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聖女さま、震度五です! ~異世界召喚された聖女はもふもふ勇者パーティーと一緒に地震から世界を守ります~  作者: 海原のどか


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第22話 防災予算、申請します① もふもふたちへの聞き取り

私は王宮から帰り私室へ戻ると早速必要と思われることを、紙に箇条書きで書き出してみた。


1.もふもふたちに聞き取りをする(金額はさておき必要項目の洗い出し)

・一番費用がかかりそうな建物の耐震や避難所・仮設設営→あさちゃん

・救護対応や薬、包帯など→みかちゃん

・震度計など→ハムさん、教授

・防災用の食糧備蓄→広子さん、ワン公

・防災用具や避難訓練など→ネコ師匠

2.財務卿に相談→予算金額案決定

・1.でまとめた項目を財務卿に見せた上で凡その相場と国が出せる予算金額を確認。

・必要に応じより詳細な金額を見積もってもらうようお願いする。

・削れるもの、優先順位についてもふもふたちに確認。

3.王国評議会への説明資料作成

・2.を基に貴族たちに分かりやすいプレゼン資料を作成


「ざっくりだけど、こんなところかな……」

この国で何にどの位かかるのか自分では分からないのがもどかしい。


と言うことで、予算取りの第一歩として財務卿である叔父に説明をするため、私はまず七名のもふもふたちにしたいことの聞き取りをすることにした。

昼食の際に広間で皆に、ひとまず国王は防災対策に前向きだということと、財務卿が後日来た時に何が必要か伝えるため、箇条書きを見せて聞き取りへの協力をお願いする。


「項目は私が資料の形にまとめるので、皆は防災対策や魔王を探す地鳴りの調査に何が必要か、お金がかかりそうなものを私に教えて」

「ええ、もちろん!」

「国王が前向きなら良かった。考えてみよう」

「ありがとう。必要なら資料作りも協力する」

皆昼食を食べながら頷いてくれた。


◇◇◇


午後、地鳴り対策本部へ場所を移し、私は円卓に座ってお茶とお菓子をいただきながら聞き取りを始めた。

一人ずつ、もしくは一緒に担当すると思われる二人に隣の席に座ってもらい、必要な項目を聞いて紙に書いていく。


するとそこへ、自室にこもって本を読んでいた教授が久しぶりに姿を見せた。

「あ、教授。何が分かりましたか?」

ワン公が話しかける。

「過去の勇者たちは、被害を受けた場所を歩き回って魔王の場所を突き止めて行ったようだが……地鳴りの中心として記録されている場所が多く、法則が見えん」

教授は長い耳が前以上に垂れ、何だかとても疲れて見えた。

「そしてそれ以上に魔法云々というのがやはりどうも慣れん。私が呼ばれた意味がないじゃないか」

教授は少し怒ったようにそう言うと、後ろ脚を投げ出して床にぺたりと座り込んだ。

(……可愛い)

いや、可愛いけど、放棄は困る。


すると広子さんが横から、

「あなた。それでは、ただの大きなぬいぐるみです。せっかく呼ばれたのですから、大人らしく頑張ってくださいな」

「……分かっているが」

教授は不満そうに耳を伏せた。


「教授は一番の専門家なので意味なくはないです」

私も広子さんに加勢する。

「そうです。魔王が地面に何か力を加えている影響で断層の状態が変わって、本来の地震まで誘発される可能性もあります」

ワン公も加わる。


「……そうだな。確かに、自然の地震が増える可能性もある」

教授が少し元気を取り戻し、ぴょんと立ち上がった。

皆、ほっとした。


「それで、魔王が封印されていた場所も出ていたんですか?」

ワン公が聞く。

「ああ。国境付近の山の多い地域だ」

教授が本の終わりの方の地図のページを開く。


大きなマンダリン王国。その中央に王都がある。南はソレイユ連邦、西は海に面しており、北東はカフェリア・エレメンツ連合王国、南東にレオンの出身地グラントルテ王国と面していた。

「ここだ」

教授が指す一点は、辺境伯領と書かれる地域の、グラントルテとカフェリア寄りの辺りにあった。

「この辺境伯領は、鉱山が多いらしい。そして、前回は魔王が鉱山の奥に出てきたところを、聖女から受け取っていた小さな女神像で封印したということだ」

「じゃあ……一度その場所にも行った方が良いんですかね」

私は聞いてみる。もしかして、行ったらそれですぐ解決したりするんだろうか。


「それ、多分ですけど僕たち行かないでいいです」

ちょうど研究室から出て来てお菓子を食べていたハムさんが言う。

「それはどういうことだ?」

教授が不審げに聞く。

「先日魔術師さんたちと話していたら、彼らが神官や騎士たちと鉱山に確認に行ったような話をしてました。鉱山は封印後、危ないので閉鎖していたのに誰かが入った跡があって、小さな女神像を封印した場所に置いていたのが無くなってたそうです。残されたのは、大きくて深い穴だけ」

