第34章:温かな団欒
ユーカリとミントを混ぜ合わせた蒸気が、未だに色濃く空気中を漂っていた。
鼻腔の奥をツンと刺すほどの強烈な香りが、時折息を止めたくなるような刺激と息苦しさを部屋にいる全員に強いていた。
それでも、誰一人としてその場を離れようとはしない。四人の少女たちと一人の年配の女性は元の位置に留まり、クリリーとヴィオラが調合した薬草に僅かな希望を託していた。
専門の医者のような正確な分量でなければ、薬の効き目が最大限に発揮されないことなど百も承知だ。だが、今の彼女たちにはこれしかなかった。
全員の視線は、木製の寝台の上で硬直したまま横たわる青年に注がれていた。正座や胡座で長時間座り続けているせいで足は痺れ、時折姿勢を変えては痛みを誤魔化すしかない。
「お願い、目を覚まして……。」
ヴィオラがかすれ声で呟く。その声は不安で微かに震えていた。彼女は両手を胸の前で固く組み、指の関節が白くなるほど強く握りしめる。
ギュッと目を閉じ、ひたすらに祈りを捧げていた。
「私たちは、あなたが戻ってくるのを待ってるんだから……。」
その右向かい。左隣のクトリと肩を並べるようにして、ケイトは無言で座っていた。だが、ヴィオラの唇から漏れた祈りの震えは、嫌でも彼女の耳に届いていた。
いつものように憎まれ口や皮肉を叩く代わりに、ケイトは奥歯を噛み締めた。その眼差しは、どこか柔らかい。沈黙の中で、彼女もまた見知らぬ青年のために同じくらい強く祈りを捧げていたのだ。
(早く目を覚ましなさいよ。ヴィオラだけじゃない……あたしたちだって、あんたが必要なんだから)
ケイトは心の中でそっと呟いた。
狭い部屋から天へと届いたその祈りに応えるかのように、小さな奇跡が起きた。タカヒロの人差し指の先がピクリと力なく動き、続いて乾ききった唇の隙間から、掠れた呻き声が漏れたのだ。
その微かなサインは、全員をハッとさせるには十分すぎるものだった。
沈黙を破って真っ先に動いたのはケイトだった。彼女は弾かれたように身を乗り出す。
タカヒロのすぐそばに寄り添うと、素早く彼の背中に腕を回し、ゆっくりと体を起こすのを手伝った。
「まだ痛むなら、無理して起き上がらなくていいわ。」
ケイトの声はいつもと全く違っていた。目を覚ましたばかりの相手を驚かせないよう、意識してできる限り優しく、穏やかに紡がれた言葉。
だが、そんな忠告も今のタカヒロの耳には入っていなかった。荒い息を吐きながら、彼の両目は部屋の左から右へと激しく泳いでいる。
オウィから受けた強烈な一撃の余韻と、まだ完全には塞がっていない古傷のせいで、頭がガンガンと痛む。自分を取り囲む顔ぶれを見渡す。そこには、全く見覚えのないクトリの姿もあった。
「俺……どうなったんだ?」
タカヒロは震える声で尋ねた。全身を走る痛みに顔をしかめる。「どうして皆、そんな顔で俺を見てるんだ?」
混乱しきったその問いが宙に浮く。クリリー、ヴィオラ、ウチ、そしてクトリは顔を見合わせ、何から説明すればいいのか戸惑っていた。
その反応の薄さを見て、ケイトが口を開いた。
「何も覚えてないの。自分がどうなったのかも?」
けさ。その言葉が、タカヒロの脳内の歯車を無理やり回し始める。記憶はまだぼやけた欠片のままだ。
覚えているのは、無意識の底に閉じ込められ、遠くから三人の少女と一人の年配の女性のシルエットが自分を取り囲んでいるのを見ていた、あの奇妙な感覚だけだった。
ますます眉間を寄せて混乱するタカヒロを見て、この家で最年長のクリリーが助け舟を出すことにした。
