第9話 間合い
決勝トーナメント第3試合
ロングソード代表猿渡涼 vs 弓代表賀喜炎
「見合ってええええええ!始めい!」
ドパアン!
ピュッ。カッ!
賀喜の矢が猿渡の足近くに刺さる。その間賀喜は後ろへ大きく後退。その距離は約30m。
「小癪な。」
「弓はこの距離以上離れて初めて効果を十分発揮します。しかし、あなたのその重たそうな剣はどうでしょう。私にかすりもしない。」
「そうだな。」
「勝ち目はないんじゃないですか?諦めるか、むやみに突っ込んでくるか選んでください。私としては前者をおすすめします。」
「そうか。だが、それじゃあ見てる人が楽しめんだろう。」
「そんなことを気にしているのですか。」
「ああ。だから矢をそこから放つんだ。俺は避ける。避けきれなくなったら当たって負け。シンプルでいいだろう。」
「……わかりました。」
ピュッ。ピュッ。ピュッ。
カッ。カッ。カッ。
猿渡はすべて避けた。
ピュッ。ピュッ。ピュッ。
カッ。カッ。カッ。
猿渡を中心に弧を描くように移動しながら矢を放つが、全部かわされる。
ピュッ。ピュッ。ピュッ。
カッ。カッ。カッ。
ピュッ。ピュッ。ピュッ。
カッ。カッ。カッ。
ピュッ。
カッ。
「あら?なぜ一本しか打たない?ああ!そうか!矢が尽きたんだな!!馬鹿なやつだ!」
わざとらしく猿渡か煽る。
「これは困りましたね。」
「じゃあ今度は俺が選ばせてやろう。降参か、切られるかだ。」
「どちらも遠慮します。」
「なんだと?矢のないお前に何ができる。」
「どこを見てるんですか?矢、ありますよ。」
そう言うと賀喜は屈み、矢を拾い上げた。
「あなたに向けて打ったものです。矢の残数管理くらいできます。一周する間に打ち切ってしまわないようにしましたから。」
賀喜が先ほど矢を放ちながら移動した地面の軌跡にはその対角から打ったと思われる矢が刺さっていた。
「なかなか難しいな。」
「だったら近づいてきますか?」
「それしかないわな。」
「そうですか。ではどうぞ。」
そう言うと賀喜は弓を構えた。
「いつ走り出すかわかんねえぞ。疲れねえのか?しかも、今打たねえってことはこの間合いじゃあ仕留めれねえってわかってるだろ?さっき距離が空いたほうがいいって言ってたが、それは人数が多いときのことじゃあねえのか?」
「ごちゃごちゃとうるさい。」
「あーすいません。」
そう言うと猿渡は後ろに下がり始めた。矢が刺さっているところまで行くと、その羽の部分を切り出した。
「これでこいつら拾われても使えないな。」
得意げにいうが、賀喜は全く動かない。
「そうか。もうその一本で勝負をつけるってことか。」
ダッ。
猿渡は賀喜に向かって駆け出した。
タッタッタッ。
距離が縮まっていく。
タッタッタッ。
―いつ打つ?
―まだか?
―来たら避けねば。
タッタッタッ。
―まだか。もう俺の剣が届くぞ。
―罠?
ー好機?
ーわからない。
ピタ。
猿渡の動きが止まった。
ピュン。ドスッ。
目の前で棒立ちする相手を賀喜は正確に撃ち抜いた。
「私がいつか打つと思ったのでしょう。このまま攻撃できるわけないと。だからあなたの間合いに入っても剣を振れなかった。正解を探そうとしたあなたは縮こまり、何もできなかった。おそらく矢は心臓に届いています。早く治療してください。」
ガクッ。ドサ。
「決着ぅうううう!勝者弓代表賀喜炎あああ!」
猿渡はその場で倒れ、賀喜に抱えられて退場した。
「すごいな。」
「うん。須佐野はあれできる?刀を持って向かってくる相手を間合いに入っても動かずにいるって。」
「うーん。猿渡さんの実力がわからないからなんとも言えないけど、賀喜さんはそれでやってるもんね。当人間でしかわからない雰囲気もあるけど、なかなかできることじゃないよね。」
「弓相手にはどうやって戦う?」
「俺も持久戦はする。今のを見ると飛んできた矢を切るってのがいいんじゃないかな。」
「できるの?飛んでくるやつ」
「虚を使えばたぶん。」
「すごいなぁ。」