皆一斉にハムさんを見る。

「神官や騎士たちって、もちろん父も知ってたよね。その情報、早く共有して欲しかった……」

私は頭を抱える。窓口の私にも誰も話してくれないとは。

「魔王の封印が解けたらしいとは言っていたから、それで通じてると思ったんでしょうね」

私が聞き取りをしていたあさちゃんが隣で言った。


知っている前提条件が違い過ぎる、異世界コミュニケーション難しい。

(それとも、元シャルの記憶があればその辺も当然分かる話だったのかな……)


ちょっとがっくりしていると、あさちゃんがよしよししてくれた……優しい。


話が終わって再度聞き取りをしていると、防災対策の参考に、先日の震度四での王都の被害状況をあちこち見てみたいという話が出た。


そのあと私が神殿に魔力の講義を受けに行った際に神殿長に話したところ、翌日から、もふもふたちを神官と聖騎士が被害を受けた主な場所へ案内してくれることになった。


◇◇◇


夜、私室でまた女神像に祈り、元シャルと話した。

「国王に会って予算の追加をお願いしたら、今度、財務卿の叔父さんを来させるって言ってた」

元シャルの顔が珍しくぱっと輝く。

「セドリック叔父様!? 懐かしい」

「国王も、『シャルが大好きな』って言ってたね」

元シャルの顔が少し寂し気になる。

「母が私の幼い頃に亡くなってから、私にとっては親代わりだったの。父以上に可愛がってもらって……」

「そうなんだ……」

そう言えば、前に会った王妃様は元シャルのお母さんでは無かったなと思う。

「気を付けた方が良いことは?」

「良い人だから特にないけど、商売として損か得かはちゃんと見るからきちっと説明した方が良いかな」

「分かった」

それから、他にも知っておいた方が良い事がないかも聞いてみる。

そう言われても難しいわね、と言いながら、私が今日地図で見た各国の特徴を教えてくれた。


「マンダリンは農業、商業、芸術が盛ん。海産物もある。グラントルテは学問や工業が盛んね。カフェリアは貿易や軍事が強くて、エレメンツは魔術工学が得意。南のソレイユは第二王女の嫁ぎ先で珍しい食べ物などがあるわ」

「ふうん。魔王の封印されていたのは、辺境伯領の鉱山って言ってたね」

「ウィロウリーフ辺境伯のところね。確かに山がちで鉱業が有名な、由緒ある貴族ね」


そんな話をしたあと、今度は私が向こうの世界についての知識を少し話して終わった。


そして翌朝、叔父様が六日後に来ることを執事から伝えられたのだった。


【人物紹介】

主人公 シャルロッテ・マンダリン(シャル)/中身は天野小夏:マンダリン王国の十八歳の第三王女(母は側妃)で聖女。ただし現在の中身は、日本で暮らしていた四十歳の会社員・小夏。揺れの大きさを体感でかなり正確に当てられるため震度計開発にも参加中。甘い物が好き。この世界でもふもふに目覚めた。最近は危険な婚約者に翻弄されていたが、一旦忘れて防災予算の申請に注力することにした。


マンダリン国王:シャルロッテの父。シャルを気にかけており、防災対策にも前向き。


セドリック叔父様:マンダリン王国の財務卿。シャルロッテの実母の兄弟で、元シャルが親代わりのように懐いていたらしい。


天野小夏/中身は元のシャルロッテ(元シャル):現在は日本で小夏として暮らしている本来の第三王女シャルロッテ。刺繍や裁縫が趣味で得意。彼女が女神様に祈って小夏と入れ替わった。日本で小夏としての生活を楽しもうとしている。政略婚約者のレオンには興味がない。


レオンハルト・グラントルテ(レオン):隣国の王子で美男子。元シャルとは無言のお茶会をしていたようだが、今のもふもふやお菓子三昧の生活を楽しむシャルには妙に積極的。「天使かと思った」「もふもふより君に触れたい」などと言ってくる危険な婚約者。


◆観光タクシーごと日本から召喚された七人のもふもふ聖獣◆

兎川源一郎教授&夫人/教授&広子さん:白い垂れ耳ウサギの地震の専門家とその妻。広子さんは食事などで皆を支え、防災は食糧備蓄などの担当になりそう。


柴谷勇/ワン公:大きなサモエド似の白い犬でパティシエ。美味しいお菓子で皆を癒してくれる。妙に地震について詳しい。防災は食糧備蓄などを担当予定。


三毛与志朗/ネコ師匠:白い虎猫で観光タクシーの運転手兼ガイド兼空手の師範。防災用具や避難訓練などを担当予定。


文月あさ/あさちゃん:大型の文鳥で建築士。みかちゃんとは友人同士。建物の耐震や避難所・仮設設営などを担当予定。


小鳥遊実花/みかちゃん:大型のインコで看護師。あさちゃんとは友人同士。救護対応などを担当予定。


羽村公平/ハムさん:大型ハムスターでITエンジニア。教授や魔術師たちと地鳴り観測装置を開発中。最近は魔術師たちと研究室に籠る日が多い。

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