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私は君の盾となり剣になりたい  作者: 浅葱


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4/5

俺の女を連れて行くならば、相手になるのも仕方なしと思う件

挿絵(By みてみん)

私の愛する若が、突然新幹線の中で

「ならば福島を視察しよう!」と皆に言い放った。そして、私達SPが立てたそれまでの警護プランが全て台無しになった。日本国王に就任したばかりの私が愛する若は、王位継承戦で敗れた若の兄上に命を狙われたいるのに、警護プランを無視し行き先を突如変える

若、曰く

「計画があるから、相手に計画される」

「だから、突如の計画変更すれば相手も対応できまい」

若は得意げに私に言ったが、私は、困り顔を若に向けて答えた


私達SPが大慌てで警護プランを練直していると、新幹線が静かに郡山駅のホームに着く

日本国王である若と観光大臣の二人は私達SPに囲まれながら駅の改札を出ると、仲間のSPが用意したレンタカーのアルファードがロータリーに到着し、日本国王である若と観光大臣、私とSP仲間3人の計6人が車に乗り込んだ。

目的地は、仙台から視察場所を変更した福島の温泉街

外国人観光客のオーバーリズムを解消するために観光地の分散化を目的とし、外国人観光客を福島の温泉に来てもらうための視察と新幹線の中で説明を受けた


車は駅前の道から、通りに入ると、またもや若は

「この先のショッピングモールにユニクロが有るみたいだな」

「ユニクロに寄ってスーツ姿を止めてカジュアルな姿になろうぜ!」

「つまり一般人目線で視察を行いたい!」

「よし!それで行こう!ユニクロに寄ってくれ」

「また、王の行き当たりばったりが始まった」という顔をしながら運転手のSP部下、竹内は

「了解!」と大きな声で返事をし、アクセルペダルをそっと踏み車が走り出した

車は、駅前の道から国道に入ると、寄り道先のショッピングモールの駐車場に到着した

若は、嬉しそうに車を降りショッピングモールに入って行く

私は急いで若の後を追いかけ、側に立ち周囲の警戒を怠らない

若は、1階あるユニクロを見つけると店内を周りSPを含め皆、思い思いの服を選んだ

皆は、チノパンにセーターやシャツを選んだが私と若は、お揃いで白のパーカーにデニムパンツというペアルックスタイルを選び、お互いに少し照れ笑いした。

観光大臣は、私たちの服装を見て「お似合いですよ!」と言うので、再び二人で照れた

日本国王の若、観光大臣、我々SPの計6人の一行は、それぞれ思い思いのカジュアルな服装になって再び、レンタカーのアルファードに乗り込んだ。


車は、市街地を抜け国道を北上すると、やがて緑が多くなり山道に差し掛かる

ナビで確認すると目的地の温泉街は、2km先の信号を左折し山道を登り山の中腹にある温泉街が目的地なので信号左折後は、峠道の道沿いで到着となる。

道は直線が短くなりカーブが多くなってきた頃、わずかに霧が出てきた

運転手である仲間のSP竹内が安全のために車の速度を落としながら

「うぅーん」と、呟いた

「どうしました?竹内君」と私が尋ねると竹内は

(かえで)チーフなんか変ですね?」竹内は目線を前に向けハンドルを握ったまま答えた

「何が変なんです?」私はアルファードの後部座席二列目の若の隣から運転席に座る竹内に尋ねる。警護職において、わずかな違和感における変という感覚を見過ごすわけには行かない

「この先の信号を左折ですが、、、、、」

「その信号にたどり着かないんです!」

「そんなバカな、思い過ごしでしょう」と言い、私は周りの風景とナビの現在位置を確認した。自車位置の三角マークは、もうすぐ左折する信号に到着する


もうすぐ到着するはずだが、左折ポイントは来ない

衛星が、ナビを捕捉できず地図上の自車位置が狂っているのかと思い、自身のスマホを出してナビを立ち上げ自身の位置を確認すると、スターリンク衛星は私を捉えて、車搭載のナビと同じ位置を示している

