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聖女さま、震度五です! ~異世界召喚された聖女はもふもふ勇者パーティーと一緒に地震から世界を守ります~  作者: 海原のどか


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第2話 聖女シャルロッテと魔王の地鳴り

小さな噴水や草花のある明るい中庭横の回廊を通り、私は神殿の奥へと連れて行かれた。


途中、壁に複雑な装飾で縁取りされた大きな鏡があった。

私の前を行くシスターの後ろに、フランス人形のような少女が映っている。


光るような明るい金髪が波打ち、エメラルドグリーンの大きな瞳は、長いまつ毛のせいでさらにぱっちりして見えた。

小さな口元には、ぷっくりとした桃色の唇。

肌は白くて毛穴も見えず、首もほっそりしている。

当たり前のように、元の私《こなつ》と違ってお腹も出ていなかった。


手を動かすと、中の少女の手も一緒に動く。

これは、もしかして……私?


「可愛い……」

思わず呟いた。


「どうされましたか?」

「いえ、何でもありません」


私はシスターの後について、そのまま回廊の先、突き当りの一室へ入った。

「神殿長様、聖女様をお連れしました」

私を連れてきたシスターがお辞儀をする。

「おお、ルネ、ありがとう。下がりなさい」

神殿長と呼ばれた高齢の男性が、低い穏やかな声でお礼を言った。

いきなり理不尽なことを言われるような類の異世界ではなさそうだ。


「シャルロッテ様」

「はい」

「ご存じの通り、本日先ほど、勇者召喚の儀を執り行いました」

この世界の事はご存じないし何一つ知らない。でも、元の世界で二十年以上会社員をやってきた経験は染みついている。上司の言うことを否定してはいけない。

「はい」

「だがしかし、問題が発生いたしました。

 ――召喚した勇者たちが、どこかへ消えました」

「はい……え?」


そのとき。

小さい振動に続き、カタカタと音がした。

「あ、来ますね」


足元が、ゆらゆらと揺れ始める。

壁際の本棚の本がぱたりと倒れ、机の上の羽根ペンがころころと転がった。

「ううっ、また“地鳴り”が。シャル様もお気をつけて!」

神殿長たちが頭を抱えてその場にしゃがみこむ。

「震度三」

無意識に、ついいつものように口に出ていた。

「は?」

「あ、いえ……そこそこの大きさだな、と」

やがて揺れが収まった。


神殿長は、私をじっと見ている。

「それは、聖女のお力の一つとして、地鳴りの揺れの大きさを測るお力も発現されたということですか?」

「……そういうことのようですね」


(この世界では、地震のことを“地鳴り”と言うのね……)

召喚された勇者たちは、魔王の起こす地震に対処できる者として呼び出されたらしい。

その説明を聞きながら、私の頭には、転生前に見たニュースがよぎっていた。

――観光タクシーが一台、消えた。


たしか、そのタクシーには地震専門の大学教授も乗っていたはずだ。

(……まさか、ね)


「召喚時にも地鳴りの邪魔が入りました。召喚の光は曲がり、勇者たちは神殿の召喚陣から外れた場所へ落ちたと思われます」


神殿長はそう言って、皆の前に地図を広げた。彼の指が、王都の外れにある森を指す。

「光の落ちたおおよその位置は、この辺りです」

「森、ですか」


「この森には魔獣が出る。皆、聖女様を傷つけぬようお守りするのだぞ」

「はっ」


聖騎士たちは一斉に頭を下げ、私の前後を固めた。

(あ、やっぱり私も行くんだ)

そう思う間もなく、私は騎士の馬に乗せられ、森へ向かうことになった。


【人物紹介】

主人公 シャルロッテ/中身は天野小夏:王女で聖女? ただし現在の中身は、日本で暮らしていた四十歳の会社員・小夏。揺れの大きさを体感でかなり正確に当てられる特技がある。甘い物が好き。


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