第5章:奮闘と成果
鬱蒼とした原生林の深い影が、ようやく背後へと遠ざかっていく。
境界となるこの丘の上からは、ヴェリア村の景色がはっきりと見渡せた。
夕暮れの空が黄金色のオレンジ色を放ち、村の家々の屋根を優しく包み込んでいる。
背中に感じる森の冷たい空気とは対照的な、その温かな光景。
ケイトとヴィオラの荒い息遣いが重なり合う。
タカヒロの重たい体を引きずってきたせいで、二人の腕の筋肉はすでに感覚を失っていた。
残された最後の力を振り絞り、二人は息を合わせて意識のない青年を下ろす。
太い木の幹に寄りかからせるようにして座らせた。
「ヴィオラ、お前はここでこの人を看病しててにゃ。」
ケイトは静かに言いながら、手の甲でこめかみから流れる汗を乱暴に拭い去った。
「日が沈む前に、ウチは助けを呼んでくるから。」
その絶対的な命令に、ヴィオラは声を出す余裕もなく、ただ静かに頷いた。
視線は、痛々しい赤い擦り傷に覆われたタカヒロの体に向けられている。
その頷きを確認するや否や、ケイトは一瞬の無駄もなく身を翻した。
赤髪の少女は丘の斜面を村へ向かって駆け下りていく。
手伝ってくれる誰かを見つけるために。
ケイトが去った後、再び静寂が押し寄せた。
ヴィオラは未だに、この見知らぬ青年に何が起きたのか全く理解できていなかった。
ゆっくりと腰を下ろし、タカヒロの左側にしゃがみ込む。
両肘を太ももに乗せ、手のひらで顎を支えた。
夕暮れの風のざわめきをBGMに、彼女の物憂げな黄金色の瞳がタカヒロの顔の輪郭をなぞる。
無意識のうちにヴィオラの右手が上がり、指先が青年の額を覆う埃まみれの髪をそっと払いのけた。
前髪がめくられた瞬間、強烈な哀れみがヴィオラの胸を締め付ける。
タカヒロの顔に刻まれた傷は、あまりにも痛々しかった。
応急処置もせずに、このまま放っておくことなんてできない。
何か探さなきゃ。
薬草でも、樹液でも、何でもいい。
ヴィオラは立ち上がり、丘の周囲を見渡した。
何もない。
あるのは雑草と硬い木々だけだ。
本能に突き動かされるように、彼女の足は丘を下り、よりなだらかな境界地帯へと向かっていた。
タカヒロを一人で残すのは危険だが、同じ場所で探していても埒が明かない。
数メートル歩き続けたところで、彼女の視界にボロボロの小屋が飛び込んできた。
それは、とうの昔に見捨てられた、薬草売りの古い小屋だった。
その小屋の庭先で、見覚えのある植物のシルエットが目に留まる。
思わず足早になる。
間違いない。
乾いた土の庭の隅で、アロエベラの群生が青々と茂っていた。
灰緑色の葉は、槍の穂先のように長く伸びている。
ヴィオラはしゃがみ込み、微かな斑点模様がある若葉の表面を指でなぞった。
縁には鈍いノコギリのような小さなトゲが並んでいる。
肉厚な葉を指で押すと、しっかりとした弾力があり、中に水分がたっぷりと詰まっていることがわかった。
「やった! ついに見つけた!」
迷うことなく、ヴィオラは最も大きな葉を二枚折り取った。
パリッという小気味良い音の直後、切り口から黄色みがかった粘液が滴り落ちる。
これだけあれば十分だ。
ヴィオラはすぐに向き直り、タカヒロが寄りかかる木を目指して斜面を駆け上がった。
到着した時には、胸が激しく上下していた。
体力を奪う登り坂のせいで、息がひどく切れている。
だが、その疲労感を彼女は心の奥底に押し込んだ。
横座りになる。
まるで自然に親しんだ薬師のように、彼女の指先は手際よく分厚い葉の外皮を剥いていく。
中にある透明で滑らかなゲル状の果肉が、土に落ちて汚れないように細心の注意を払った。
処置を始める前に、ヴィオラは残り少ない水筒を手に取り、右の掌に水を注いで汚れや埃を洗い流した。
十分に綺麗になったことを確認してから、弾力のあるアロエのゲルを手に取り、タカヒロの腕にある赤い傷跡にそっと塗り広げ始めた。
「少しだけ我慢してね。」
ヴィオラは優しく語りかけた。
冷たい粘液を丁寧に塗っていく。
青年からの返事がないことは分かっていたが、声を出すことで彼女自身が少し落ち着くことができた。
「痛くしないからね。」
タカヒロは意識の底に沈んだまま、ピクリとも動かない。
顔の肌の表面は、徐々にアロエベラのゲルの透明な輝きで覆われていった。
「ごめんなさい……。私にできるのは、これくらいしかなくて……。」
タカヒロの右頬の周りにゲルを伸ばしながら、彼女は小さく呟いた。
「気休めかもしれないけど、少しでも痛みが和らぐといいな。」
一枚目の葉を使い切る。
ヴィオラはすぐに二枚目に手を伸ばし、再び皮を剥いて、残りの傷口へと塗り込んだ。
