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聖女さま、震度五です! ~異世界召喚された聖女はもふもふ勇者パーティーと一緒に地震から世界を守ります~  作者: 海原のどか


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第12話 もふもふと聖女の共同生活開始です

国王との謁見の翌日、私は離宮――オランジェリー宮へ引っ越した。


オランジェリー宮は長い間あまり使われていなかったと聞く。

侍従長のライムたちが上の方の空いている部屋を用意してくれて、午後に私が行ったときには既に本宮の私の部屋と同じ家具一式が揃っていた。カーテンや絨毯は元々あったものを急いで掃除したのか少し古びているが、落ち着いたオレンジ系の色で、嫌いではない。


部屋の中を一通り確認した後、早速下のもふもふたちの住む階に降りていってみる。

廊下に出ると、ふんわりと花の瑞々しい香りが漂ってきた。

「あ、花が飾ってある……」

近くの白い花瓶に、オレンジ色の大きなダリアや黄色のポンポン菊が活けられていた。

「気づきました? 広子さんが、早速みんなを誘って、庭園で花を取って来たんです。そこのは広子さんで、ちなみに僕が活けたのは、あれ」

ワン公が近づいてきて、別の花瓶を指さす。ピンクや赤のバラの花が沢山活けられている。

「言われてみると、花瓶ごとに花の雰囲気が全然違うわね」

それぞれの窓辺には、同じ白い花瓶に違う花が飾られていた。

「楽しいし、新鮮な花は香りが良くて明るくなるでしょう?」

隣にはたきを手に持った広子さんが立っていた。

「お掃除もされているんですか?」

「ああ、あまりに汚れていて侍女さん達、手が回らないようだったから、一緒にやってたのよ。何かしてないと落ち着かないし」

後から侍女がバケツを持って現れる。

「シャルロッテ様、いらっしゃいませ。聖獣の広子さまに、色々お掃除のコツなど指導していただいて、最初どこも埃だらけだったのですが思ったより早くきれいになっております」

侍女も何だか嬉しそうだ。

「もうすぐ夕食ね。そろそろキッチンに行かないと。ではまた後で」

広子さんと侍女たちが消えて行った。


「広子さん、働いてますね……」

「うん。ここに来て早々、僕らが森へ行っている間も、キッチンを見たり、掃除、洗濯をしたりしていたらしい。侍女や侍従、料理長さんたちとも話して仕切ってくれてる」

ワン公が、腕組みしながら話してくれた。

「それで今朝は、広子さんとあさちゃん、みかちゃんと一緒に僕も、街の朝市に連れて行ってもらった。全身隠れるフードを被ってね」

「すごいですね……ちょっと、もふらせてくださいね。他の方たちは?」

私はさりげなくワン公のふんわりした腕をもふもふする。ワン公も触らせてくれている。

「教授は早速、朝から王立学院に行って、午後の魔術院は技術系の話もあるようだと、ハムさんも連れて行ったよ。師匠は朝に近衛騎士団の鍛錬に混ざったあと、この辺りを地図を片手に見て回ってるみたい」

「ワン公は、お菓子作りは?」

「少し作ってみたよ。夕食でも最後に出す予定だ」

「やった、楽しみ!」


と、そこで、私は違和感を感じた。

「あ、来た」

私は近くの花瓶を咄嗟に押さえる。

「え、誰が?」

すると間もなく、天井の照明がわずかに揺れ始めた。

「あ、地震……地鳴り、か」

ワン公も気付く。

ただ、それほど大きくは揺れず、すぐにおさまった。

「……震度二」

「……は?」


そこでワン公が周りに人がいないのを確かめ、突然私に向き直る。

「というか、ずっと思ってたけど、聖女様も、召喚者?」

小声で言われ、私は目が泳ぐ。

「え、なぜ急に……」

「ずっと医療関係者だの空手もおかしいとは思っていたけど、今の『震度』で確信した」

ワン公の目が真剣《マジ》で、冗談で逃れられる感じではない。

ふう、と息をつく。

「いえ、私は、召喚ではなく入れ替わりですね」

「入れ替わり?」

「そう。この世界の十八歳の王女と、元の世界の日本にいた、四十歳の女性会社員の」

ワン公は、露骨に嫌なものを見る顔をした。

「……その顔、何?」

「中身、中年女性……そう言われるとしっくりくるな。言動が」

「なんか、失礼だな」


「まあ、それは話が早くて良かった。後で、他の聖獣たちにもそのこと共有して良い?」

「良いですよ。聖獣たちだけなら。代わりに今後ももふもふさせてもらいますけど」

私はそう言って、ワン公の白い腕をもふもふした。


夕食は本宮と同じような洋風の食事に加え、塩むすびと卵焼き、デザートでチーズケーキが用意された。

「なんか、ほっとするじゃんね」

「でらうみゃーね!」

あさちゃんとみかちゃんがおむすびをついばみ、二人で羽をぱたぱたさせている。

「良かった。これからどんどん日本食に似たものを増やしたいわ」

皆で仲良くいただく。


こうして、オランジェリー宮でのもふもふと私の共同生活が幕を開けた。

もふもふに、食べ慣れた食事、心強い仲間たち。


(これなら、この先も何とかなる……かな?)

【人物紹介】

主人公 シャルロッテ・マンダリン/中身は天野小夏:マンダリン王国の十八歳の第三王女(母は側妃)で聖女。ただし現在の中身は、日本で暮らしていた四十歳の会社員・小夏。揺れの大きさを体感でかなり正確に当てられる特技がある。甘い物が好き。この世界でもふもふに目覚めた。


マンダリン国王:シャルロッテの父。


◆観光タクシーごと日本から召喚された七人のもふもふ聖獣◆

兎川源一郎教授&夫人/教授&広子さん:白い垂れ耳ウサギのもふもふ聖獣になった大学の名誉教授と、その妻。教授は地震の専門家で勇者として召喚されたと思われる。広子さんは炊事や掃除が得意で働き者だと判明。


柴谷勇/ワン公:大きなサモエド似の白い犬のもふもふ聖獣でパティシエ。


三毛与志朗/ネコ師匠:白い虎猫のもふもふ聖獣で観光タクシーの運転手兼ガイド兼空手の師範。落ち着いていて頼れるが、肉球はぷにぷに。


文月あさ/あさちゃん:大型の文鳥のもふもふ聖獣で建築士。みかちゃんとは友人同士。


小鳥遊実花/みかちゃん:大型のインコのもふもふ聖獣で看護師。


羽村公平/ハムさん:大型ハムスターのもふもふ聖獣でITエンジニア。


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