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まぶしいし、いろいろ失礼だし、玉子寿司は光るし!!

港町『ラファクタ』。


白と青を基調とした建物が並ぶ、美しい街だ。

空は青く、さんさんと照りつける日差しが、海を輝かせる。

商店街には鮮度のいい魚介が並び、街行く人々の顔は明るい。


ピエロが5つのボールを器用に投げ、子供たちがそれを見てはしゃぐ。


イルカのオブジェ、波の音、鼓笛隊の音楽、そして潮風に



───私はしかめっ面をした。


「・・・まぶしすぎる・・・」

「そんな顔しないの!」


げっそりした私を見て、リリアが怒る。

「そりゃ森の中とは違うよ。でもランナの意思でここまで来たんだからね!」


そう。これは私のわがままだ。




ジャスを振り切って小屋に戻ったあの夜、私は突然、旅立つ決意をした。


「リリア、私、旅に出るよ」

「え?何言ってんの?」

リリアは心底驚いた様子だった。


「・・・あいつらを追いかける。ごめん」

「え?え?」

「この小屋はリリアにあげるよ。わがまま言ってるのはわかってる。でも」

「あいつらって・・・?」

「今日昼間来た勇者たちだ。なんだか、何かが動く予感がする」


リリアは顎に手をあて何かを考え込んでる様子だ。


「・・・一人で行くの?」

「うん。リリアを巻き込む事は出来ないし。」


私はトランクケースも持っていないし、考えてみれば荷物も何も無い。

着の身着のままここを出て行くつもりだ。


「ランナ一人で旅に出れるの?ご飯は?どうせナッツとドライフルーツ生活に戻っちゃうでしょ。

それに、無事追いついたらどうするつもり?」


う・・・。

言葉に詰まる。


「あいつらに”仲間に入れて”って言うの?言えるの?言いたいの?」

言い返せない私に対し、リリアは詰めてくる。


リリアの言葉に、高ぶる心は一瞬冷静になった。

一人では生活が成り立たない。しかも旅なんて、ハードルが高すぎる。


私は床を見つめ、呟く。

「・・・わかった。あきらめ・・・」



「だから、アタシもついてく!」



「え?」

私は顔を上げ、リリアを見た。


「アタシがいれば、宿屋の予約だって出来るもん。

食事だって用意できるし、服がボロボロになったら買い替える事も出来る。

近くの町すら行かないランナが、旅先でちゃんとやっていけるとは思えないもん」


いたずらっぽく笑みを浮かべるリリアに、私はまた、うう、と唸った。


「でも、私の気まぐれにリリアを巻き込むのは・・・」

「なーに言ってんのよ!うちらは一蓮托生でしょ!!」



それから一週間かけて

常連客の方たちに挨拶をして、店を閉じ、私たちは旅に出た。



彼らがどちらの方向へ向かったか、それは占いで簡単にわかった。

そして私とリリアは、勇者たちの・・・


「ストーキング成功だね!」

「・・・うん。いや、ストーキングじゃないけど。」


リリアはいつも着ていた深緑色のワンピースを脱ぎ捨て、腹が見える短いTシャツに、ミニスカートを履いている。

化粧もばっちり、どこからどう見ても『ギャル』だ。


「あいつらに見つかると厄介でしょ。

ユーシャって人は絶対茶化してくるよ。だから変装しないと!」


確かにそうだ。

そうなんだが。


私の変装は、スーツの上からポンチョ、そして金髪の巻き髪ウィッグ。

視力が悪いのでメガネは外せない。

一体何系を目指してんだ、とツッコミたくなるほど”ちぐはぐ”な恰好だ。


「ねーねー君たち、何してんの?良かったらメシとかどう?」


ユーシャと張り合えるくらいのチャラい男が声をかけてくる。

ナンパというやつだ。


「はー?ごめーん!アタシ、イケメンしか興味ないから無理ー。」


人付き合いに慣れているリリアは、辛辣な言葉で追い払う。


これで何回目だろうか。

リリアが可愛いから?それともミニスカートだから?それともこの町が都会だから?

私にはわからない。


「・・・もう一人のアレ、女装じゃね?男だよな。」


去って行くナンパ師たちの内緒話。

しっかりと聞こえてんだよ。



海の見える広場、そこに勇者御一行がいた。

掲示板を見ながら雑談をしている。

私は建物の影から、彼らの様子を伺っていた。


「ねぇ、そんなにジャスっていう人が気になるの?」

リリアは私に問う。


「気になると言えば気になる。」

「女っ気の全く無かったランナが、まさか恋に落ちて、森の中から飛び出ちゃうなんて。」

「そうじゃないよ。だってかわいそうじゃないか。

仲間に劣等感を感じながら旅を続けるなんて。それは修行じゃない、苦行だ。」



ユーシャのでかい声は、少し離れたここまで聞こえてくる。


「・・・そういえばなんだっけ、あの占い師ラン・・・ラン・・・ランチャー?

