Sequence‐5 ~寄託部“強制”入部? ①~
「起立、礼」
放課後SHRが終わり、クラスの中は生徒たちの明るい声や笑い声に溢れていた。
帰り支度を終えて教室を出ようとしていた吏玖哉を、佑梨が極力目立たないように呼び止める。
「…告くん、ちょっといいかしら?」
「? はい…」
意味ありげな笑顔の佑梨に連れて行かれた先は…
教員室の並びに4部屋あるうちの一つ、多目的ルーム-Bだった。
進路指導室として使われたり、生徒同士の会議室に使われたりと…使用目的は多岐に渡り、話し合いが明るくスムーズに行われるようにと…色調は淡いベージュ色にまとめられ、観葉植物も飾られていたりして、室内は、職員・生徒共に落ち着ける作りになっている。
佑梨は、扉に備え付けられたスライド式のプレートを、“空室”から“使用中”に裏返して差し入れ、扉を開けた。
「さぁ、どうぞ」
先に吏玖哉を部屋に入れ、扉を閉め…
「そこに座って」
…丸テーブル前にある椅子に促す。
言われるがまま、その椅子に腰を下ろす吏玖哉。
その対面に座った佑梨は、早速本題に入った。
「ごめんなさいね、いつも急で…色々と確認したいことがあって…」
「いえ、この前の説明…上手くできなかったので…」
寄託部の元部室で遭遇した出来事が、鮮明に思い起こされる。
「その件…ですよね」
「まあ…ぶっちゃけ、そうなんだけど」
本題に入ったものの…どうにも攻めあぐねてしまう佑梨。
自分のクラスの生徒の言動を、担任である自分が100%信じてあげられていないという罪悪感からか、会話の歯切れが今一つ良くない。
「…で、付喪神…だっけ?…やっぱり神社…ていうか…宮司さんの息子さんだからかしらね」
「…それは…どうでしょう…物の因果を感じ取れたり、見えたりするのは…四人兄妹の中で僕と一番下の妹だけみたいなので…」
「そう…なの」
・
《もう少し大きな声で喋ってよ、告くん…》
そんな二人の様子をそっと覗き見る影がひとつ…最上玲だ。
つくもなんちゃらも気になるが…ぼーっとしているように見えて何だか特別な能力がありそうだったり、妙に達観していたり…と、玲にとって吏玖哉はつかみどころがなく、興味をそそられる対象だった。
ふたりの跡を付け…ミーティングルームの前の廊下で盗み見ているなんて、怪しい上に無礼極まりないが…好奇心は止まらない。
《廊下…誰も、通りませんように…》
左右無人を確認した玲は、少し開けた扉に…さらに顔を押し当てた。
・
「…そういう存在っているのかもなぁ…と思わない訳ではないわよ。去年1年間…寄託部で不思議なことも、まあまああったし…」
そう言う佑梨の顔が、みるみる暗くなる。
「特に、リエゾン教授って不思議解明がライフワークみたいな人だから、近くにいるだけで厄介事に巻き込まれるわけ」
同じ“部活の顧問職”でありながら…
PADを片手に嬉々として大暴れするシルビアとヘンテコな装置を背負ったメカ雑種犬・謙…との温度差は凄まじい。
「あの…先生、そもそも寄託部って、どんな部なんですか?」
佑梨の愚痴を聞いていた吏玖哉は、前から感じていた素朴な疑問を、直球でぶつけてみた。
様々なハプニングは、すべて“寄託部”が起因している気がする。
「ああ…わたしも副顧問だったのは去年1年間だけだから…創部の詳しい経緯は、聞き及んだだけだけど…」
佑梨は、訥々と自分の知る“寄託部”のことを、話はじめた。




