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現代知識で異世界村を救う  作者: バクリ


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第11章:災難なハプニング

ヴェリア村特有の、昼前に吹く涼しい風。しかし、このボロ屋を包み込む絶対的な静寂は、タカヒロにとってむしろ苦痛だった。考える余白を与えられすぎてしまうからだ。


ジョーが家を出て行ってからというもの、彼は深い困惑の中に取り残されていた。ただ硬直したまま横たわり、蜘蛛の巣が張った木張りの天井を虚ろに見つめることしかできなかった。


どうしてこんな狂った状況に陥ったのか。必死に記憶の糸をたぐり寄せる。


ベリンダに聞きたかったが、彼女を探しに動けるような状態ではない。


「どうして……。」


掠れた、乾ききった声が漏れた。


「俺、なんでこんな所にいるんだ?」


無だ。過去の記憶の欠片すら、完全に引き出すことはできない。頭に浮かぶのは、『現代から来たゲーマー』というおぼろげなアイデンティティだけ。それ以外は、真っ暗闇だった。


白いポータルに吸い込まれる前の記憶を掘り起こそうとすればするほど、見えないハンマーで頭蓋骨を何度も殴られているような、激しい頭痛が襲ってくる。


これ以上考えても無駄に痛みを伴うだけだと悟り、タカヒロは記憶を辿るのを諦めた。そして、もっと現実的な問題へと意識を切り替える。自分の体を動かすことだ。


まずは手首。それからゆっくりと、脳からの指令を脚の筋肉へと伝えていく。


途端に、全身の神経を突き刺すような激痛が走った。だが、気にはしていられない。耐え抜いて抗うしかない。


(……このまま、寝たきりなんてごめんだ)


痛みに息を殺しながら、心の中で悪態をついた。


(なんとかしないと)


ミリ単位の痛みを伴う闘いは、やがて実を結び始めた。電流が走ったように全身が激しく震えていたが、なんとか背中を持ち上げることに成功した。無理やり上体を起こし、残されたわずかな力を振り絞って、今度は立ち上がろうとする。


荒々しい息遣い。心臓は通常の二倍の速さで血液を送り出し、爆音のように鳴り響く。


冷や汗が毛穴から噴き出し、こめかみを伝い落ちる。思わずうめき声を上げそうになるのを、青白い唇を強く噛み締めて必死にこらえた。


生まれてから今日まで、ここまでリアルで過酷な肉体的苦痛を味わったのは初めてだった。


(俺は……絶対、立ってやる……!)


部屋の片隅、台所に続く廊下で、ベリンダの足がピタリと止まった。居間の光景に、彼女は息を呑んだ。


そこには、白髪の青年が両脚をガクガクと震わせながら、必死に立ち上がろうとする姿があった。


包帯に巻かれた体はコントロールを失ったように震え、巻かれた白い布はすでに汗で滲んでいる。痛みに耐えるような、胸を締め付けるうめき声が微かに聞こえてきた。


母性本能が悲鳴を上げ、今すぐ駆け寄ってあの脆い体を支えてあげなさいと急かしてくる。しかし、どういうわけか足が床に縫い付けられたように動かない。青年のその執念とも言える姿に、ただ圧倒されていたのだ。


彼女は、タカヒロの朝食である茹でトウモロコシと切ったキャッサバを乗せた土皿を両手で持ったまま、その場に立ち尽くしていた。


開け放たれた玄関から、そよ風が忍び込んでくる。タカヒロの挑戦はまだ続いていた。


失敗し、また挑み、崩れそうになりながらも膝を伸ばそうとする。現実世界では自室でダラダラと過ごすことしか知らなかった彼だが、この世界のルールが違うことくらい理解していた。ここでは天涯孤独。家族も、友人もいない。


これは、彼の精神と肉体に対する残酷な試練だ。もし適応できず、ただ横たわっているだけなら、死神は喜んで彼を迎えに来るだろう。


今にも崩れ落ちそうなタカヒロの足元を見て、ついにベリンダの堪忍袋の緒が切れた。


胃に何も入れていない状態で、これ以上彼に無理をさせるわけにはいかない。ベリンダはゆっくりと足を踏み出した。


まるで空気をすり抜けるような、音のない、滑らかな足取りだった。


だが、彼女がタカヒロの背後にぴったりと辿り着き、食事をとるよう声をかけようとしたその瞬間。ベリンダが避ける間も無く、小さな大惨事はあっけなく幕を開けた。


限界を迎えていたタカヒロの両脚が、ついに悲鳴を上げたのだ。バランスを取ろうと彼が体を捻った瞬間、両膝の力が完全に抜け落ちる。


そのまま体は崩れ落ち、真後ろに立っていたベリンダにのしかかるようにして倒れ込んだ。


ガシャンッ!


