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現代知識で異世界村を救う  作者: バクリ


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第46章:招かれざる客

ヴェリア村の空が、ゆっくりとオレンジ色に染まっていく。家の中で起きたばかりのあの騒ぎとは裏腹に、時間はあっという間に過ぎ去っていた。


玄関の扉が開き、ヨトたちが姿を現した。彼らの服やズボンには泥がべったりとこびりついている。汗と湿った土が混ざったような臭いが、一瞬にして部屋中に充満した。タカヒロとクリリーは、そのあまりにも悲惨な有様をただ呆然と見つめることしかできなかった。


「お前ら、遅ぇよ!」タカヒロは不満げに文句を言った。「俺とおばさんは……。」


「クリリーさんって呼んでちょうだい。その方が聞こえがいいから」


タカヒロの言葉が宙に浮く。中年の女性からの思わぬ指摘を頭で処理するため、彼は一度ゴクリと唾を飲み込み、気を取り直して口を開いた。


「俺とクリリーさんは、ずっと待ってたんだぞ」


白髪の青年の視線が素早く動く。息を切らして立っているヨト、クトリ、ウチ、そしてヴィオラをぐるりと見渡した。一人足りないことに気づくと、彼は慌てて言葉を継ぎ足した。


「ケイトはどうした? なんで一緒にいないんだ?」


「あの子は来られないわ」クトリが答えた。彼女は立ち塞がる父親の横をすり抜けながら歩みを進める。「山のように仕事が溜まってて、すごく忙しいの」


タカヒロは口をキュッと結んだ。あの赤髪の少女を無理やり連れてくる計画は諦めるしかない。今の彼の頭の中は、一つのことだけに集中していた。昼間からクリリーと練っていたミッションを、今すぐ実行に移さなければならない。


「まぁいい、来られねぇなら仕方ない。俺たちもさっさと急ぐぞ」


その言葉を聞いて、ヴィオラが眉をひそめた。先ほどからヨトの左斜め後ろに隠れるように立っていた彼女が、一歩前へと進み出る。


「急ぐって、どこへ行くの? まさか、私たちを散歩にでも連れて行く気?」


「バカ! そういう意味じゃねぇよ」


「じゃあ、どういう意味よ?」


ウチといい勝負のヴィオラの純真さに、タカヒロは思わず吹き出した。彼はすぐに右側へと首を向ける。


「クリリーさん。今日の俺たちのミッションを、こいつらに説明してやってくれ」


クリリーは勢いよく頷いた。二児の母親である彼女の顔には、熱意に満ちた満面の笑みが浮かんでいる。


「ベッドよ。今日はこれからベッドを作るの!」


「ベッド?」ヴィオラたちの声が見事に重なった。


「詳しい説明をしてる時間はねぇ」タカヒロは気楽な口調で言った。「暗くなる前に、さっさと作っちまった方がいいからな」


それ以上の反論は出なかった。タカヒロはすぐさま指揮を執り、全員を二つのグループに分けた。クリリーとヨトは家の中に残り、布地を縫い合わせる作業を担当する。一方、タカヒロやヴィオラたちは、ベッドの主な材料を調達しに行くことになった。


第二グループの一行は、村の外れにある林へと足を向けた。


◇◇◇


ヴェリア村の境界にある森では、太陽の光が徐々に削り取られるように消えかけていた。タカヒロは首をコチコチに固まらせながら上を見上げた。彼の視線の先には、巨大なカポックの木の幹がそびえ立っている。


樹皮の表面を覆い尽くす鋭いトゲの群れを目にした瞬間、彼の口から荒い感嘆の息が漏れた。どうやら、材料を集める計画は手のひらを返すように簡単にはいかないらしい。


「……で、誰が上に登るんだ?」タカヒロは苦々しい声で尋ねた。


他の者たちも一斉に見上げる。誰もが総毛立つ思いだった。あんなトゲだらけの幹に登って、わざわざ自分の皮膚をズタズタに引き裂くリスクを冒そうとする者など一人もいない。


「あんなふざけた木に登るくらいなら、テロヴィア市まで歩いて行った方がマシよ」


「そ、そうね……。私もクトリ姉さんの意見に賛成かな……。」ヴィオラが喉の奥で声を詰まらせながら、おずおずと同意した。


そんな絶望に包まれる一行の中で、ただ一人だけが自分だけの世界に浸っていた。


ウチは親指を口にくわえたまま、足元の茂みの方へと視線を向けていた。そこには、楕円形をした茶色い物体がゴロゴロと転がっている。


「ねぇみんな。あそこを見て。あれって何なの?」ウチがふんわりとした声で無邪気に尋ねた。


ウチの小さな指先に導かれ、全員の視線がそちらに向く。タカヒロは一瞬目を細めた。すぐさま大股でその物体の山に近づき、一つを拾い上げた。


「今気づいたぜ。わざわざ木に登らなくても、実は実が落ちてるんじゃねぇか」タカヒロの笑い声が弾けた。指先で乾燥した皮を強く押し込むと、パカッと割れて中からフワフワとした白い繊維の塊が顔を覗かせた。「ほら、お前らも急いでこの実を集めろ。森の中に長居は無用だぞ」


しかし、落ちているカポックの実を拾い集める作業は、決して平穏なものではなかった。まるで森の奥深くが彼らの肉体を試すかのように、まるまる二時間もの間、過酷な試練が続いたのだ。


