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冒大付属の磁力使い  作者: 高瀬義雄
第1章  VRBトーナメント 動乱の春大会編 前編
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第14話 蠢き出す者たち

「あつつ!こいつの炎ほんと厄介だな。」


ライアは防御魔術には自信があったがそれはどちらかというと物理的な衝撃の類に対してであった。


それ故火の粉から直接離れても消えない白炎をどうにかこうにか叩き消す。


ナフサと白燐が混じった油をスルトが器用に掬って引っ剥がしてくれる。


この時ばかりは赤竜家に産まれて良かったと心の底から思った。


他の竜人であれば重症の火傷でもおかしくない。


しかし暑かった割には身体の被害は少ない。


死ぬまでは行かないがこの熱だともっと火傷の痕が残っている筈なのだが。


大体自分が耐えられる温度は把握している。


いくらスルトの加護があっても無事では済まないレベルである。


冷静になればインカムに仕込まれた空間魔術が発動していたのが見て取れる。


これはそれなりに値の張る保険なので軍籍学生が持つには勿体ないものだ。


竜人の女の身体は男に比べると鱗が少ない。


おかげで火傷痕は残らなそうなので感謝しておかなければ。


そして先程から片時も注意を外していない敵を見る。


敵と自分を結ぶ直線上に剣を隠したので自ら毎叩き切る訳にはいかなかった。


そのせいで急所を外したので死んではいないだろう。


少し慎重過ぎたかもしれない。


だがそうでもしないとこいつには当たる気がしなかったのだ。


ライアはいつもそうやって己の直感に従って生きている。


今回もそれは正鵠を得ていたと言える。


「・・・・・・気絶してる振りやめたら?」


「ーーやれやれ。何故バレた?」


頭に巨剣がかすり何度か跳ねた様に見えたがやはり生きていた。


脳天から血を流しているが他に外傷らしい外傷は無い。


擬神化は解除されており今なら止めをさせる様に見える。


それでもライアは自分の直感を信じたのだ。


「なんとなく。できればさっさとどっかに行って欲しいんだけど。」


「できない相談だな。」


「どう見ても負けたのはそっちでしょ。これ以上やっても泥仕合になるだけだよ?」


「交渉決裂だな。」


取り付く島もない。


「戦いで勝った方の言う事を聞くのが竜人でしょ?」


「もう勝った気分でいるのか?」


こちらの方が有利だと思っていたのだがこれはそうでもないらしい。


保険も使ってしまったしこいつの火は性質(たち)が悪過ぎてできれば戦りたくない。


スルトの魔力を身体に取り込むのは反動がきついしこちらの手の内もある程度晒してしまっている。


これからどうするか悩むけどこう脳味噌を酷使するのは好きじゃないんだよなー。


こういうのは氷竜姫に全部丸投げしたい。


本当にどうしようもなくなったら自分でやるけど。


最悪こちらが逃げてもいいがそれでは食糧庫(ここ)を抑えられない。


取り敢えず氷竜姫に連絡を取るかな。






(不味いな。受け身は取れたが身体が動かん。だが向こうも無事ではすまんだろう。)


彼は迫ってくる大質量を前に擬神化を自ら解除した。


これにより魔力の殆どを爆翼術に回す事ができた。


敵の狙いがズレていたのもあるがおかげで鼻先を掠める程度の被害にできている。


一瞬意識が飛びかけたがこの程度で気絶する程竜人の脳は大人しくない。


衝撃に逆らわなかったのもあるがどちらにせよ相打ちならこちらにお釣りが来る筈だ。


自分の炎は性質上一度火がついたらそう簡単には消えない。


だから五体満足でこちらに注意を向けてくる女を見た時は訝しんだ。


空間魔術でも使わない限り対策はほぼ不可能な筈だ。


だが最初から使えるなら使っているだろう。


無制限に使える訳ではないようだ。


まだ底が見えないがこの若さで自分と互角以上に渡り合っている。


将来どうなるのか想像もつかない。


何れにしろ向こうの要求を飲む訳にはいかず、身体に鞭打ってでも時間稼ぎに徹するか。


そう思いを巡らせていると事態は勝手に動き始めた。


火霊竜の後頭部を狙った銃弾は湧き出た巨人の甲によって防がれる。


完全な不意打ちであるにも関わらず防がれた事に対して当の下手人は目を見張る。






(あれー。場所バレてないのにー?)


位置分かっていないのに対応されるのおかしいよ!


自分の意思とは関係なく発動する魔術ってずるくない?


となるとこちらの存在そのものは把握されてるけど場所は分からなかったという感じかな?


ま、どっちでもいいか。


「どの道これから死ぬ奴の事なんて考える必要ないし!」


アダガミのオッサンに自分は面バレてて今はもう近づけないから殺してこい(いってこい)と顎で使われた時は正直げんなりした。


超強行軍過ぎるし。寝てないよ私!


