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現代知識で異世界村を救う  作者: バクリ
New Season

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90/93

第90話復讐のジレンマと、過去の教え

プリリーはこれ見よがしに胸を反らした。両手を腰に当て、顎をくいっと持ち上げてサンドラを見下ろす。それが、この部屋の中で彼女が自分の身分を誇示するための、ひどく安っぽいポーズだった。


だが当然ながら、サンドラはそのくだらない主張を真っ向から否定した。


「ありえないわ! あなた、冗談言ってるんでしょ!?」


「ふふふっ!」

プリリーはポーズを変え、今度は鼻の頭をこすった。

「信じられないなら、アキラちゃんと、そこのおじいさんに聞いてみてくださいな」


俺は言葉を失った。プリリーから急にそんな熱い爆弾を放り投げられ、舌が凍りついたように動かなくなる。


しかし、その沈黙は長くは続かなかった。サンドラの冷ややかな視線が、即座に俺を射抜いた。彼女は目を細めて俺を威圧し、今すぐその言葉の真偽を証明しろと無言で要求してきた。


「ああ……その馬鹿が、ナイバホの令嬢だ」

俺は半分投げやりに答えた。このふざけた事実を認めるたびに、舌の先を噛みちぎりたくなるような後悔が押し寄せる。


「ほら、言った通りでしょう?」


俺が肯定したというのに、サンドラの顔にはまだ深い疑念が刻まれていた。

『貴族の令嬢が、あんな底抜けの馬鹿なはずがない!』

彼女の顔に浮かんだ表情だけで、頭の中でどんな悪態をついているかが手に取るように分かった。そして正直なところ、目の前にいるこの阿呆な女の純真すぎる振る舞いを見れば、ナイバホ家にまつわる荘厳な噂など完全に打ち砕かれてしまうのも無理はない。


「どうして黙ってるの、タカヒロ? 早く言いなさいよ……あんたの言葉が嘘だって!」


「嘘をついて何の得がある?」

俺は立ち上がりながら、彼女の言葉を切り捨てた。

「まだ信じられないなら、あの紋章を見てみろ」


俺はプリリーの腰を指差した。そこには、鳩の紋章が刻まれたリボン型の帯が巻かれていた。その鳩の翼――それは、民の正義、繁栄、そして自由を尊ぶナイバホ家の絶対的な象徴だ。


サンドラはガクリと肩を落とした。唇は半開きになっているが、声は出ない。彼女も間違いなくあの特別な紋章を知っているのだ。賢く優雅な令嬢という彼女の抱いていた理想像は、その正体がプリリーだと知った瞬間、粉々に砕け散ったに違いない。


「どうだ、これで信じたか?」

俺は努めて冷静な声で続けた。


サンドラは深く息を吐き出した。顔に浮かんでいた拒絶の色が少しずつ薄れ、現実を受け入れる諦めの表情へと変わっていく。どうであれ、事実は彼女の目の前に突きつけられている。好むと好まざるとにかかわらず、彼女が先ほど提案した計画を実行するには、このプリリーという存在が必要不可欠なのだ。


「それで、さっきの私の計画についてどうお考えですか、プリリー……様?」

サンドラは、名前の最後に無理やり敬称をつけ足しながら、ぎこちない声で尋ねた。


「あなたが私に助けを求めているんですから……仕方ないですね? 手伝ってあげましょう!」


そこが重要なんじゃない。今俺たちに必要なのは彼女の傲慢な態度ではなく、シャキールのために、どうやってヴィンに復讐を果たすかという具体的な手段だ。

だが、俺が口を挟むより先に、プリリーの顔から子供っぽい表情がスッと消え失せた。彼女を取り巻く空気が、急に冷たく張り詰めたものに変わる。


「実は、ナイバホの警察組織もすでにヴィンとその手下たちを捕まえようと動いているんです。でも、彼にはかなり広い情報網があって……警察も逮捕に手こずっている状態なんです。


私たちがこれまで尽力した作戦は、ほぼ百パーセント失敗に終わっています!」


プリリーの言葉が、俺の頭を鈍器で殴りつけた。ヴィンはただのチンピラじゃない。この世界における、正真正銘の巨大な捕食者プレデターだ。ナイバホの警察のようなエリート集団でさえ捕らえられない相手に挑むなど、俺たちの計画は次第にただの自殺行為のように思えてきた。


「どう思う、サンドラ? それでもまだ、自分のアイデアを押し通す気か?」

俺は彼女に問いかけた。


サンドラは下唇を噛み、眉を寄せて床を睨みつけた。間違いなく、彼女の頭の中では打開策を見つけようと必死に思考が回転しているはずだ。だが、この計画が実を結ばないだろうということは、お互いに分かっていた。