彼女は立ち上がり、喉を潤す薬草を少し混ぜた温かいお茶が入った素焼きのコップを手に取った。
「あなたは畑に向かおうとした時、オウィさんにひどく殴られたのよ」
クリリーは落ち着いた、しかし慎重な口調で説明した。
薄く湯気が立つ温かいコップをタカヒロの前に差し出すと、クリリーは一歩下がり、再び娘の隣に静かに腰を下ろした。
「オウィさん……。」
タカヒロは戸惑いながらその名を口にした。その名前が引き金となり、意識を刈り取られる直前の記憶のフラッシュバックが脳裏をよぎる。
「そうよ。この村で一番恐れられてるゴロツキ」
ケイトが暗い顔で言葉を継いだ。「村人はみんなアイツに怯えて逆らえないの。だから、あんたがアイツに絡まれてても、誰も助けようとしなかったってわけ」
オウィについての明確な説明を聞き、タカヒロの頭に残っていた混乱が霧散していく。
それと同時に、別の記憶の欠片が一気に蘇ってきた。昨晩、自分が周到に練り上げていたあの秘密の計画のことが。
「ケイトさん……。」
その無謀すぎる思考を先読みしていたかのように、ケイトは容赦なくタカヒロの言葉を遮った。
「あんたの体が完全に回復するまで、計画は一旦保留よ」
「ケイトの言う通りだよ」
ヴィオラがすかさず同調した。灰色の髪の少女は立ち上がり、ケイトのそばへと少しだけ距離を詰める。「余計な問題を起こさないためにも、今は計画を見送った方がいい」
タカヒロは言葉を失った。フィルターを一切通さずにぶつけられた、過保護なまでの小言と気遣いの数々が、彼の胸の奥を激しく打ったのだ。
光の女神と共に過ごしたあの不思議な時間以来、二度目となる感情の決壊。熱いものが込み上げ、目頭が熱くなる。
ほんのわずかな距離に座っていたケイトは、青年の表情の変化にすぐに気がついた。みるみるうちに涙ぐんでいくその目が、はっきりと見えた。
反射的にケイトは眉をひそめ、首を後ろに引いた。突然泣き出しそうになった彼を見て、まるでドン引きしているかのようなジェスチャーを作る。
「なんで泣いてんのよ?」
ケイトがぶっきらぼうに尋ね、せっかくの感動的な空気を一瞬でぶち壊した。
「ち、違う」
タカヒロはどもりながら答えた。バレたことに焦り、慌てて服の袖で両目をゴシゴシと乱暴に擦る。「泣いてなんかない!目にゴミが入っただけで……だから泣いてるように見えただけだ」
そんな安っぽい古典的な言い訳が通用するはずもない。タカヒロが見栄を張って嘘をついていることを完全に察しているヴィオラは、ゆっくりと口角を上げた。その顔には、悪戯っぽい意地悪な笑みがはっきりと浮かんでいる。
「なんだよ、その目は?」
タカヒロは再び尋ねた。胸の中で爆発した痛みと恥ずかしさ、そして感動が入り混じり、声の防波堤が崩れかけて少し震えている。
しかしヴィオラは答えようとしない。むしろからかうような視線を強め、タカヒロが一人で勝手に照れて焦るのを面白がっていた。
少しずつ、先ほどまでの硬く沈み込んでいた空気が、この質素な家の中に自然と溢れ出す温もりへと変わっていく。
そのやり取りを見ていたクリリー、クトリ、そしてウチの三人は、もはやこらえきれずに微笑みをこぼした。目の前で繰り広げられる滑稽な寸劇を楽しみながら、クスクスと小さく笑い声を上げる。
そうして、あっという間にケイトとヴィオラは新しいおもちゃを見つけた。二人は立て続けにタカヒロをからかい、彼が自分自身の感情から逃げる隙を一切与えなかった。