赤アリの群れに集られた足を乱暴に掻きむしるのは日常茶飯事。大人の太ももほどの太さがあるニシキヘビが獲物を締め上げているのを危うく踏みそうになり、悲鳴を押し殺すこともあった。極めつけは、錆びついた鹿用の罠にウチの小さな足がうっかりハマりかけ、危うく切断されそうになった時の大パニックである。


だが、そんな数々のトラブルにも見合うだけの成果は得られた。最後の日差しが完全に消え去る頃、タカヒロたちは足を引きずりながら村の境界を越えていた。全身傷だらけで泥まみれだったが、その手にはカポックがパンパンに詰まった二つの大きな麻袋がしっかりと握られていた。


森での過酷な戦いは終わった。しかし、家での本当の事態は、まさに今始まろうとしていたのだ。


◇◇◇


漆黒の闇がヴェリア村を包み込んでいた。外の静けさとは打って変わって、ヨト家の中はまだ慌ただしさに満ちている。ヨトは床にしゃがみ込み、散らかった糸くずやハサミを片付けていた。


約束通り縫い上げられたベッド用の布地は、すでに部屋の隅に綺麗に畳まれている。一方、台所からは鍋の底を叩く音がリズミカルに響いており、クリリーがカポック探索チームを労うための夕食作りに奮闘していることが窺えた。


だがその時、思いがけない出来事が起こった。玄関の方から、家の中のすべての音をかき消すほどの激しい連続したノックの音が響き渡ったのだ。


たまたま一番近くにいたヨトが、すぐに立ち上がった。何の疑いも持たず、そのままドアノブに手をかけて引く。


扉の隙間が広がった瞬間……。


「こんばんは……と言うべきかな、ヨトさん」玄関の敷居を跨ごうとしているずんぐりとした太った男が、吐き気を催すような薄ら笑いを浮かべて口角を釣り上げた。「私がここに来た理由、もちろん分かっているだろう?」


ヨトの足が自動的に後退する。目の前の訪問者の顔を認識した瞬間、彼の顔から血の気が完全に引いた。


「バ、バフリル様……。」


「お前の娘が私のところへ来なくなって、もう一週間以上が経つ。だから今日こそ、無理やりにでも引き取らせてもらうぞ」


男の広い肩がドア枠に乱暴にぶつかる。そのままただ立ち尽くしているヨトを突き飛ばすようにして、強引に家の中へと上がり込んだ。


「あいつはどこだ?」男はそう尋ねながら、獲物を探すように部屋の隅々まで鋭い視線を這わせた。


家の奥まで響き渡ったその低い声に、クリリーはコンロの火を止めた。急ぎ足で居間へと向かう。しかし、部屋を区切る柱に肩を寄せた瞬間、彼女の両目は限界まで見開かれた。


「バ、バフリル様……。」クリリーは反射的に両手で口を覆った。足の裏から、奇妙な悪寒が全身へと這い上がってくる。


「おお、クリリー夫人」太った男の重い靴音が、柱の方へと向かってくる。玄関のそばでガタガタと震えながら立っているヨトなど、完全に放置されていた。


バフリルの太った巨体が、じりじりと前へ迫る。ついにクリリーの背中が柱の壁にぶつかり、逃げ道が完全に断たれた。前触れもなく、男の太い人差し指がクリリーの胸骨に乱暴に押し当てられた。


「答えろ。ヴィオラはどこにいる?」そう告げる声は地を這うように低く、その眼光は強欲さに満ちていた。クリリーの胸元を押さえつけている指先が、別の標的を探すかのように、ゆっくりといやらしい動きで下へと滑り始める。


クリリーの肺は呼吸を忘れたかのように機能を停止した。全身の毛穴から冷や汗が噴き出す。込み上げてくる吐き気を必死に堪えたが、圧倒的な恐怖が彼女の両足を床にガッチリと縛り付けていた。完全に身動きが取れない。


「母さんに触るな、このゲス野郎!」


その叫び声が家の壁に反響し、部屋を満たしていた恐怖の空気を一瞬にして粉砕した。部屋の外には、肩で激しく息をするタカヒロたちカポック探索チームの姿があった。


バフリルの汚らわしい指の動きがピタリと止まる。彼は手を引っ込め、腰を抜かしてへたり込むクリリーから離れた。そして、その太った男はあまりにも余裕ぶった動きで振り返った。


目の前に待ち望んでいた獲物が立っているのを見た瞬間、彼の顔の脂肪の層が吊り上がり、歓喜の笑みが浮かび上がった。


「あぁ、やっと来てくれたか、可愛いお嬢ちゃん」


バフリルが囁く。できる限り優しく低くしたつもりだろうが、その声はまるで錆びたナイフを擦り合わせるような不快な音にしか聞こえなかった。


「私の時間はとても貴重なんだよ……。さぁ、お前の父親の借金を清算する準備はできているかな……今夜ここで?」


家の中の空気が根こそぎ奪い取られたかのような錯覚に陥る。誰も大きな音を立てて息をすることすらできない。バフリルの飢えたような視線は、一つの確かな事実を物語っていた。今夜、ヨト家にとってこの出来事がそう簡単に終わることはないだろう、と。

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