第36章:露見
太陽の光がゆっくりと翳り、四人の少女たちの足取りを夕暮れのオレンジ色が優しく包み込んでいく。
彼女たちは土の道を並んで歩き、畑から帰る村の老人たちとすれ違うたびに、軽く会釈をしたり愛想笑いを浮かべたりしていた。
村の境界にそびえ立つ、鬱蒼と生い茂る大きなガジュマルの木を通り過ぎようとしたまさにその時。ケイトの足がピタリと止まった。
夕暮れの風が古い枝葉をゆっくりと揺らし、まるで昨日の記憶の欠片を彼女の頭の中に吹き戻すかのようだった。
ケイトは薄く奥歯を噛み締めた。母親の体を蝕む不治の病という残酷な現実が脳裏をよぎるたび、胸が締め付けられるような息苦しさに襲われる。
だが、その暗い感情に完全に飲み込まれてしまう前に、背後からの優しい声が彼女の意識を現実へと引き戻した。
「ケイト、どうかしたの?」
ヴィオラが心配そうに尋ねる。
ケイトは振り向かずに慌てて首を横に振り、その感傷を無理やり振り払った。
「なんでもない」
ケイトは顔を背け、誤魔化すように言った。
「もう少しで目的地に着くから」
赤髪の少女はわざと歩調を速め、ヴィオラの頭の中に残る疑問を宙吊りにしたまま歩き出した。
意地を張っているケイトをこれ以上問い詰めても無駄だと悟り、ヴィオラもついに折れて歩みを速め、親友の背中を追った。
「ねえ、本当はどこに行くつもりなの?」
ヴィオラが沈黙を破って尋ねる。
「行けば分かるわよ」
ケイトはそっけなく即答した。
好奇心をバッサリと切り捨てるような冷たい返事に、ヴィオラはついに口をつぐんだ。
ケイトの後ろをついて歩きながら、ヴィオラの視線は小道の左右に広がる景色へと向けられた。見渡す限り、村人たちの畑は青々と豊かに茂っている。
稲穂の群れは夕風に立ち向かうように真っ直ぐに伸び、区画された土を滑らかに分かつように用水路の水が流れている。その美しい田園風景が、逆にヴィオラの心を密かにえぐっていた。
植えられた直後に種もみが息絶えてしまう彼女の親の畑と比べると、その差はあまりにも残酷だった。
(あの人の計画が……どうか上手くいきますように)
他人の豊かな畑を前にして絶望に暮れる中、ヴィオラは昨晩タカヒロが考案した策に、残されたすべての希望を託していた。
「そういえば、ヴィオラ。昨日話したあの件、どうなったの?」
夕暮れの虫の音を切り裂くようなケイトの突然の問いかけに、ヴィオラはハッと我に返った。灰色の髪の少女は、親友の背中をじっと見つめる。次第に青ざめていくその顔には、恐怖と嫌悪感が入り混じったような影が落ちていた。
「分からない……。」
ヴィオラは掠れた声で答えた。
「私だって、あんなこと絶対にやりたくないよ」
ケイトは歩みを止めず、視線の端でヴィオラをちらりと見た。視界の隅に映る彼女の肩は、力が抜けたようにガックリと落ちている。あの暗い話題を再び持ち出されたことで、ヴィオラから瞬時に生気が失われていた。
「やっぱり。あんたなら、続けるのをためらうと思ってたわ」
ウチと一緒に黙って後ろをついて歩きながら、前を歩く二人の会話の意味が全く理解できずにいたクトリは、ついにしびれを切らした。
「ちょっと、あなたたち何を話しているのですか?どうしてそんなに深刻そうな顔を……。」
その不意な問いかけから、ケイトの頭の中で一つの決定的な結論が導き出された。
ヴィオラの両親、そしてヴィオラ本人でさえも、家族が抱える深い闇を未だに隠し通しているのだ。クトリは、地主に家族の首を絞められている天文学的な額の借金について、全く何も知らないのだ。
一方、ヴィオラの胸の奥では罪悪感が激しく渦巻いていた。何年もの間、彼女は姉の前でその腐りきった秘密を一人で飲み込み続けてきたのだ。
(でも……最初から打ち明けていたら、クトリ姉さんの心は絶対に壊れていたはずだ)
ヴィオラの脳内がフル回転する。真実が残酷すぎる形で爆発しないよう、最も安全な言葉の組み合わせを探り当てようとしていた。息苦しさを感じながらも深く息を吸い込み、ケイトがストレートに暴露してしまう前に、できる限り穏やかな声で話し始めた。
「あの、お父さんが……バフリル様のところで働いていた時に、失敗をしてしまったの」
ヴィオラはゆっくりと説明する。
「最高級のお米を、五袋も無くしてしまって……。」
「それで?」
クトリがすかさず言葉を挟む。彼女の目が細められ、肌を這うような嫌な予感が全身を駆け巡った。
「バフリル様から、ありえない額の賠償金を請求されたの」
夕暮れの空気が、突然凍りついたかのように重くなった。その地主の名前と賠償という言葉を聞いた瞬間、紫のドレスの脇で、クトリの十本の指が反射的に固く握りしめられ、指の関節が真っ白になっていた。
「お父さん、いくら払わなければならないのですか?」
クトリの問いかけは、一オクターブ高く跳ね上がっていた。
ヴィオラの唇が震える。言葉がまるで喉に刺さる棘に変わってしまったかのようだった。彼女は深くうつむき、虚ろな視線を小道の石ころに落とした。一定のリズムを刻んでいた足取りは、今や力を失ってズルズルと引きずられている。
前を歩くケイトは、その劇的な変化に気がついていた。白熱していく家族の問題に口を挟むまいと、彼女はグッと舌を噛んで黙っていた。
しかし、まるで処刑を待つかのように全てを諦めきった親友の姿を見ると、ケイトの胸の奥も締め付けられるように痛んだ。
拷問のような沈黙が数秒間続いた後、ヴィオラの口から信じられないほど細い声が漏れた。
「……百三十四万五千ルピア」
ドクンッ!