あいつスゲー生意気だったよな。俺、勇者だぜ?世界を救う存在よ?」


あのやろう。

私はバイ〇ハザードの隠し武器じゃねぇよ。


「っつーか。イカサマの方法見抜きたかったなー。ポーカーに使えそうじゃね?」


ユーシャのぼやきに、レイナが呆れ顔で答える。

「占いにイカサマ使う必要なんてないわよ。」


「アゲ鑑定してるから評判いいんだろ、どうせ。出すカードは最初から決まってんだよ」


レイナは顎に指先をあて、ん-、と考える。

「だったら当たるって言われないでしょ?」


キースは黙ったまま掲示板を見つめ、ジャスは港に停泊中の船の向こう、水平線を眺めていた。

各地の掲示板には、冒険者への依頼が書かれた張り紙がある。


「ユーシャ、これを見ろ。依頼だ。」

キースは静かに一枚の張り紙に指をさす。



───近くの草原に狂暴な熊が現れて困っています。

討伐してくれた冒険者様には賞金10万ゴールド。町長より。



「うおお!!いいじゃん!!10万は俺のもんだぜ!さっそく行こうぜ!!」


ユーシャは一人騒いで、町の外へ走っていった。


「あちゃ・・・行っちゃった。」

「レイナ、ジャス、俺たちも行くぞ。」


彼らもユーシャを追って走っていく。

全員、私とリリアの前を通り過ぎて行った。

意外と気づかないもんだな。


「熊ねぇ・・・」

「さすがに、倒せるでしょ。自称『勇者』だし、仲間もいるんだしさ。」

リリアは肩をすくめる。


「どうだろうね。私たちも行ってみよう。」



町を出て、海沿いの草原の中、舗装された道を歩く。

その道は二つに分かれていた。


「どっちに行ったんだろ?」

「どうせそんなに離れてないだろう。近くまで行けば、あの騒がしい声が聞こえるはずだ。」


その時


「ウワァーー!!」

男の声が聞こえた


私たちは顔を見合わせ、声のした方向へ駆け出す。



草原の端っこ、そこは小さな崖になっていた。

海に沿った崖ではないが、崖の下は谷になっている。

ユーシャは足を滑らせ、そこに落ちたらしい。


「いってぇ!!足ひねった!!」

ユーシャのわめき声が響き、レイナ、キース、ジャスもその崖の下に用心深く降りる。


私たちは崖の上で身をかがめ、彼らの様子を見る事にした。


レイナがユーシャの足首に手をあてると、淡い緑色の光がふわりと灯った。

治癒魔法だ。


「はい、治ったわよ」

「ありがとうレイナ!さすが俺の女だぜーー!!」


ユーシャはレイナに抱き着こうとしたが、あっさりかわされる。


「・・・ユーシャ。お前が騒ぐから」

キースが大剣を抜く。


「あ?」

「耳をすませ。」


グルルル・・・


獣の唸り声が聞こえる。


「まっさか、俺の10万ゴールド!?」


ユーシャのはしゃぐ声に反応し、うわさの『狂暴な熊』が姿を現した。



「さぁて、お手並み拝見だ」

私とリリアは身をかがめて谷を見下ろし、のんびりと高みの見物を決め込む。


しかし。


「オラァ!くらいやがれ!ユーシャスラッシュ!!」


技の名前(?)を叫びながら、自称勇者は剣をぶんぶん振り回す。

一撃も当たることはない。


熊はその大きな図体には予想もつかない素早い動きで、ユーシャとキースを鋭い爪で薙ぎ払う。


レイナは二人に駆け寄り治癒魔法をかけ、熊はジャスの目の前に立った。

いや、───ジャスが彼らをかばうよう、前に出たのだ。


(・・・ジャス!!)


ジャスは槍を構える。

だが、敵うとは思えない。


「もうダメだ、見ていられない!」

ウィッグを剥ぎ、飛び出そうと片膝をつく。


だが、リリアが止めた。


「リリア!このままでは・・・!」

「ランナが飛び出してどうするの?どうなるの?あの熊に勝てる?」

「でも!」


リリアはポケットに手を突っ込み、何かを取り出した。

「これを握って、念をこめて。」


手渡されたのは・・・玉子寿司のキーホルダーだった。


「はぁ!?冗談言ってる場合じゃ───」

キーホルダーと谷底とリリアの顔を、順番に見る。


「これは冗談じゃないの!いいから、早く!」


よくわからないが、リリアの気迫に負け、手の中の玉子寿司に念じる。


玉子寿司は紫色に光りだした。


「うわっ!!」


その光はあっという間に大きくなり、私の体を包んだ。

まとっていた黒いスーツが糸のようにほどけ、光が巻き付いていく。



「これで大丈夫!ランナ、思いっきり暴れておいで!」

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