数分後、即席の治療がようやく終わった。
ヴィオラの体力は完全に底をついていた。
体が後ろに傾き、草むらの上にドスンと座り込む。
そのまま重力に身を任せ、大の字になって仰向けに寝転がった。
偶然にも、彼女の足首がタカヒロの足の上にポンと乗っかってしまう。
両腕をだらんと投げ出し、唇の隙間から長いため息を漏らしながら、ゆっくりと目を閉じた。
「あぁ、疲れた……! 近所の凶暴な犬に追いかけ回された気分。なんだか、このままここで寝ちゃいたい気分だな……。」
夕暮れの心地よい風が、彼女の意識を微睡みへと誘う。
さっきの独り言は、限界まで溜まった疲労から自然に漏れ出たものだった。
今日は本当に、長くて苦しい一日だった。
次第に薄れていく意識の中で、閉じた瞼の裏に苦い記憶が忍び寄る。
家で待つ家族の顔。
父親が死んでから一家の大黒柱になるというのは、決して生易しい運命ではなかった。
彼女は、細々と小麦や稲を育てる貧しい農家の長女に過ぎないのだ。
収穫の季節が来るたび、強欲な村の重役たちの影が常に付き纏う。
脳裏に、あの胸糞の悪い光景がフラッシュバックする。
仲買人の男たちが、手動の秤の分銅にこっそりと分厚い髪の毛の束を忍び込ませる瞬間。
常に秤を片方に傾けさせるその汚い手口で、彼らは農民の血と汗の結晶を二束三文で奪い取っていくのだ。
彼女の家族だけでなく、ヴェリア村のほぼすべての農民が同じ運命を辿っていた。
しかし、そのささやかな暴政に対して、声を上げて立ち向かおうとする者は一人もいない。
彼らが黙り込んでいるせいで、あの高利貸したちはますます味を占め、貧しい人々の首を絞め続けているのだ。
運命の渦と、終わりの見えない借金の鎖に囚われ、ヴィオラは深く沈み込んでいくような感覚に陥っていた。
(……全部、私がなんとかしなきゃいけないんだよね)
すべてに立ち向かわなければならない。
だが、今日の夕暮れだけは……ほんの数分だけでいいから……。
彼女はただ、この心地よい眠気に身を委ねたかった。
◇◇◇
いつの間にか時間が過ぎていた。
空がすっかり暗くなり始めた頃、荒々しい足音と木の車輪が軋む音が、丘の静寂を破った。
ケイトが古い木製の荷車を引きながら斜面を登ってくる。
その後ろには、村の青年二人が続いていた。
丘の途中から、ケイトは何度もヴィオラの名前を呼んでいた。
しかし、その声はただ風にかき消されるだけだった。
一行が木の下に到着した瞬間、ケイトの足がピタリと止まる。
彼女のこめかみに、青筋がブチッと浮かび上がった。
そこには、傷ついた青年の傍らで、信じられないほどぐっすりと眠りこけているヴィオラの姿があった。
灰色の髪の少女は口を半開きにし、顎には一筋の涎まで垂らしている。
村まで走った疲労感など一瞬で吹き飛び、代わりに煮えくり返るような怒りが湧き上がってきた。
ズンズンと大股でヴィオラに歩み寄る。
次の瞬間、一切の躊躇なく、ケイトの足がヴィオラの脇腹にクリーンヒットした。
さらにそのまま、太ももに向かって連続で容赦のない踏みつけ攻撃をお見舞いする。
背後にいた二人の青年は、そのあまりにも残虐な光景に、ただ生唾を飲み込むことしかできなかった。
「おい、てめぇ……!」
怒りが爆発寸前の顔を引きつらせ、ケイトはドスの効いた声で吐き捨てた。
「さっさと起きろ、貴様! ウチは『この人を看病しろ』って言ったんだよ! なんで横で一緒になって爆睡してんだ、お前は!」
突如降り注いだ物理攻撃の嵐に、ヴィオラは目をカッと見開いた。
意識が強制的に現実へと引き戻される。
「痛っ! 痛い! やめて、ケイト!」
ヴィオラは悲鳴を上げ、体を左右に捻りながら、両手でケイトの猛烈な踏みつけを必死にガードした。
しかし、ケイトは全く手を緩めない。
サンダルのつま先が、容赦なくヴィオラの腰をいたぶり続ける。
「やめてほしかったら、てめぇもさっさと起きて運ぶのを手伝うにゃ!」
選択肢などないヴィオラは、慌てて後ずさりしながら這い上がり、涙目で腰をさすりながら立ち上がった。
ヴィオラが起き上がったのを確認すると、ケイトは鼻をフンと鳴らし、ようやく攻撃を止めた。
馬鹿げた騒ぎが収まると、四人はすぐにタカヒロへと意識を向けた。
ケイトの合図に合わせて、村の青年二人が肩側を持ち上げ、ヴィオラとケイトが足側を支える。
せーので重い体を持ち上げ、荷車の木の板の上に慎重に寝かせた。
ギーギーと車輪の軋む音を響かせながら、彼らは原生林の丘を後にする。
見知らぬ青年を乗せ、眼下に広がる村へと足を踏み出していった。