その数字は、真昼の青天の霹靂のごとくクトリの鼓膜を打ち据え、彼女の鳩尾を正確に貫いた。その額は、あまりにも残酷な不可能を意味していた。
父親の少ない稼ぎでは、年老いた体がどれほど粉骨砕身して働こうとも、その首を絞めるような途方もない負債を完済することなど絶対に不可能だと、彼女は痛いほど分かっていた。
妹の華奢な背中を見つめながら、クトリはギリッと歯を食いしばった。どす黒い怒りが、頭頂部の裏側で煮えたぎり始める。
「お父さん、すでにいくら支払ったのですか?」
その鋭い追及が投げかけられた瞬間、ヴィオラの歩みは彫像のように完全に停止した。視線は地面に落とされたままだったが、目尻にはあっという間に涙の泉が溜まり、声を上げることもなく静かにこぼれ落ちていく。
すぐ後ろを歩いていたクトリも、立ち止まらざるを得なかった。彼女は叱責することも触れることもしないまま、ただゆっくりと小刻みに震える妹の肩を釘付けになったように見つめていた。
「お父さん払えなかったの……。」
ヴィオラは、深い悲しみを帯びた掠れ声で打ち明けた。
「その代わりに、バフリル様は……自分の汚らしい欲求を満たすように、私に要求してきたの」
感情の防波堤が決壊した。ヴィオラがこれ以上すすり泣きを我慢できないと悟ったケイトは、すぐさま素早い行動に出た。体を反転させ、姉妹の間に割って入るように立ち塞がる。
「クトリ姉さん、もうやめてこれ以上、余計なことでヴィオラを追い詰めないで」
しかし、すでにクトリの頭に燃え移った業火は、彼女を周囲の声に耳を貸さない状態にさせていた。眼光は鋭く研ぎ澄まされ、殺意に満ちた怒りで燃え上がり、泣きじゃくる妹の姿をロックオンしている。ケイトの庇うような警告など、完全に無視された。
「あのクソジジイに、何度抱かれたのですか?」
「やめろって言ってるでしょ!下らない質問を続けるのはやめなさい!」
ケイトが素早く言い返す。普段怒っている時よりも遥かに凄みのある、毅然とした声だった。
クトリの額に、青筋がピキッと浮かび上がる。彼女は顔を上げ、妹の肩越しに殺意に満ちた視線を放ち、ケイトの目を真っ直ぐに射抜いた。
彼女の信念において、血の繋がりのない部外者が、この家族の問題に爪の先ほどでも干渉する権利などないのだ。
「お前が口出しするな、邪魔だ!これは私と家族の問題です。あの子が今まで隠してきた秘密をすべて知る権利が、私にはあるのです!」
「あんたが本当に家族を大事に思ってるなら、どうして毎週、毎月仕送りをしなかったのよ?あんたが定期的にお金を送って支えていれば、ヴィオラがこんな目に遭う必要なんてなかった!」
チェックメイト。
クトリの肺から、空気が根こそぎ吸い取られたようだった。その容赦のない鋭い言葉は真っ直ぐに突き刺さり、彼女の良心をズタズタに引き裂いた。口は固く閉ざされ、反論の言葉を完全に失う。
ケイトから叩きつけられた現実は、あまりにも決定的だった。何年もの間、彼女は村に家族を置き去りにして都会へ出稼ぎに行き、自分の世界に没頭するばかりで、一度たりとも便りを送ることも、わずかな金銭を援助することもなかったのだから。




