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白い死神は瑠璃色の夢を見る  作者: 空想物語


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第9話 別れと出会い

第七章 前書き


黒田雅人は最後まで真実を語ることなく、この世を去った。


残された手掛かりは、たった一つの言葉。


「スペース」。


それが何を意味するのか、イアにはまだ分からない。


復讐への道はさらに深い闇へと続いていく。


そんな中、イアはある少女と出会う。


それは偶然なのか、それとも運命なのか――。

刑務所の檻の前には二人――。


いや、一人と一つの亡骸があった。


生きているのは僕。


そしてもう一人は、黒田雅人の亡骸だった。


僕は何も言わず、数分間その姿を見つめ続けた。


黒田は最後まで組織の真実を話そうとしていた。


だが、その口は閉ざされた。


口封じ。


それ以外に考えられなかった。


黒田が最後に残した言葉。


「組織の本当の名は――スペース。」


その言葉だけが頭の中で何度も繰り返される。


スペース。


それが何を意味するのかはまだ分からない。


組織の名前なのか。


計画の名前なのか。


だが一つだけ確信していた。


その組織の中に、イレイナを殺した人間がいる。


僕は静かに刑務所を後にした。


歩きながら首元の雫のネックレスを握る。


イレイナ以外の人間が死ぬ瞬間を初めて見た。


人はこんなにもあっけなく死ぬ。


黒田も。


イレイナも。


だから僕はネックレスを強く握り締める。


「必ず……」


「必ず僕が復讐を果たす。」


そう心の中で誓った。


気が付けば僕は路地裏へ向かっていた。


イレイナと初めて出会った場所。


辛い時。


迷った時。


僕はいつもここへ来る。


ここだけは不思議と心が落ち着く。


だが今日は違った。


先客がいた。


長い金髪。


燃えるような赤い瞳。


整った顔立ち。


ボロボロの服を着た中学生くらいの少女だった。


僕は立ち止まる。


少女もこちらを見る。


そして先に口を開いた。


「君、名前は?」


その瞬間だった。


僕は一瞬だけイレイナの姿を重ねてしまった。


何も答えられずにいると、少女は肩をすくめた。


「名前ないんだ。」


「かわいそう。親から愛されなかったんだね。」


そう言って笑う。


その笑い方はイレイナとは全く違った。


僕は心の中で苦笑する。


(何を期待していたんだ。)


(イレイナと重ねてしまった僕が馬鹿だった。)


「僕の名前はイア。」


少女は目を丸くした。


「え?」


「君って……僕っ子なの?」


「どういう意味だ?」


「だって女の子なのに『僕』って言うから。」


僕は思わず固まった。


「……僕は男なんだが。」


「えっ!? 本当に!?」


少女は信じられないという顔をする。


「マジ。」


「マジかぁ……。」


少女は空を見上げて大きくため息をついた。


「完全に女の子だと思ってた。」


僕は呆れながら彼女の隣へ腰を下ろした。


やはり落ち着く。


誰がいても、この場所だけは変わらない。


「君の名前は?」


僕が尋ねる。


少女は少し笑って答えた。


「私? 私はレイナ。」


「レイナか。」


「どうしてこんな場所にいる。」


レイナは笑顔を消した。


「親から虐待されてたの。」


「それが嫌になって逃げてきた。」


「行く当ては?」


「ないよ。」


少しだけ寂しそうに笑う。


「イアは?」


「どうしてここにいるの?」


僕は路地裏を見渡した。


「ここは、大切な人と出会った場所だから。」


「……そっか。」


短い返事だった。


少し沈黙が流れる。


「イアって普段は何してるの?」


「僕は……汚い仕事をしてる。」


レイナはそれ以上聞かなかった。


「ごめん。」


「聞いちゃいけないことだったね。」


「いや、大丈夫。」


また静かな時間が流れる。


やがて僕は口を開いた。


「これからどうする。」


「うーん……決めてない。」


僕は少し考えた。


そして自然と言葉が出た。


「だったら。」


「僕の相棒にならないか。」


レイナは目を瞬かせる。


「相棒?」


「ああ。」


「僕の依頼を手伝ってほしい。」


「でも……。」


「君、私と同じくらいの年だよね?」


「大丈夫なの?」


僕は静かにうなずいた。


「住む場所はある。」


「ご飯もある。」


「一人でいるよりはいいと思う。」


レイナは少し考えた後、小さく笑った。


「面白そう。」


「じゃあ、よろしくね。」


こうして僕とレイナは出会った。


この出会いが、僕の運命をもう一度大きく動かすことになるとは、この時の僕はまだ知らなかった。

第8章を読んでいただき、ありがとうございました。


今回は黒田雅人との別れ、そして新キャラクター・レイナとの出会いを描きました。


黒田は最後まで悪人として生きましたが、同時に組織の犠牲者でもありました。


彼の死によって、イアは自分が追うべき敵が想像以上に巨大な存在であることを知ります。


そして物語の終盤では、イレイナとの思い出が残る路地裏でレイナという少女と出会います。


最初はイレイナを重ねてしまったイアですが、レイナはイレイナとはまったく違う性格の持ち主です。


それでも、この出会いは止まっていたイアの時間を少しずつ動かしていくことになるでしょう。


次章からは、イアとレイナがどのような関係を築いていくのか、そして「スペース」という組織の謎にも少しずつ迫っていきます。


これからも『白い死神は瑠璃色の夢を見る』をよろしくお願いいたします。

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