ベリンダの手から土皿が滑り落ち、床に激突して粉々に砕け散った。キャッサバとトウモロコシの粒が、もつれ合って倒れた二人のすぐ脇に散乱する。


平和で静寂に包まれていた朝の空気は、一瞬にして極度の緊張と気まずさへと一変した。


倒れ込んだ体勢が、最悪だった。


パニックの中、咄嗟に支えを求めたタカヒロの両手は、あろうことかベリンダの胸の、最も敏感な部分に正確に着地してしまったのだ。


衝撃による目眩を耐えるため、タカヒロは薄緑色の瞳をぎゅっと閉じていた。しかし、指先の防衛本能は勝手に作動してしまう。反射的に、手のひらの下にある対象物を強く握りしめた。


未知の感触が、タカヒロの神経を直撃した。


押し返してくるような、ゼリーのように弾力のある柔らかさ。さらにヤバいことに、彼女の服の下には、分厚い布や下着の感触が一切ない。


手のひらのど真ん中で、肌と肌が擦れ合い、一対の小さな突起が硬く尖っていくのがはっきりと感じ取れた。


目を開けるまでもない。思春期真っ盛りの脳内は、今自分が何を握りしめているのかを即座に弾き出した。


疲労で荒くなっていたタカヒロの呼吸が、別の意味で乱れ始める。それは、脳を麻痺させるようなアドレナリンの急上昇によるものだった。


こめかみから噴き出す汗の量がさらに増す。砂を飲み込むように重くなった喉の奥で、喉仏がゴクリと上下に動いた。


下敷きになったベリンダは、完全にフリーズしていた。心臓の鼓動すら止まったかのように。顔は耳の先まで真っ赤に染まっている。


上下の唇を交互に噛み締め、タカヒロの胸に添えた両手で、彼を突き飛ばそうと力を込めようとした。


しかし、その力が集まるよりも一瞬早く、青年の指が彼女の胸を揉みしだいたのだ。


その電撃のような刺激に、ベリンダの理性は大きく揺らいだ。


「ひっ……ぁ……。」


甘く、抑えきれない吐息が唇から漏れる。彼女は目を丸くし、自分の上に馬乗りになる形になっている青年の顔を直視できず、思わず横に顔を背けた。


さらに、不幸はそれだけでは終わらなかった。


密着した服越しに、下腹部のあたりで、何かがゆっくりと熱を持ち、硬く反り上がりながら彼女の股間へと押し当てられてくるのをはっきりと感じた。青年の生理的な反応が、制御不能なまま暴走していたのだ。


状況が完全に一線を越えていることを悟り、ベリンダの胸中でパニックが爆発した。


残された全精力を振り絞り、彼女は両腕でタカヒロの体を右側へ思い切り突き飛ばした。青年はそのままゴロンと床へ転がり落ちる。


一秒たりとも無駄にせず、ベリンダは顔を火のように赤くしたまま飛び起き、猛ダッシュで寝室へと向かい、古びた仕切りの奥へと姿を消した。


散らかった居間に、タカヒロは一人取り残された。


床に力なく横たわり、かすかに目を開けて天井をぼんやりと見つめた後、再びまぶたを重く閉じた。


先ほどのベリンダの強烈な突き飛ばしによって、背中がコンクリートの床に激突し、全身の痛みが一斉に目を覚ましていた。


それ以上に、凄まじい罪悪感が彼の胸を押し潰そうとしていた。自分の不注意を激しく後悔し、謝罪の言葉を叫びたかった。


しかし、彼の体はとうに限界を突破していた。


舌は痺れ、起き上がるどころか、声を絞り出すことすらできない。結局、タカヒロは冷たく古い床に倒れたまま、全身を苛む激痛と、どうしようもない羞恥心にただ生きたまま呑み込まれることしかできなかった。

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