Sequence‐1 ~“おわり”からの“はじまり” ①~
なんと! このクラスで…
自分一人だけが、手を挙げていない事実に気付いた吏玖哉は…驚愕した。
律専高等学院の普通科に入学して、早二週間…。
入学式から始まり、大学の如く複雑な履修カリキュラムの説明・注意事項等のオリエンテーションが終わったかと思えば…今度は矢継ぎ早に履修プログラムの提出…続けてクラス担任との面接と、おおよそ、対新入生のものとは思えないタスク量に、日々追われていた。
吏玖哉自身、結構要領が良い方だと自負していたのだが…
この二週間のスケジュールに付いていくのがやっと…だった状況の中、放課後のSHRで、それは起きた。
「オリエンテーションでも、説明があったと思うけど…」
今期から初めてクラス担任になった佐久間佑梨が、勢いよく大きな字で黒板に書いた文字は…“全生徒部活動所属規定”。
「当学院では、必ず1つ以上の部活に所属しなければなりません」
真面目に聞き入いるクラスメイト達は、真剣そのものだ。
そんな中、黒板の文字を見つめながら…
《部活…どうしようかなぁ》
と…吏玖哉は、呑気に構えていた。
「すでに決まってる…って人、どれ位いる?」
佑梨の問いに、心の中で食い気味にツッコむ。
《いやいや忙しすぎて、そこまで考えてないでしょ、みんな》
しかし…
「!」
周りを見渡すと、自分以外のクラスメイトが、さも当たり前のように…何なら誇らし気に挙手をする光景に愕然とした。
「あら! このクラスは優秀ですね」
《なんで? そんな時間あった??》
前言撤回! 要領がイイなんて…とんでもない!
どんな部活があるのかすら把握できていない中…完全に出遅れてしまった吏玖哉の元に、前の席から恐怖のプリントが回って来る。
「じゃあ早速、部活動入部予定確認書の記入と提出…お願いね」
《参った…》
穴が開く程、プリントを凝視するが…残念ながら穴も開かなければ、この状況を切り抜けるアイデアも浮かばない。
だからといって…
その場のノリで、いい加減なことを書くなんて、以ての外だ。
ため息をつくと…学年/クラス/出席番号と名前だけを記入。
吏玖哉は、無念の無回答提出をせざるを得なかった。
・
「ハイ! お疲れ様でした」
満足そうにプリントを回収した佑梨は、その場で確認をし始めた。
《え? 今、ここで確認??》
予期せぬ流れに、悪い予感が頭をよぎる…
「告 吏玖哉君」
「!」
…案の定、見事な予感的中に…吏玖哉はがっくり肩を落とした。
《名指し…来たぁ》
コンプライアンス的にどうなの?…と思っても口にはできない。
クラスの中で唯一、準備できていなかったことは事実で…自身の詰めの甘さが招いた結果なのだ。
諦めモードの吏玖哉は“はい”と返事をし、ゆっくりと席を立つ。
「…あと、最上 玲さん」
「…ハイ」
《え?》
立ちながら…慌てて返事の主を探すも…見つからない。
座高が低くてクラスメイトの陰に隠れていた玲の姿を、吏玖哉がようやく確認できたのは…彼女が席を立ってからだった。
《僕…一人じゃなかった》
安堵にも似た思いで、玲を見つめる吏玖哉…
その眼差しを感じて振り向いた玲と、期せずして視線が重なる。
「さて二人とも、この後、ちょっと先生に付き合ってくれる?」
佑梨は、集めたプリントを教壇で整えながら、ニッコリ笑った。




