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「しー」

小話

「しー」


夕方。


窓の外では、

オレンジ色の光がゆっくり揺れている。


静かな部屋。


カーテンが風でふわりと動く。


部屋の中央。


大きなベッド。


その上で、

女性が静かに眠っていた。


穏やかな寝顔。


規則正しい呼吸。


ミルはベッドの上に乗り、

そろーっと顔を近づける。


じーっ。


じーーっ。


ベッドの下から、

小さな声がした。


ノワ(小声)

「ミル」


ミル

「ノワ」


ミルは眠る女性を見たまま言った。


ミル

「この人」


ミル

「生きてます」


ベッドの下から呆れた声。


ノワ

「寝てるだけよ」


ミル

「なるほど」


ミルは真面目な顔で頷く。


少し考える。


ミル

「でも」


ミル

「全然動きません」


ノワ

「寝てるんだから当たり前」


ミル

「確認します」


ノワ

「やめなさいって」


ミルは聞いているのかいないのか、

さらに顔を近づける。


ひくひく。


鼻を動かす。


その時――


ミルの尻尾が


ぶん


後ろで揺れた。


机に当たる。


カタン


二匹

「!」


空気が止まる。


ミルはベッドの上で固まり、

ノワはベッドの下から顔だけ出したまま硬直した。


女性は――


動かない。


静かな寝息だけが続く。


ミルはそーっとベッドの下を見る。


ミル(小声)

「セーフです」


ノワ

「セーフじゃない」


ノワは小さな声で即座に返した。


ミルは再び部屋を見回す。


夕日に照らされた部屋。


ふかふかの絨毯。


綺麗な机。


柔らかそうなカーテン。


そして――


大きなベッド。


ミル

「ノワ」


ノワ

「何」


ミルはベッドの端から下を覗き込む。


ミル

「このベッド」


ミル

「高いです」


ノワ

「今さら?」


ミルは端っこから下を見る。


思ったより高い。


ミル

「降りるの」


ミル

「ちょっと怖いです」


ノワ

「さっき飛び乗ったでしょ」


ミル

「その時は」


ミル

「ドキワクでした」


ノワ

「静かにしなさい」


ミルは口元に前足を当てる。


ミル

「しー」


ノワ

「それ私の台詞」


ベッドの下から、

ノワのため息が聞こえる。


ノワ

「いいから降りなさい」


ミルはこくりと頷く。


慎重に体を動かす。


その時――


ベッドの下で、

ノワの前足が机の脚に当たった。


さらにその振動で、

机の上の小さな置物が揺れる。


コトン


二匹

「!」


また空気が止まる。


ミルの耳がぴんと立つ。


ベッドの下では、

ノワの尻尾も硬直していた。


二匹は恐る恐る、

女性の方を見る。


女性は――


動かない。


すぅ……すぅ……


静かな寝息。


ノワはほっと息を吐く。


そして少し顔を赤くしながら、


小さく言った。


ノワ

「……しー」


ミルはぱっと顔を上げる。


得意げなドヤ顔。


ミル

「私の台詞です!」


ノワ

「声が大きい!」


二匹はまた同時に固まる。


部屋には、

静かな寝息だけが流れていた。


終わり

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