46話 自己防衛
―自分を守るための行動―
そんな聖人じゃない、本当にその通りだ
この子のことも認めている、本当にこれっぽっちも嫌いではないし、殺したいとかも思わない
ただ、怖かった
この事がもしバレたら?その事が教会へ知られたら?きっと私たちも殺される。
その事を路地裏で、ある男に言われた時、そうなったら一緒に逃げようだとか、仲間なんだから助ける、と思えなかった。思えていれば良かったが、単純に怖いと思ってしまった。
それからだ、ゴルをいや、マリーを見るたびに自分の身を意識するようになったのは。
それで、どうしても辛くなってみんなに話してしまった。誰か正しい事を『それでも仲間だろ』っていう一言で止めてもらうために。
けど、駄目だった。みんなが賛同してしまった。最後の防波堤を失った私たちは、実行に移さない理由を失ってしまった。
協会へ話した。
まだ、知ったのは最近だ、それまで知らなかったで、通せばなんの罪にも問われずに済む。
これで、終わりになるはずだった、あとは教会がやってくれるはずだった。けどこれは裏切った罰なのか
私にも疑いがかかった、途中まで匿っていたのではないかという疑いだ。それを晴らすため、捕縛に協力しなければいけなくなった。
私は先に帰り監視、そしてメハジキとシモツケが応援を呼びに行く。
そして今に至る
「そう、残念」
マリーはそう一言言う
ボッ
辺りへ火の玉が現れる。シモツケとメハジキがこちらを見る。わたしのではない、現状このレベルの魔法が使えるのは、この子のみ
「全員伏せて‼」
チュドォン
家が吹き飛ぶ
幸い、火魔法それも火力ではなく衝撃に重きを置いたもの、しっかり守れば打ち所が悪くない限り死なない。
マリーは姿を消していた。
そうだ、これは自分を守るための行動だ、なにも間違ってはない。生物の根本にある本能、自己防衛をする本能。間違っていない
「ごめん…なさい」
なのになぜ謝罪が口から出るのだろう…
「ごめんなさい」
なのに、なぜこんなにも心が苦しいのだろう…
「うぅ…」
なのに、なぜ、涙が出るのだろう…
ただ。ただ、なにもしていない、命を助けてもらった、他人のために頑張れる、自分を狙ってきた人も殺すのではなく衝撃で吹き飛ばすだけにする、そんな優しい子を裏切り自分の命が助かっただけ。ただ、それだけ。
「うっ…」
あらためて自分の所業に吐き気が込み上げる。押さえた手を見ると返り血がベットリとついている
「最低だな、私って」
こんなことを、自分で追い詰めておきながら。それでもあの子が生きることと幸せになることを願っている。
きっと死んだら天国には行けないだろう
「どうか生きて…」
おそらく逃げたであろう方向を見ながら呟く
私たちは、いや、私はこれからもこの罪を背負って生きていく




