第15話 アウロラ VS ASTRAの元プロ②
奏はスキルを変更する。
電気化と監視のスキルから、4人に合わせたスキルへと。
しかしそんな隙を4人が見逃すわけもなく、
「拝火!」
アカネが魔法を放つ。
奏の足元から、炎が湧き立ち焼け焦げさせようと、襲いかかる。
それと同時に奏は身体強化スキルを構成、使用してその場から離脱。
さらにその手にはハンマーを持つ。
「ふっ!」
(身体強化とハンマー。空中軌道は取れない!)
ユリウスが奏のスキルの正体を看破し、空中で何も出来ない奏へと猛追して、追撃をする。
エヴァも照射かかろうとしたその時、
「「なっ!?」」
奏は空中でハンマー踏みつけて、強化した身体能力でエヴァへと接近する。
ハンマーは奏に蹴られたはずなのに、空中に固定されたように動かない。
それを見てユリウスが気づき、悔しそうに下唇を噛み締めながらも、直ぐにエヴァ達の元へと急ぐのではなく、奏の着地点から追撃を受けない安全なポジショニングを取る。
(やられた!ハンマーはブラフ!あれは武器じゃなく足場!)
奏が作り出したスキルは作り出したその場から動かないハンマーと1〜5倍に調節可能の身体強化スキルの二つ。
前衛を担っているユリウスを釣り出すために、わざと空中へと飛び上がってスキルを二つ起動させて、回避行動などの空中軌道が取れない様に見せかけた。
狙いは後衛の2人、マシンガンのエヴァと何のスキルかの概要すら分かってないオリヴィアの2人。
アカネは遊撃の役割を担っているので、位置的に2人へのフォローは聞くが、
(は、速っ!?)
アカネは心中で奏の速度に驚愕する。
通常の身体強化スキルではありえない速度。
いくら仮想現実《VR》とは言え、現実との身体能力の乖離が激しいと上手く操作出来ない。
その境界が個人差があるが、おおよそ2.1〜2.4倍。
5秒間だけ身体能力が100倍になるスキルなどの使用者が、プロやレートマッチで活躍できないのもそのせいだ。
しかし奏が現在使用した身体強化の倍率は5倍。
(普通はまともにうごかせないはず。でも真っ直ぐ2人の元へとズレもなく飛んでいって…!?)
アカネが思考を回している間にもう、奏は2人の元へ着きかけていた。
「まっず…!?」
「エヴァ!掴まって!」
焦るエヴァにオリヴィアがちゃん付けもせずに、エヴァへと手を伸ばす。
その手をエヴァが掴んでから数秒経過し、奏が直接2人とも薙ぎ払う様に蹴りを叩き込もうとした瞬間、
「……」
(消えた…恐らく身体接触をしている味方ごと瞬間移動させるスキル…直ぐに移動しなかったのは共に移動させるためには接触が数秒必要などの制限か…?)
そして2人は、ユリウスのすぐそばに現れていた。
「あっぶねぇ…!おい、オリヴィア!お前ギリギリ狙いすぎなんだよ!?」
「ごめ〜ん。スリルはあった方がいいかなって…」
「んなもんいらねぇよ!?」
「僕もちょっとヒヤヒヤしたから勘弁して欲しいね…」
「見ろよ!姉貴もちょっとまなじりが吊り上がってんぞ!?」
「ひっ!?」
「……とりあえず後でいいです。」
「ごめんなさ〜い!?」
4人が話を続ける中、奏はその掛け合いから情報の抜き出しと、考察を続けていた。
(話からすると、いつでも移動できたのにしなかった…ギリギリを狙ったという言葉からどこかから3人称的な視界を得る能力…?しかし、それだと後衛である必要はない…)
「爆破の煙が晴れてて、こちらから見えてたから助かったけど、今後そういう事はやめてね?」
(…なるほど、他者…嫌、全員の視界の共有か。)
奏はユリウスの発言からスキルの断定を終える。
(オリヴィアのスキルは全員の視界の共有、触れている相手ごと共有した味方へと瞬間移動するスキルの2つ。移動の自由度は味方への移動しか出来ないという限定性で担保したという感じだな。)
奏はウィンドウを出しながら、スキルを変更する。
(ミストボムでの辺り一体の一掃は、このためでもあったのか……79まだ上げていいな…オリヴィアは45。)
奏が時々出している数字は点数を表している。
スキルの運用の点数を。
そして奏がウィンドウを消して、スキル変更を終えたのを4人が見て、身構えた瞬間に
「「「「っ!!??」」」」
「まずは分断だな。」
奏の巨大な土の壁がアカネと少し離れた3人を1-3に分断する。
そして強化した身体能力のまますり足で、奏がアカネへと接近する。
アカネはすり足といえど素早い動きで接近してくる奏に対し、冷静に対処する。
「飛行。」
アカネは飛ぶ魔法を発動し、土の壁を越えようと動く。
(別に1対1でも負ける気はしませんが、わざわざ負け筋をつくる必要もないですからね。)
アカネは奏がわざわざすり足で動いたのを見て、土の壁の維持条件が、足もしくは身体の一部分と地面との接地だと予測し、それは当たっていた。
問題は、
「えっ?」
アカネは空中にいるはずの自分の、目の前にいる奏に、いつの間にか首を切断されていた。
「なかなかの強さだった。」
奏はそう呟きながら、アカネが光となって消えるのを見届ける。
奏の足元には盛り上がった地面があり、その上へと両足をピッタリと付けていた。
土の壁を作るスキルでは無かったことだ。




