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「反応しない猫」

小話

「反応しない猫」


午後。


住宅街の外れにある空き地。


草が風に揺れ、

遠くではカラスの鳴き声が聞こえていた。


ミルは空き地の真ん中で、

なぜか真剣な顔をして立っている。


その手には、

ふわふわした猫じゃらし。


ノワは少し離れた場所で、

嫌そうな顔をしていた。


ノワ

「……で?」


ノワ

「今度は何始める気なのよ」


ミルは猫じゃらしを掲げる。


ミル

「今日は実験です!」


ノワ

「嫌な予感しかしないわ」


ミル

「猫じゃらしテストです!」


ノワ

「もっと意味分からないわよ」


ミルはふふんと得意げに胸を張る。


ミル

「猫としての本能が残っているのか!」


ミル

「今ここで明らかになります!」


ノワ

「別に明らかにしなくていいのよ」


ミルは早速、

猫じゃらしをぶんっと振った。


シュッ


ふわふわした先端が左右へ揺れる。


ミルの目も、

一緒に左右へ動いていた。


シュッ


シュッ


ミル

「おおー……」


ノワ

「自分が一番反応してるじゃない」


ミル

「ドキワクです!」


ミル

「次!」


ミルは勢いよくノワの前へ移動する。


ノワ

「ちょ、近――」


シュッ


猫じゃらしが目の前を横切った。


ノワの目が、

ぴくっと揺れる。


ミル

「……」


ノワ

「……」


ミル

「追いましたね」


ノワ

「追ってない」


ミル

「今ぴくってしました!」


ノワ

「してないわよ!」


ミル

「しました!」


ノワ

「してないって言ってるでしょう!!」


耳を赤くしながら怒鳴るノワ。


ミルは満足そうに頷いた。


ミル

「なるほどなるほど」


ノワ

「何がなるほどなのよ」


ミル

「次!」


今度はナナの前へ向かう。


ナナは不思議そうに首を傾げていた。


シュッ


ふわふわが目の前で揺れる。


ナナ

「わぁ……」


ナナの目がきらきらする。


ふわふわを目で追いながら、

少し身体まで揺れていた。


ナナ

「ふわふわしてる」


ミル

「かわいい反応です!」


ナナ

「えへへ」


ノワ

「何の評価よそれ」


ナナは楽しそうに、

もう一度ふわふわを見つめる。


ナナ

「なんだか触りたくなるわねぇ」


ミル

「分かります!」


ノワ

「分かりたくないわ」


ミルは勢いよく振り返った。


ミル

「そして最後!」


ルナは少し離れた場所で、

いつものように静かに立っていた。


ルナ

「嫌な予感しかしないわ」


ミル

「ルナはどうでしょうか!」


ミルは自信満々に、

猫じゃらしを振る。


シュッ


ルナ

「……」


無反応。


ミル

「……」


もう一度振る。


シュッ


ルナ

「……?」


ミル

「……」


ノワ

「……」


ナナ

「……」


空気が妙に静かになる。


ミル

「も、もう一回!」


シュッ


シュッ


ルナ

「さっきから何してるの?」


ミル

「反応してください!」


ルナ

「なんで?」


ミル

「猫だからです!」


ルナ

「意味が分からない」


ノワ

「……」


ノワ

「この人ほんとに猫なの?」


ルナ

「失礼ね」


ミルは真剣な顔でルナを見る。


ミル

「ルナ」


ルナ

「何?」


ミル

「猫じゃらしですよ?」


ルナ

「見れば分かるわ」


ミル

「楽しいですよ?」


ルナ

「別に」


ミル

「そんなぁ……」


ミルは焦ったように、

猫じゃらしをぶんぶん振り始めた。


シュッシュッシュッ


ルナ

「私はね」


シュッ


ルナ

「子供じゃないのよ」


その瞬間――


パシッ


猫じゃらしの先端が、

綺麗にミルの顔へ直撃した。


ミル

「あテッ!」


ノワ

「やっぱり自分には当たるのね」


ナナ

「ふふっ」


ルナ

「……器用ね」


笑い声が、

静かな空き地へ広がっていった。


終わり

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