第61章:暗黒の空の下、声なき目撃者
ヴェリア村はすでに深い眠りに落ちていた。
アンティの口から情報を絞り出した後のピリついた緊張感は徐々に薄れ、今やヨト家は完全な静寂に包まれている。
住人たちが疲労困憊で泥のように眠るその暗闇の中、決して目を閉じようとしない者がいた。
タカヒロである。
彼はベッドに仰向けになり、両手を後頭部で組んでいた。その視線は虚空を彷徨い、天井を突き抜けて遥か彼方を見つめているようだった。目はうつろだったが、頭の中では先ほどの出来事が嵐のように渦巻いていた。
時折忍び込む夜風が外の葉を揺らし、カサカサという乾いた枝の擦れる音だけが微かに響く。
元の世界への郷愁に引きずり込まれそうになったその時、タカヒロの意識は現実に引き戻された。ゆっくりと近づいてくる足音が耳に届き、過去の幻影は唐突に霧散する。
台所の方から姿を現したのは、クトリだった。
彼女のシルエットが、お粥の入ったお椀と温かいお茶を乗せたお盆を運んでくるのが見える。
「元の世界が恋しいのでしょう?」
静寂を破るように、クトリがぽつりと呟いた。
「ここは、あなたのいた世界よりもずっと不便でしょうから」
彼女の最初の目的はごく単純で、ただこの青年の話し相手になろうとしただけだった。だが、ほんの些細な不注意が、この夜の展開を劇的に狂わせることになる。
クトリはまっすぐ前を見つめるあまり、左足首を突如襲った強烈な痒みに耐えきれなくなった。歩きながら右足で反射的に掻こうとした瞬間、バランスが大きく崩れる。つま先がもつれた。
彼女が体勢を崩したのを視界の端で捉えたタカヒロは、反射的に両手を伸ばして受け止めようとした。
だが、運悪く体勢が悪すぎた。下から彼女の体重を支えきれず、二人は激しい音を立てて同時に床へと倒れ込んだ。
クトリの手からお盆がすっぽ抜ける。
お粥の入った素焼きの器と温かいお茶の入った湯呑みが宙を舞い、あろうことかタカヒロの頭上へ真っ逆さまに落下した。中身が派手にぶちまけられ、二人の体を無惨に汚す。
タカヒロの上にのしかかる形で倒れ込んだクトリ。
まだ驚きが冷めやらぬ中、彼女は自分の胸に一対の手のひらがしっかりと押し当てられている感触を明確に感じ取っていた。
タカヒロは衝突の衝撃で一瞬目を細めていた。しかし、ゆっくりと目を開け、自分の両手が絶対に触れてはいけない魅惑の領域に迷い込んでいることに気づいた瞬間、顔が一気に沸騰した。
(……やっべぇ!)
かつてないほどの激しい動揺に襲われ、彼は慌てて手を離すと、勢いよく顔を背けた。
タカヒロの手が胸から離れたのを悟り、クトリの口からふいに小さな呟きが漏れた。その声は、羞恥に震えている。
「ど、どうして……やめてしまうのですか?」
「え!?」
その一言が、反射的にタカヒロの口から飛び出した。恐る恐る視線を戻すと、そこには自分と同じように顔を真っ赤に染め上げたクトリの姿があった。
「さっきのように……続けてください」
その信じられない要求に、タカヒロの脳味噌は完全にショートした。
「な、何言ってんだ……?」
最初はクトリ自身も戸惑っていた。ここまで大胆な行動に出るのは、彼女にとっても初めてのことだったのだ。だが、青ざめて困惑しきっているタカヒロの顔を見た途端、彼女の中の何かが完全に主導権を握った。
青年の問いに答えることもなく、彼女はそっと手を伸ばす。
そして、タカヒロの両手を一つずつ引き寄せると、強引に元の位置へと戻した。彼の手のひらに、再び自分の胸を揉みくちゃにさせる。
タカヒロの理性が、音を立てて崩れ去った。
すでに引き返せない一線を越えたことを悟り、ごくりと生唾を飲み込むと、再び目を閉じる。
そして、その手が再びクトリの豊満なDカップの膨らみを包み込んだ瞬間、彼女の唇から甘い吐息がこぼれ落ちた。それは、彼女の防壁がもはや完全に決壊したことを告げる合図だった。
何の予告もなしに、クトリの右手が下へと這っていく。
その指先はどこまでも滑らかに動き、ズボン越しにすでに硬く張り詰めていたタカヒロの急所へと触れた。
「お前、何して……っ!?」
感情が爆発しそうになったその言葉は、無残に遮られた。
クトリの唇が彼の口を塞ぎ、言葉を完全に封じ込めたのだ。そこから、濃厚な舌の絡み合いが始まる。
タカヒロの中には一瞬だけ躊躇いがあったが、最終的にその防壁は完全に吹き飛んだ。彼はその熱烈なキスを貪り返し、クトリが作り出した狂気のような熱の渦へと呑み込まれていく。
荒々しい吐息でますます濃密になる静寂の中、衣服は次々と剥ぎ取られ、部屋のあちこちへと無造作に放り投げられた。
頭頂部まで達した欲望が、タカヒロの目を完全に曇らせる。
彼は体勢を入れ替え、まだ純潔であったはずのクトリの上にのしかかると、獣のように荒々しく彼女を押し倒した。
クトリの口からは、とめどなく甘い声が溢れ出す。タカヒロの熱塊が彼女の秘所へと侵入した瞬間、その嬌声をもう抑え込むことはできなかった。
「も、もっと優しく……タカヒロ君……っ」
だが、その切実な懇願は彼の耳を素通りした。
タカヒロはすでに完全に理性を失い、まるで耳が聞こえなくなったかのようだった。ペースを落とすどころか、青年はさらに激しく、狂ったように腰を打ち付け続ける。
タカヒロにとって、眼下に広がる光景——一糸纏わぬ姿で艶めかしい声を上げるクトリ、その滑らかな曲線美と豊満な胸の谷間——は、元の世界での生涯を通じて一度も味わったことのない絶対的な美であった。その圧倒的な視覚的快楽が、タカヒロの情欲をさらに野蛮なものへと煽り立てていた。
時を同じくして。
部屋の奥から、ギシッ……というベッドの軋む音が微かに響いた。ヴィオラが目を覚ましたのだ。カラカラに渇いた喉が、まだ夢現の意識を無理やり引き起こし、水を求めて体を動かさせた。
だが、ふらつく少女の足取りは突如としてピタリと止まった。
前方から、何かを執拗に吸い上げるような、水っぽい奇妙な音が微かに鼓膜を揺らしたのだ。
喉の渇きなど一瞬で忘れ去った。
ヴィオラは足音を殺し、忍び足で音の出所へと近づいていく。
暗がりの向こう側。
タカヒロがクトリの胸の先に吸い付き、貪欲に貪っている真っ最中、熱に浮かされた二人は第三者の接近に全く気づいていなかった。ヴィオラは、彼らからほんの数歩の距離で石のように立ち尽くしていた。
ヴィオラは、まだ目脂のついた目をゴシゴシと擦った。
そして再び視界が鮮明になった瞬間……彼女は無理やり息を引き剥がされたかのように呼吸を止めた。
その両目は極限まで見開かれている。
自分の鼻先で繰り広げられている、タカヒロとクトリの常軌を逸した狂宴を目の当たりにし、ヴィオラの脳は致死量のショックを受けていた。




