Sequence‐6 ~コードネーム:99-S ③~
「いいか! 説明しよう!!」
シルビアは、勢いよく椅子から立つと、壁際にあったホワイトボードに
“九十九神→”
と、早や書きし、その隣に
“99Spirits→99-S”
と、続けた。
そこで、すかさず佑梨が…
「あれ教授…付喪神って」
と、言いながら“付喪神”とダイナミックな字で書いて、
「こっちじゃないですか?」
物言いを入れる。
「ああ、そうとも書くが…私は数学者であるから、無論数字優先だ!」
《はぁ…まともに取り合ってもダメって、わかっているはずなのに…》
つい突っ込んでしまう己の性を反省しながら…半ば諦めの境地で、深いため息を吐く佑梨の隣で、驚きの言葉が耳に届く。
「でも、その感じ…解ります!」
《え?なんで??》
屁理屈としか思えないシルビアの言葉に、玲がまさかの共感とは…
まったく理解できない佑梨は、ただただ驚くばかりだ。
《ほぉ⤴…我が弟子にふさわしい感性だな》
シルビアは、最上級の褒め言葉を心の中で呟き…ご機嫌なテンションで実験の号令を出した。
「さあ、世紀の一瞬だ! ツゲリクヤ、頼むぞ」
「は…はい」
シルビアの要請で、蒔絵箱の蓋に手を掛ける吏玖哉は…
《でも…僕自身、再会が楽しみかも》
と…期待半分・緊張半分に心躍らせ、蒔絵箱の蓋をゆっくり開けた。
ほぼ同時に、蒔絵箱の中を覗き込む一同。
女子三人組には、相変わらず空っぽにしか見えない。
しかし…
《あ…また、寝てる かわいいな》
…吏玖哉には、確かにあの…愛らしい“付喪神”が目視できていた。
「どうだ?ツゲリクヤ 居るのか?99-Sは」
「あ、はい…いますね」
「!(×3)」
どよめく女子たち。
一人は歓喜、一人は困惑、そして最後の一人は疑心暗鬼だ…。
「でかした! じゃあ特徴を教えてくれ」
「特徴…って?」
「だ・か・ら、外見の特徴だ!人型とか獣型とか…あるだろう」
「ああ、なるほど…えっと」
趣旨が理解できた吏玖哉は…
そのディティールを、何故か小声で話し始めた。
「淡い青色系のフリルとレースが重なったドレスを着ていて…」
《なんで、急に小声…?》
「肩より少し長いプラチナブロンドで…」
《え? 聞き取り辛いんですけど》
「ドレスとお揃いの色のフリルレースのヘッドドレスを付けた3頭身程の愛らしい姿…です」
小声につられて、四人の顔の距離がどんどんと縮まっていき…
「聞きづらいわ! ツゲリクヤ」
…たまらず、シルビアが吼えた。
無意識に小声だったことを気付いた吏玖哉は、慌てて謝罪する。
「あっ、ごめんなさい…この子、寝てるので、つい」
「なんと、寝ているのか」
すると…
シルビアと吏玖哉のやり取りに、横からムリヤリ参加してくる玲と佑梨。
「ねぇ、今の説明だと、結構なビスクドール感なんだけど…」
「蒔絵の箱だから…座敷童子的な…黒髪・着物とかじゃないの?」
「ていうか…さっきのディティールの説明が、やたら詳しくなかった?」
「これって、告くんの趣味か何かかしら?」
好奇心丸出しの佑梨と玲は、吏玖哉を質問攻めにし始めた。