でも誰でも殺せる(八つ当たり)できるならいいか!とネイズは気分を切り替える。


硝煙にすすけた黒髪は無造作に束ねられており、華奢な身体は見る者に脅威を感じさせない。


純人にしては他種族に対して一切の遠慮を感じさせない態度を取っており、自らの種族的優位性を過信しているように見えなくもない。


だがその矮小さに比して手に持つ得物が見る者に猛烈な違和感を抱かせる。


黒光りする巨大な銃身は今にも背負った童を自重のみで押し潰さんとする程だ。


しかしそれを肩に担いだ当人は笑みを浮かべながら機関銃を展開しだす。


先の一戦で一息入れたい両者よりも彼女の準備が整う方が早かった。


ジパング製重機関銃M3ブローバック2丁が中空に展開され

砲身が標的を睨む。


何の遠慮もなく吐き出された黒い濁流が両者ごと巻き込む形で空を流れる。


ジパングの念動魔術をもってしても抗いきれない反動により、鉄の川を作り出した銃身が後退し続けながら牙を剥く。


空間を噛み砕いていく鉄の顎は標的の命を奪うことはできなかった。


ただし的となった人物に危機感をもたらすには充分過ぎた。


先の一戦で二人の手の内をある程度知り得たネイズは攻撃の手を緩めず追撃に移る。


溜まった日頃の恨みを鉛の雨に変えながら。





火霊竜と白炎竜は振って湧いた第三者の横槍を躱してから状況を整理する。


結果こちらを積極的に狙ってくるやつを優先的に排除する思考に至った。


問題はどこの誰かも分からないやつに攻撃されたことだ。


明らかにお互いを巻き込んできたので別勢力であるのはほぼ確定だがそんな奴が来る予定はない。


((何が起きてる!?))


自らの預かり知らぬところで状況が変わっている可能性がある。


すぐに通信を入れるとやはり他でも同様の事態が起きていた。


ただ天竜家の手勢はともかく第四勢力には心当たりがない。


ジパングがこんな戦いに介入する理由も見当たらない。


アリアはこの戦いから手を引くことを即決した。


既に軍籍学生の採用試験としては過大に過ぎておりこれ以上の戦果はいらない。


アリアが今回の殴り込みを軍籍学生の採用試験として利用したのはレイアード傭兵団の行儀の良さにある。


彼らは主力が抜け天竜家に追われ、傭兵としては片手落ちとなりながらも、品性を失っていなかった。


天竜家に仕えていた時から彼らが己に強いた枷は、首輪が外れても繋がったままだった。


上流階級が懇意にする傭兵としての価値を捨てきれずにいたのだ。


むしろそれを失ってしまえば自分達の価値は今度こそ地に落ちると感じて。


彼らは戦場で学生を徒に甚振るような輩ではないとかつて世話になったアリアは知っていた。


エレアが預かり知らぬ時代の話である。


命を失うリスクを補填さえできれば、負けてもしっかり身代金を払って話が着けられるような傭兵など早々いない。


だから彼らはよく軍籍学生の採用試験に重用されたのだ。


その意味ではこういう状況は彼らは慣れっこだった。


少々興が乗り過ぎている者もいたが。


しかしここに異物が混じり始めた。


出所の想像がつく相手ならば如何様にも対処はできるが敵の目的も規模も不明となると話は違う。


もう目的は果たしたのだ。


最悪を想定し現時点で戦場を離脱することを全員に通達した。


既に撤退が容易にできる状況ではない事を察しながら。


「各自事前に通達した方法で撤退をお願いします!撤退はこちら側で支援します!」


アリアは敵勢力が学校でテロを起こした事で見境のない連中であることは想像がついた。


このようなことをすれば横槍が入る事は想定済みと言える。


だからこそ増援を待たずほぼ学生だけでこのような報復を行った。


黒曜龍は彼女が竜国軍という魑魅魍魎共が蔓延る世界から完全に無縁で過ごす事は不可能だと分かっていた。


だからこそ極秘裏に彼女と同志になり得る者たちを事前に餞別しておいたのだ。


本国からの干渉を受けぬように海外からそれとなく。


予定外の新人も入ったり、残念ながら話がつかなかった者もいたが。


才能があるとは言え最終的にどの様な勢力に属するかは個人の選択だと思っている。


だが若い頃から苦楽を共にした戦友程頼りになる者はいない。


何より孤独だった彼女に友というものを与えたかったのだ。


その備えは取り越し苦労とはならなかった。


問題はそれすら踏み越えて参戦する意思が向こうにあったことだ。


敵の目的は不明だが報復まで時間も無かった。


かなり無理のある介入の筈。


そこまでしてこんな争いに価値があるとは思えない。


となると目的は別にあるだろう。


この短期間で自分をもう一度狙って来る可能性はあるが、流石にジャマーを失ってまたすぐに補給など無理がある。


その時は万全の態勢で迎え撃つだけだ。


戦場の霧は濃くなってゆく。


霧が濃くなることはあっても薄まることはついぞなかった。








ーー時は遡り数刻前、


鏡月は相手を見た目で判断した己を激しく呪っていた。


(速すぎだろ!)


雷を纏い素早い動きから放たれる雷魔術を避けるのに全力を強いられていた。


現状なんとか捌けているが完全に翻弄されていると言っていい。


雷魔術に対する対策というのは実は殆ど存在しない。


強いて言えば魔術が成立する際の魔力に反応して避けるぐらいだ。


まだ室内で戦えているお陰で電流が倉庫の部品を流れている。


お陰で致命傷には至っていないが時間の問題だろう。


このままでは不味いと感じて早めの対処を思案する。


まだ交戦してから幾ばくも経っていないが何か手を打たねば負ける。


まだ夜は長い。


鏡月はここで魔力を消耗したくは無かった。


願わくば兄がくれたこの式神が大喰らいでない事を願っていた。

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