第44章:ささやかな願い
朝露と朝霧はついに跡形もなく蒸発し、じりじりと這い上がる真昼の灼熱に飲み込まれた。
太陽は今や頭の真上にあり、肌を焦がすような熱気を放ちながら、その下で活動する者たちの体から容赦なく汗を搾り取っている。
畑の片隅で、ヨトがついに最後の鍬を振り下ろし、新しい苗床を完成させた。
そこから少し離れた場所で、ヴィオラとクトリも汗ばんだこめかみを拭っていた。ウチへのイタズラ騒動が落ち着いた後、彼女たちはすぐに柔らかくなった土の上に残りの木灰を平らに均す作業に取り掛かっていたのだ。
一方、クトリはウチと共に最終段階の作業をこなしていた。一粒ずつ丁寧に稲の種を蒔き、保護のためにその上に乾いた藁を敷き詰めるというものだ。
骨の折れる一連の作業は、タカヒロが残した計算と指示通り、すべて順調に進んだ。
残された僅かな気力を振り絞り、彼女たちは農具を片付け、帰路につく準備を始めた。この緊急プロジェクトの成功を、一刻も早くあの青年に報告したかった。
しかし、村へと続く細い小道を歩く道中、突如として張り詰めた沈黙が一行の足取りを重くした。
誰一人として口を開こうとしない。疲労と、未だ完全に拭いきれない不安が入り混じり、舌が重く縫い付けられたかのようだった。
道の途中で、すれ違った何人かの村人が気さくに声をかけてきた。ヨトは足を止め、世間話に応じる。
ちょうどその時だった。ヴィオラの視界の端が、不自然な動きを捉えたのは。
薄暗く人けのない狭い路地の奥に、屈強な体つきをした男のシルエットがぼんやりと見えた。怪しげな身振りで、何かを偵察しているようだ。
ヴィオラの好奇心が即座に沸き立った。灰色の髪の少女が反射的に一歩踏み出し、真相を確かめようとしたその瞬間。
素早く伸びてきた手が、彼女の手首を力強く掴んだ。あの謎の男の存在に同じく気づいていたクトリが、ヴィオラを強引に後ろへと引き戻したのだ。
「軽はずみな行動はしないで。あの仮面の男が何者か、まだ分からないのよ」
その強い引き寄せと圧を伴った囁き声が、ヴィオラの追跡の意志を即座にへし折った。
彼女は息を潜め、今や空っぽになった路地に視線を固定する。ヨトが村人との立ち話を終えると同時に、彼女たちは頭の中に無数の疑問符を浮かべたまま、再び歩き出すことを余儀なくされた。
「どうして止めたの?」
ヴィオラは囁いた。その目は休むことなく、通り過ぎる民家の隙間を鋭く探っている。
「もし私が止めなかったら、お前はどうするつもりだったの。あの男をボコボコにする気? それとも、お前自身があの男の手にかかって犬死にするつもりだったわけ?」
「そんなつもりじゃないわ。ただ、あいつが誰なのか気になっただけよ」
「彼が誰なのかを知って、その後はどうするつもりなの?」
クトリからの容赦ない問い詰めが、ヴィオラの自尊心を的確に打ち砕いた。
何千本もの矢が、彼女の論理のド真ん中を射抜いたかのようだ。灰色の髪の少女は瞬時に口をつぐみ、反論の言葉を一つも見つけることができなかった。
姉の言うことは何も間違っていない。このようなグレーゾーンで軽率に動くことは、自ら死神の前に首を差し出すようなものだ。
ヴィオラは重いため息をつき、渋々その敗北を丸呑みするしかなかった。
◇◇◇
一方その頃。小屋と呼ぶのが相応しいようなヨト家の中では、真昼の熱気がさらに息苦しさを増していた。
室内の空気はひどくよどみ、まとわりつくように暑い。
タカヒロは竹の長椅子の上にぐったりと座り込んでいた。手で自分の顔を絶え間なく扇ぎ、こめかみを伝い落ちる滝のような汗を追い払うため、わずかな風を呼び込もうとしている。
竈のそばでは、クリリーが慌ただしく動いていた。
器用な指先が簡素な医療器具の間を行き来し、すっかり汚れ切ったタカヒロの包帯を替えるための新しい薬を調合している。
石臼で薬草をすり潰しながら、彼女は時折、台所の隙間から居間の方へ視線を送った。この過酷な室温のせいで、都会育ちの青年の顔に浮かぶ不快感と焦燥感がはっきりと見て取れる。
(……畑を救ってくれた恩人である彼に、こんな貧しいあばら家で辛い思いをさせてしまうなんて)
罪悪感がゆっくりと這い上がり、クリリーの心を蝕んでいく。彼女はひどく申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
薬草のペーストが完全にすり潰されたところで、クリリーは大きく深呼吸をした。そして、未だに手で顔を扇ぎ続けている青年の方へと静かに歩み寄った。
「あなたに不快な思いをさせてしまって、本当にごめんなさいね」
その唐突な言葉に、タカヒロは手を扇ぐ動きを止めた。反射的に振り向くと、中年の女性はすでに彼の左側に腰を下ろし、緑色にすり潰された薬草の入ったお椀をテーブルの上に置いているところだった。
「おばさん、何言ってんだ?」
「えっ!? だ、だって、ここにいるのが居心地悪いんじゃないの?」
クリリーは少し緊張した様子で瞬きをした。
「そんなこと一言も言ってねぇよ。ただ日差しが強すぎて、暑苦しいだけだ。」
「だ、だから……。」
「グダグダ言うのはやめろ。言い争う気はねぇんだ。俺が望んでるのは、この傷が早く治ることと、十分な休みを取れることだけだ。」
『治る』という言葉を聞いた瞬間、クリリーの専門家としての本能が刺激された。
かつてテロヴィア市で最高の治療師と呼ばれた彼女にとって、わざわざ許可を求めたり、青年が頷くのを待ったりするような無駄な時間は必要なかった。
驚くほど滑らかで熟練した手つきで、クリリーはハサミを入れ、タカヒロの古い包帯を解いていく。
大した痛みも与えることなく、乾き始めた傷口の上に薬草のエッセンシャルオイルを塗り込み、正確な手つきで一度だけ巻き上げると、清潔なガーゼで再び患部を覆い隠した。
その高度な医療行為は、わずか数秒のうちに完了した。
クリリーは指先を拭うと、タカヒロの両目をじっと見つめた。
「あなたの最初の望みは叶えたわ。次は二つ目の望み、『十分な休みを取る』ことね。私は何をすればいいかしら?」
タカヒロはすぐには答えなかった。彼の口角がゆっくりと吊り上がり、元の世界の快適な設備に対する郷愁に満ちた、薄い笑みを形作る。
「ベッドだ」
タカヒロの口から出たのは、ニヤリと笑いながら放たれたその一言だけだった。
「ベッド!?」
深く眉をひそめ、クリリーは困惑してオウム返しにした。
「あぁ! ぐっすり眠れるように、ふかふかのベッドが欲しいんだ」
生まれてこの方、硬い藁のゴザを敷いた木の寝台の上で眠るのが当たり前だったクリリーにとって、タカヒロの口から飛び出したその語彙は、ひどく耳慣れないものだった。
彼女の思考は完全に停止していた。ベッドと呼ばれるその物体の形はおろか、それが睡眠の質とどういう魔法のような関連性を持っているのか、全く想像すらできなかったのだ。




