第17話 アウロラ VS ASTRAの元プロ④
「極光!」
ユリウスが発動したスキル、極光。
それは端的に言えば、彼の必殺技である。
「黒く《オブスキュア》。」
奏が発動したスキル、黒く《オブスキュア》。
それは奏が二連覇した年の世界大会で、準決勝で当たったチームのエースが使っていたスキル。
奏とユリウス、双方のスキルに共通する事は──
「初制覇ゥッ!!」
「│より黒く《ダイバーダウン》。」
──時間・条件で解放されていく身体強化能力である点。
ユリウスの勢いある言葉と共に、その身体全体が薄く輝く。
奏のボソッとつぶやいた言葉と共に、その身体の一部である両手がが、黒い手袋の上から更に黒い靄に包まれる。
ユリウスは言葉の勢いのまま、奏へと飛び掛かる。
その速度は今までよりも遥かに遅かったが、一挙手一投足が洗練されており、一種の芸術とも捉えられる身体捌きだった。
ユリウスが奏のすぐそば、右半身へと近づいた瞬間、奏は左足を一歩、大きく踏み込む。
そして体全体をユリウスが正面に来るように体勢を決め、迎え撃つ。
ユリウスは奏の誘いを受けて立つようで、向き合う形になった。
「「……」」
一瞬の静寂の後、
「ウラッ!!」
エヴァの射撃の轟音と共に、奏とユリウスの超至近距離での肉弾戦が始まる。
ユリウスは下段に構えた剣を、即座に手を返しながら右下から左上へと切り上げれる位置に両手を持っていく。
奏がそれを許すはずもなく、左足を即座に上げて足裏で柄を押さえつける。
押さえつけられた左足を振り払うのではなく、ある程度重心が乗り切るまで、押す力に対抗するように上方向へと加えていた力を乗り切った瞬間に脱力して、奏の左足を上げることで少し傾いた重心を更に崩すユリウス。
それでも尚、剣から手を離す事はなく、そのまま体ごと時計回りに一回転する。
剣先で地面の砂を抉り上げながら、両刃である剣を生かして逆手で今度は左上から右下へと切り下げようとする。
しかし、奏は重心を左へと崩しながらもユリウスの狙いを完全に読み切り、崩しかけている体勢を立て直すのではなく、更に左へと流して側方宙返りを行ってユリウスの剣撃から離脱する。
そして奏が体勢を崩し切った前提で動いていたユリウスが、完全に背中を向けたところに奏は回転の勢いを生かして、完全に体が上下反対へとなった時に、頭へと右足で蹴りを放つ。
それを見ていないのにも関わらず、頭を下げて避けるユリウス。
(視界の共有っ!厄介だな)
そんな奏の思考と同時に、そのまま振り抜こうとした足をユリウスは、未だ回転途中の自分の体から、無理やり腕を上げて止める。
奏の体が一瞬空中に留まる。
(今!)
(おう!)
オリヴィアの視界共有以外の、もう一つのスキルである思考共有のスキルで、ユリウスはエヴァへと合図を送り、エヴァも応える。
エヴァのあくまで奏が離脱できず、戦闘も邪魔しない程度に乱雑に撃った弾が、急激に奏の体に狙いを定めて、ユリウスの体諸共撃ち抜く軌道を描く。
段階的な強化である極光があっても尚、これは3対1の人数有利。
自分と相手の相打ちならば、即勝利へと至るため、スキルなんぞ関係なく勝利をもぎ取りに行く。
しかし、
「「なっ!?」」
「うそっ!?」
奏の黒い靄がユリウスの頭上へと現れ、そこから出てきた奏の手がユリウスの頭を掴む。
そのまま力強く頭を押すことで奏の体が数m浮く。
奏だけが弾の起動から逃れる。
ユリウスは取り残されたまま。
黒く、第1段階│より黒く《ダイバーダウン》。
能力は自身の心臓を中心とした、半径5m以内の靄が掛かった部分の体の限定的な転移。
「やっ…ばっ!?」
(忘れてた!アレはsolvesのエース、アダムのスキル!!)
ユリウスは忘れていた。
それが自分が何回も見たSAWの試合に出てきた対戦相手のスキルだったことを。
ユリウスへと向かっている弾が着弾する直前、
ユリウスの体から立ち上る輝きが増した。
「っ!2連覇ッ!」
その言葉と共に、ユリウスの体から光が炎のように立ち上り、そして
「光波!」
ユリウスから光の衝撃波が発生し、弾の速度が遅まった。
その瞬間、素早く離脱したユリウスが息をつく暇もなく、
「逸脱。」
奏のスキルもユリウスと同じ2段階目へと進む。
それと同時に、奏の両足に靄がかかる。
そして奏の両足がユリウスの真横へと転移する。
「光波。」
ユリウスも落ち着いて対応し、靄が消し飛び奏の両足が元の位置に戻ってくる。
「ふぅ…!」
(もう2回も使わされた。でも、スキルの内容自体はアダムと同じ。転移した部分がダメージ若しくは衝撃を受けたら、転移は元に戻る!)
「視界の共有…まずは目から潰すか。」
各々の思惑は交差しつつも状況は進む。
お互いのスキルの二段階目の解放条件は、一定時間の経過だったが、次はどうなるのか。
空気が張り詰めていく。
アウロラ VS ASTRAの元プロ。
決戦の行方は────




