第2話 開幕
飛鳥流剣道場。
「虚実!そろそろ休憩にしよう。」
「はい。」
「そういえばお前、いくつになった?」
「24です。」
「24か、人生150年と言われるからあと6倍だな。」
「あと6倍もこうして畳ばっかり切って行くのですか?もっとこう、実践というか、俺は戦いたくてここに来たんです。」あどけなさの残る青年は爛々と目を光らせていた。
「うむ、実践ね。」
ヒュウ。刀を振り回すその動きは滑らかである。
ブン。強く振ったと思ったら畳が切れていた。
ヒュウ。ブン。次は5つ同時に。
ヒュウ。ヒュウ。ピッ。ピッ。刃が加速して音が変わった。
ザシッ。踏み込み、虚実の周りにオーラが立ち込める。
カァン!
「んー、イマイチか。まだ少しへしゃげてる。」足元には真っ二つになった鉄パイプが転がっていた。恐ろしいのは片手でこれをやっていることだ。
「次はあれ。」そう言って取り出したのはレンガ。
「よし。」両手で剣を持ち、構える。その目には殺気。予備動作のない一撃が入る。レンガは2つになった。
「まだまだだな。それはレンガを割っとる。切るんだ。切ったあと、破片が飛び散らなければ成功だ。どれだけ力を入れても力んではいけない。刀の切れ味が悪いとでも言い訳するか?」
「新海さん…これ、峰打ちです。」
「え?」
それから7日後、道場に一通の手紙が届いた。
「新海さん、こんなものが届いていたらしいんですが」
「コロッセオ。何だこれは?」
「実践です!俺が求めていたのはこれですよ!出場してもいいですか?」
「他の生徒にも聞いて他にいなかったらいいぞ。」
「はい!」もちろん、クセをつけようものなら虚実はすぐこちらを睨むに違いない。普段はニコニコしているが、期限を損ねるとまあまあめんどくさい。誰も反対するものはいなかった。こうして、虚実のコロッセオ出場が決まった。
「他流試合か!楽しみだな。」
「まずは日本刀同士の戦いか。やりすぎるな。」
「やりすぎるな?」
1ヶ月後、虚実は東京へ向かった。
会場には沢山の人が集まっていた。剣を持っている人ばかりではない。槍、薙刀、ロングソードなどなど。
「こんにちは!日本刀ですか?」
「はい。」
「いやあ嬉しいな。僕もそうなんですよ。」
「へえ!じゃあ戦うかもしれませんね!」
「はい!ところで着物ですか。かっこいいな。」
「ありがとうございます。刀を使う場なので。」
「そうですか。格式がありますね。あっ。申し遅れました。わたし、JPN総合文化部の三浦清です。」
「僕は飛鳥流の須佐野虚実です。」
「すごい漢字だ!よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
戦士たちは待合室で準備運動をはじめた。虚実も体を温めだす。虚実は第2戦を戦い、3回勝てば優勝だ。
コロッセオに戦士が入場した。観客席は満員、さらに世界中に放送されているという。虚実の胸は高揚感に満ちていた。これまで積み上げてきたものを戦闘に使えるという一種のご褒美を眼の前にし、自然と拳が握られる。
入場口脇にスタンバイしたほかの戦士が第1戦を見守る。
第1戦
獅子流 水野義人 vs 総司流 倉知篤人
「見合ってええええええ!始めぃ!」
ドパァン。開始の砲がなった。
「総司流とはかっこいい名前だ。沖田総司からとっているのか?さぞ強いんだろう。お手並み拝見だっ!」
ダッ。仕掛けたのは水野だった。
キン。まっすぐ首に伸びてきた太刀を倉知は軽く受け流す。
「いいパワーだな。」
「ありがとよ。まだまだいくぜ。うぁらああ!」
激しい幕開けだ。何度も打ち付けるが倉知は平気そうな顔をしている。
「受けてばっかだな。」
「貴様のレベルがわかった。そろそ……」
キン、キン、キン。水野の剣は更にスピードを増す。倉知の眉間にもシワが寄る。
「この速さについて来いや。」
「んぁあっ!」倉知が強引に振りほどいて距離を取る。
「パワーだけじゃなかったのか。」
「いや、俺はパワーだけよ。」
「こんなに速い剣は見たことがない。」
「そうかもしれない。だが、おれは打ったあと、パワーで剣を引き、無理やりまた押し込んでいる。力みを嫌うほかの流派とは違い、獅子流は粗い剣だ。」
「そんな剣があってたまるか。」
「実際苦戦してるじゃないか。」
「うるせえ。」
タッ。軽やかに向かっていった倉知の刃は最初水野がやったのとほとんど同じだった。水野はしっかり受け止める。倉知は四肢を大きくつかい、体を反転させ流れのまま打ってきた。また水野が受け止める。また反転、また反転と途切れない攻撃が続く。
キン、キン、キン、キン、キン。
「これ、すげえんじゃねえか?」観客の誰かがいう。
「すげえよ。あのチビ身のこなしがすごい。」
「デカいのもスピードで負けてねえよ。」
「いや、みてみろ徐々に水野が押されてる。」
よくみると水野の傷が増えている。
ビッ。サクッ。ピッ。
カラン。
「右足のアキレス腱、両腕の腱を切った。お前はもう動けない。」倉知の息も荒い。
「勝負アリいいいい!」