「プリリーの言う通りみたいね……!」

彼女は自分に言い聞かせるように、小さな声で呟いた。

「たとえフライヤーに協力を求めたところで、シャキールが復讐を果たせる保証はないわ」


一方、ウェインは先ほどからずっと黙って俺たちのやり取りを見守っていた。彼にとって、この行き詰まりはむしろ幸運なことだったのかもしれない。丸腰で死にに行くよりは、危険を回避する方がずっとマシなのだから。


「みんな、私の話を聞いてくれないか……」


ウェインの低く重い声が沈黙を破った。俺たちは反射的に彼の方へと視線を向けた。


「この計画はもう諦めて、少し考えてみてほしいんだ……」

ウェインはそこで言葉を区切り、俺たち一人一人の顔を深い感情を込めた目で見渡した。

「もし君たちが無謀な復讐に走り、無事に帰れなかったとしたら、家で待っている家族はどうなる?


愛する者が傷ついて倒れるのを見るのがどんなに辛いか、私にはよく分かる。特に、今回のシャングリーのような状況ならなおさらだ。私も、過去に同じような経験をしたことがあるからね。


私がまだジョナンディと同じくらいの歳だった頃、大好きな姉が顔をボコボコに腫らして家に帰ってきたのを見て、ひどくショックを受けたんだ。


私が復讐に行こうとした時、姉がなんて言ったか分かるかい?」


その場が、ひんやりとした空気に包まれた。俺たちは言葉を失い、誰一人として答えることができなかった。ウェインの過去の重荷を一緒に背負わされているかのように、部屋の中が急に息苦しく感じられた。

誰も声を発しないことを察し、ウェインは自らの問いに答えるように言葉を続けた。


「『もし誰かに酷いことをされても、暴力でやり返そうとしちゃダメよ。ただ、その人が無事でいられるように祈ってあげなさい。そうすれば……きっといつか、あなたも神様からお恵みをいただけるはずだから』」


その重苦しい教えが語り終えられた瞬間、椅子が乱暴に床を擦る不快な音が響いた。シャキールが立ち上がったのだ。彼は顎を固く引き結び、怒りを押し殺した表情のまま、無言で小屋の外へと歩み去っていった。


彼の突然の退出が、俺たちを現実へと引き戻した。彼の頭の中は痛いほどよく分かる。シャキールにとって、シャングリーを傷つけたあのクソ野郎どもに痛い目を見せず、のうのうと息を吸わせておくことは、将来的に他の獲物が喰われるのを黙って見過ごすのと同じことなのだ。


だがその一方で、ウェインの言葉も俺の理性を強く打った。暴力に暴力で返せば、その負の連鎖は永遠に終わらない。死は新たな問題を生み出すだけだ。


「タカヒロ、他に何かいい案はあるの?」

サンドラが、この気まずい空気を払拭しようと尋ねてきた。


俺は乱暴に顔を拭った。俺の頭の中には、もう何の戦略も残っていない。ウェインの言葉が今も頭の中でぐるぐると反響し、思考を占領していた。


「ウェインのお姉さんの教えに従うのが、一番いいのかもしれないな」

ついに俺はそう答えた。


「本当にそれでいいんですか?」

俺の目に残る僅かな迷いを断ち切るかのように、プリリーが会話に加わってきた。


「ああ、俺の決断に百パーセント間違いはない」


今や、決定権はサンドラの手に委ねられていた。この計画を最初に持ち出したのは彼女だ。俺は彼女の目を見据え、答えを待った。彼女は自分のエゴを呑み込みウェインの姉の教えに賛同するのか、それとも流れに逆らって突き進むのか。


数秒の沈黙が流れ、やがてサンドラは諦めたように息を吐いた。


「分かったわ。あんたがそう言うなら、私もそれに従う! 後で取り返しがつかなくなるより、最初から問題を起こさない方がマシだものね」


彼女の決断を聞いて、俺の胸の中に安堵が広がった。これで終わりだ。この狂った計画は正式に白紙になった。

だが、その安堵感は、ウェインが再び口を開いた瞬間に霧散してしまった。


「姉の言葉に耳を傾けてくれて感謝するよ。シャキールのことについては、私が対処しよう」


ウェインの最後の言葉が、空中にゆっくりと漂う。だがなぜか、その言葉は俺の背筋をゾクッとさせた。開け放たれたドアを静かに見つめる彼の落ち着き払った口調から、俺は突然疑念を抱かずにはいられなかった。

彼が言う『対処』とは、本当に平和的な結末を迎えるという意味なのだろうか?

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