第13話 決闘開始
そこには総勢100人を超えるVDvierが集まっていた。
多種多様なキャラデザインをしており、装飾も奏の黒一色単ではなくちゃんと独自の設定やモチーフに沿った色使いをされており、見ただけで金がかかってるな、と感じるほどであった。
「それじゃあみんな、まずはこのイベント【SAWへの応援ゴールド稼ぎ祭り】に参加してくれてありがとう!!主催という立場として様々な問題に直面したけど、無事に終えられてよかった!!……まぁこの場に居ない人もいないけど!!」
それを聞いているVDiver全員の頭の中に、稼げるだけ稼ぎ切って「早く追いつかなきゃ」、と言ってレートマッチに潜り始めたNo.1の姿が思い浮かぶ。
その少しも曇りの無い映像として思い出せるくらい、今までと同じ行動をし続けるNo.1に対しての、呆れがこもった笑いがこの場に立ち込める。
「じゃあ笑うのも一旦辞めて、送金の儀に入ろう!!」
そして代表者としてエヴァが銀行まで行き、他者への振り込みをする。
相手はもちろんSAW。
この場のVは全員配信を付けており、その合計視聴者数は500万人を超える。
これは日本人だけの数字ではなく、異言語同時翻訳機能、通称バベルという機能がASには備わっており、全世界だれでも自分の母語で話したりしても、聞き手からは聞き手の母語に聞こえるというこの機能は、ASの爆発的な広がりの要因の一つであり、世界から消えかかっていた翻訳家という仕事を、完全に消し飛ばした物でもあった。
よってAS内の配信の視聴者の対象は全世界の人々になり、配信業界の規模感が爆発的に増加した。
そしてエヴァがSAWへの送金無事行え、会場内やチャット欄が歓喜の渦に包まれている中、奏は────────
「ん?この通知は…すごいな、一度の援助で1000万ゴールド以上送るとか……」
1000万以上援助された時のみ出てくる、特別な演出を慣れた様子で体験していた。
「じゃあこれでお開きだ!!みんな!解散!!」
そのユリウスの声掛けに全員が元気よく返事をして、このイベントは終焉を迎える。
SAWによって救われた、助けられた者だけが入れる事務所アウロラ。
所属Vは届くことを願って、ゴールドをかき集め、託し、見届けた。
確かに、その援助は本人に届いていた。
***
奏は既に椅子を消して、立って待っていた。
メッセージが来たからだ。
「そろそろか……1ヶ月ぶりか…こういう形の決闘は。」
決闘。
レートマッチ以外の戦いは2種類に分かれる。
予定されてない強襲と予定された決闘の2つ。
戦うということ自体に違いはない、違いがあるのは決闘の場合はゴールドのドロップが無いということだ。
「やあ、待たせたね?」
ユリウスがアカネ、エヴァ、オリヴィアを連れて奏の前までやってくる。
自分たちが負けるなどと微塵も思ってない様子で。
ASにおいて、個人で持てるスキルの数は2つ。
つまり、人数差がそのままスキルの数の差につながり、4対1なんぞそもそも戦闘など起こらない。
勝ち目がないのだ。
それはASのプロシーンにも表れており、13年間でたった2回。
2回だけ1対3以上の人数差を返したことがあるだけ。
2回とも世界大会の決勝。
それはどちらも2053年にプロデビューし、少し前まで最前線を走った現在休業中の男によって成されたことである。
「じゃあやるか。」
「そうだね。」
奏が決闘申請を出し、ユリウスがこれを受諾。
奏は自然体で立ち、他4人は自身のスキルを顕現させる。
AS内では決闘の合図はシステムが決める物ではない。
合図はただ一言、決闘する本人たちが言うのだ。
それはタイトルから取って、こう言う。
奏以外の4人が勢いよく言った。
「「「「「Struggle」!!」」」」
と。




