第19話 アウロラ VS ASTRAの元プロ⑥
極光第3段階、3連覇。
その条件は、2連覇で解放された光波を、2連覇が解放されてから10分間、5回以上使用せずにいる事と極光以外のスキルを使わない事の2つ。
前者は条件としては簡単なように思えるが、基本的に格上との戦闘でしか使わない極光において、この光波を使わずに10分間戦うというのは、かなりきつい。
後者は言わずもがなである。
そんなユリウスの条件に対し、奏の3段階、深淵はとても簡単な条件。
スキルを使用した攻撃を25回与えること。
転移した攻撃が出来るこのスキルにおいて、その条件はとても容易であった。
そしてユリウスのスキルの進化は…
「オーバーレイ!」
決定的なまでの人間性能の差を埋めるだけの力があった。
ユリウスの剣のから光が溢れ、それが振るうごとに閃光となって、軌道上の建物、人などを問わず焼き切る。
それを奏は解放された能力、透過によって逃げようとするが、
「ぐっ…」
(光で影が消える。ちょっとスキルの選択ミスったな…)
潜行しようとした影を消し飛ばす光が、それを邪魔する。
奏の透過は影がある場所でしか行えない。
透過した場所が光に当たった瞬間、透過は解ける。
ユリウスの極光との相性は最悪だった。
だが、このままやられ放題の奏ではなく、
「│影よ《飲め》。」
奏の辺り一帯の影が数秒間、光を飲み込むようになる。
ユリウスはその様子を目撃して察する。
「…2個目のスキル…!」
奏が意識して自分たちに手加減していたことを。
奏は1対3となり黒くを発動した時から、意図的に2つ目のスキルを用いずに戦っていた。
理由は、自分の強さの探求である。
黒くは考えつくされたスキルであり、それ単体で戦えるほど万能なスキルである。
弱点として挙げられるのは、広範井の攻撃が4段階目まで存在しない事と逆に面的な範囲攻撃には弱い事の2つ。
エヴァの様なガトリングではなく、アカネの魔法の様な一掃するタイプにはめっぽう弱い。
だからアカネが落ちた時から、このスキルを使い始め、縛りを始めた。
全ては、自身の成長の為に。
「影よ。」
奏の言葉と共に、影が光を侵食し本来ならあり得ないところに影のエリアができる。
そして透過して潜行するとともに、本来潜行している時は重力の影響を受けない宇宙空間の様に、簡単に方向転換することは出来ないが、断続的な手足の地上への転移を行うことで、地上の瓦礫や自然物などで加速し、超高機動を実現する。
そしてユリウスは潜行し、姿を隠す奏に対して、2個目のスキルの構成に入りながらも、影の出来る場所を減らすために瓦礫を光で消し飛ばし続ける。
(要点は…敵の居場所特定と持続力。)
必要事項を意識しながら作ったスキルは、ユリウスを中心とした球体型の探知エリアの形成。
持続力と範囲に関しては、スキル使用中の視力の消失で担保。
ユリウスは奏のスキルを完全に理解しているため、半径5m以内ならどこからでもフェイントを仕掛けれる奏に対しては、逆に目が邪魔になると分かっていたので、あえてデメリットとして視力の消失を設定した。
そしてそれが奏へとバレない様に、見えないのにも関わらず眼を瞑ることも無く、奏を待ち構える。
ユリウスの探知スキルの射程は半径50m。
その中に奏が入った瞬間、
(斬るだけ…!)
光速の斬撃が襲う。
そして奏は、
(おそらく、探知スキルを発動させたな……気づいたのか、俺の影付加スキルに足せる性質が同時に一つだという事に…)
奏の影に性質を付加させて、光を飲み込ませたり本来あり得ない範囲の影を作り出すのは、同時に1つの性質までしか付加できない。
付加させた性質は、何かの影響化にいると新たに付加する性質を変化させることは出来ない。
例えば、ユリウスの│光の斬撃を影が飲み込んでいる状態や、延長した影に奏が潜行した状態では影の性質の変化は出来ない。
そしてユリウスは瓦礫を消し飛ばした時に、影に光が飲まれなかったのを観測していたので、そのことに気づいていた。
そして奏の高機動を支えていた、手足の断続的な転移を用いた、瓦礫を蹴ったり押したりする音が消えたのに気づき、ここで奏が攻めの手を緩めるおかしさから、奏が自身の探知スキルに気づいたことを察し、むやみやたらに剣を振るって隙を減らすのを止める。
奏ならば、その隙を捉えることが出来ると予測したからだ。
実際その通常のユリウスでは考えもしないが、相手をSAWと仮定し予測したことは合っていた。
(……もう隙は出さないか。)
奏は隙を穿つために影に弾性を持たせ、瓦礫をパチンコのように撃つ準備を取りやめた。
そして奏はユリウスの射程を半径25mほどと予測し、影から飛び出てしゃがんで着地し、立ち上がった。
さらに一歩。
一歩だけ、不用意にユリウスに向けて前進する。
其処はユリウスから数えて、49.567m。
見逃すわけも無く、
「オーバーレイっ!!」
ユリウスは下段に構えていた剣を、自身の正面から右へ130°回転しながら斬り上げる。
そして剣から光が迸り、それはまるで閃光の様で、夜明けの瞬間の様でもあり、剣の軌道上を黄金に彩る。
それは瓦礫をいとも簡単に分断し、影を消し飛ばし、目標《奏》へと到達する。
ユリウスの必殺の一撃。
(獲った…!?)
確かな手ごたえがユリウスの感覚器官を支配する。
達成感を感じながら、崩れ落ちていく瓦礫の先を見つめ、この戦闘の結末を見届けようと眼を凝らした先には、
「……は?」
無傷の奏が立っており、奏は呟く。
それはとても小さな音色でありながら、ユリウスの耳へと確かに届く。
「4段階、│未だ見果てぬ大偉業《no man's sky》。」
絶望の音色が。




