Sequence‐7 ~ティア♡ 好き ~
「おおー! こりゃ盛大に跳ねたなぁ」
今度は、冷静にPAD操作で事象解析PCの警告音を止め、そこに映し出された磁場曲線の数値を、満足気に確認。
そして、採取したデータのフォルダインデックスに…
“codename:99-S/α”
…と、意気揚々に打ち込んだ。
一方…
「聞くのは2回目だけど…この音…どうにも慣れないわ」
ダメージ大きめの佑梨が、息荒めで呟く。
「携帯の地震アラームより怖い」
玲も、佑梨に同意する。
「まあ…警告アラームだからな」
そして、シルビアが一蹴する。
そんな佑梨と玲を横目で見ながら…シルビアは、覚醒した青い目のゴスロリ姫を確認して、興奮を抑えきれない。
「今、この瞬間から、この姫のコードネームは、99-S/αとする!」
「スラッシュ アルファ…」
意味ありげに呟く吏玖哉に…
「一番最初…始まりという意味だ。 あくまでもコードネームだがな」
シルビアは、名前というデリケートな部分に最大限…気を使って言った。
「これぞまさに快挙! さながらJ・A・ハイネック流に言えば、 “第3種接近遭遇”状態だぞ!」
興奮がピークに達するシルビアだが…
「ハイネック…って、誰です?」
そんなシルビアに、冷や水を浴びせるが如くツッコミを入れる佑梨。
「アメリカの天文学者で、ついでにUFO研究家だ」
「今度は、宇宙に跳んだ!」
目を丸くし、ビックリする玲。
「“第3種接近遭遇”は、スピルバーグの“未知との遭遇”の原題だぞ」
「ほぇー…そうなんだ(×2)」
突然飛び出した雑学に、感心しきりのふたり。
そんな中、吏玖哉に対して明らかな好意の意識を向けてくるゴスロリ姫に、シルビア程ではないにしても…吏玖哉自身も“新たな扉”が開いたという…そんな感覚が芽生えていた。
興奮冷めやらないシルビアは、吏玖哉に次の要求を出す。
「ツゲリクヤ、次だ! “第4種接近遭遇”…意思の疎通は可能か?」
「意思の疎通…やってみます」
はじめてのことに、緊張気味の吏玖哉…
「…お名前は?」
…そして、彼以上に、緊張して見守る女子三人。
「 …… … ティア♡」
姫は、首を傾げてにっこりと笑った。
四人のうち…
吏玖哉と次元波長偏光眼鏡を掛けたシルビアだけが、愛おしい“ティア”の声を聞くことができ…あまりの驚きに顔を見合わせる。
「聞こえた! 聞こえたぞ、ツゲリクヤ!」
「はい! 見えれば、聞こえる…ってことでしょうか?」
玲と佑梨の反応を見ながら、吏玖哉が冷静に分析する。
一方…
勝ち組二人の喜びように、不平不満を爆発させる玲と佑梨。
「ふたりだけ、ズルい! わたしも見たい~!」
「教授、今までの態度を心から謝罪します…だから、早く代わって!!」
「おっおい、ちょっと待て!」
大人気のシルビア…もといヘンテコ高性能眼鏡を取り合って、阿鼻叫喚の女子三人。
そんな中…吏玖哉がこっそりと蒔絵箱の中のティアに話しかけた。
「名前のティア…って、僕が言った、冠・ティアラのティア?」
「…… はじめての名前…ティア♡ 好き」
ティアの気持ちに、目を細める吏玖哉。
「そう…よかった」
アラームこそ鳴らないものの、シルビアのPADに記録され続けている磁場曲線の数値は…当分の間、上限から戻ることはなかった。