車窓から外を見ると、車は走っていて薄く霧が出ている中、左折ポイントに向かっている


おかしい

車は、竹内が違和感を感じてから既に30分は走行しているが、一向に左折ポイントに到着しない。

ユニクロで服を購入して、出発から既に1時間は過ぎている。ナビが示す場所が合っているならば、道を間違えてもいない

車内では、不安な雰囲気が立ち込める

さらに、30分が経過したが左折ポイントどころか、対向車にも出くわさなかった。


霧が濃くなっている


なにか、巨大な生き物に車が進んでは持ち上げられ元の場所に戻されている感覚がし、背筋がザワザワしている

私は、「車を止めて!車外に出て様子を見ます」と言うと竹内は車を道の端に寄せ停車した

私はスライドドアを開け車外に出ると、薄く霧をまとった車外の空気が私の肌にねっとりと(まと)わり着いた。

私の全身からは冷や汗が出始めている

先程まで聞こえていた、近くを流れる沢の音

風によって沸き起こる木々のざわめき

鳥のさえずり

それら全ての音が無くなっていることに気づいた

聞こえるのはレンタカーのエンジン音のみだ

私は車を降り、この異変の原因を見つけようと辺りを見渡すと

私の視界は段々と狭くなりぼやけてくる

私の思考は、先程までは次に曲がる信号が来ない原因を探る思考が、ぼやけてくる。もう、どうでもよくなり集中力が切れている


なんでだろう?

理由はわからないが

霧の中に呼ばれている感じがする

私の足は自然と前に出て、ふらふらと霧の中に歩み始めた



「辺りの様子を見る」と言って、楓がスライドドアを開け車外に出ると車の前に移動し首をゆっくり左右に振ると楓は霧の中に向かって、ふらつきながら歩き始めた

即座に私は腰を上げ、スライドドアのノブに手をかけドアを開けると車外に出る

周りからは「王!危険です戻って!」と声がしたが、愛しき楓が消える感覚がするのでかまっては居られない。急いで霧の中に進む楓の隣に立つと、右手の五指を広げ大きくスイングし楓の背中を叩いた

楓は、目を開き驚き私を見て「わ、若!」と言い

「呑み込まれそうだったぞ、大丈夫か?楓」と言うと楓の両目からは沢山の涙が溢れてきた

私は楓の頭を撫でた後、両手を自身の胸の前に出し

(りん)」と発しながら、大金剛輪印の印を結び

続けて「|兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前《びょう・とう・しゃ・かい・じん・れつ・ざい・ぜん》」と真言を発しながら、それぞれの印を結んだ



私が、ふらふらと霧に向かって歩いていると背中を思いっきり叩かれた

驚き、叩かれた方を見ると、そこには若がいた

若は「呑まれるな」と、優しく笑顔で言われた

私は安心感からか、両目から涙か溢れ出てきた

若は優しく頭を触った後、手を離し

両手で手印を作りながらマントラを唱えた

すると、先程まで霧が濃くなっていた、この辺りが次第に薄まり晴れていった

若は「山神様かな?」と言い

「申し訳ありません」

「この娘は、私の大事な人です」

「たとえ神様でも、この娘を連れ去ることは許しません」

と頭を下げ言った、隣の私も慌てて頭を下げた


2人で頭を下げていると次第に霧が薄くなり始めた

霧が薄まっていくのを見届けると、私は楓に

「車に戻るぞ」と声を掛け2人でアルファードに乗り込んだ

後部座席に座る観光大臣は、身を乗り出し目を見開き驚いた様子で

「王は印を結べるんですね!」と感心した声で言った

「あ、あー昔、中二病を患っている時に孔雀王で覚えた」と観光大臣に嘘をついた

死んだ前王の親父が教えてくれた。帝王学の一部だったのかもしれない

私は観光大臣に、「この辺りの山岳信仰を調べてくれ」

「何か、えーと例えば祀っている(やしろ)が壊れているとか」

「今回の不思議な現象は」

「山神様からの、助けてのサインだったのかもしれない」

観光大臣は何度も頷き「はい!すぐ調べます、任せて下さい」と言いながらスマホを出し、何処かに電話を掛けようとしていた


若は運転席に座る竹内に

「さぁ出発だ」と言うと

「はい!」と、大きな返事が帰ってきた

竹内がアクセルを踏み車が走り出す

霧は晴れている

もうすぐ左折ポイントが現れる、と皆が確信している

私は非利き手を、若の手に重ねた

私は、若を守り若に守られていると思った

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