付きの鍵を二人に見せた。
《!!??》
途端、
そのキーホルダーを見て、謎の硬直をする…吏玖哉。
一方、そんな彼に気付かず…玲は、素朴な疑問を口にする。
「それは…?」
「昨年度まで使っていた、部室の鍵よ」
「なんだか、存在感溢れるキーホルダーですね」
鍵よりキーホルダーに興味を示した玲が、しげしげと覗き込む。
「ああ、これ? 実はね…前部長が付けた私物なの。 鍵は学院の備品だから、彼女が卒業する時に返そうとしたんだけど…全然、取れなくて…」
言いながら…思い出したように、また取り外しを試みる佑梨。
その行動に気付いた吏玖哉は…
「ああっ、無理に取らない方がいいと思います!」
と声を上げると、慌てて佑梨と玲の間に割り込んで、必死に止めた。
彼の言動に、キョトンとする二人。
「どうしたの? 急に…」
「いや、なんていうか…鍵とキーホルダーの相性がいいというか…そのままがいいらしい…というか…」
「……」
佑梨と玲は無言のまま吏玖哉をみつめる。
…三人に訪れる、暫しの静寂。
「その…すみません、意味不明で」
その静寂に耐え切れず、つい謝ってしまう吏玖哉。
そんな彼の言動も意図も、今一つ理解できない佑梨にとって、当面の差し迫った問題を解決しなければならない方が優先事項だ。
「でも、この鍵…生徒会執行部に返さなきゃならないし…困ったなぁ」
…キーホルダーが揺れる。
「あ! それなら後で外すの、手伝います」
「え? 手先…器用なの?」
「手先? ま…まぁ ハハハ」
何とも釈然としない吏玖哉の反応ではあるが…
「じゃあ、おねがいしようかな」
…気にする素振りもなく、佑梨は快く受け入れた。
鍵をポケットに仕舞いながら、佑梨と吏玖哉、玲は目的地である文化部クラブハウス3号棟へ向かった。




