Sequence‐4 ~ティア♡・覚醒 ②~
「確かに…とても図柄が細かくて、キレイ」
玲は近寄ると、躊躇なく小箱を手に取った。
「それに、ここのデザインが超カワイイ」
蓋の細工がこれまた秀逸で、宗和膳の足のように刳り抜かれている。
玲は、その蓋の意匠に強烈な興味を惹かれた。
…つい、開けてみたくなるのも道理である。
事の流れで、丁寧に開けようとした玲の手が…止まった。
「…あれ?…開かない?」
玲のその一言で、自分の世界に浸ってひとり語りをしていたシルビアと佑梨が、突如として“蓋開け”に参戦してくる。
「鍵が掛かっているのかしら?」
「いや、鍵穴は見当たらんぞ」
玲から蒔絵箱を取り上げるように手に取ると、ああだこうだと言いながら開けようとするが、蓋は微動だにしない。
そんな折…
「あっ、もしかしたらカラクリ箱…とか?」
教師陣に、玲が閃いたように声を掛けた。
「おお、なかなかいい着眼点だ、新入生。 箱根名物…寄木細工のカラクリ箱は、すばらしい伝統工芸品だからな」
日本人より日本を知っている…日本大好き外国人あるあるだ。
「…カラクリ箱なら、手先が器用な告くんに開けてもらいましょう」
佑梨が、期待に満ちた眼差しを吏玖哉に向ける。
「…え?」
突然のキラーパスに戸惑う吏玖哉。
寄託部前部長のキーホルダー…からの流れなのだろうが、手先が器用=カラクリ箱を開けることができる…に、変換されても困ってしまう。
いや、そもそも手先が器用という認識自体が誤解なのだが…。
こうなってしまった以上、一応…試して見せなければ納得はしてもらえないだろう。
吏玖哉は、小箱を左手に乗せると、そっと蓋に右手を添える。
すると…
不思議と蓋は…なんの抵抗もなく開いた。
「えっ?(×4)」
大方の予想に反して、いとも簡単に開いてしまったことに、女子三人は元より、開封を任された吏玖哉本人も驚いてしまう。
「おっ! 開いたな」
「…開きましたね」
「開いた! なんで?」
あれほど、びくともしなかった蓋が、何故…?
一斉に蒔絵箱の中を覗き込んだり、蓋の裏を確認してみたり…と、頑なに開かなかった蓋が、一瞬で開いた理由を懸命に探す女子三人組。
しかし…
「…!…」
…吏玖哉には、蒔絵箱の中に強烈な“因果”が見えていた。
《こんなに、はっきり見えるなんて…》
はじめての体感に、身体が硬直していることに驚く。
気が付けば…いつの間にか真横にお座りして、吏玖哉の顔を見上げている謙。
《あれ、緊張が伝わって…心配された?》
謙の頭をそっと撫でると、「わふ」と小さく嬉しそうに鳴いた。
吏玖哉の視線の先…蒔絵箱の中。
《この子…めちゃくちゃ強いけど》
胎児のように体を丸めて眠る、可憐な少女がいる…
《付喪神…でいいのかな?》
淡い青色系のフリルとレースが幾重にも施された美しいドレス…
《随分と…西洋風だけど》
3頭身程の愛らしい姿…
《蒔絵って、日本文化だよね》
光に透けるようなプラチナブロンドは肩より少し長い。
《でも…かわいいかも》
ドレスとお揃いの色のフリルレースのヘッドドレスは、まるでティアラの如く華やかだ。
「冠…ティアラ…… ティア」
吏玖哉がそう呟いた瞬間、その少女の青い瞳がゆっくりと開かれた…
刹那!
「ばふ!ばふわふ!!」
「え? なに?!」
突然吠える謙に、ビックリする吏玖哉。
すると、鳴き声とほぼ同時に、謙が背負っている事象解析PCから、けたたましい警告音が轟いた!




